[7月2日07:00.天候:晴 静岡県富士宮市 富士宮富士急ホテル 7F客室]
ベッド脇のアラームが鳴る。
マリア:「ん……」
マリアは手を伸ばして、アラームを止めた。
マリア:「はー……」
そしてゆっくりと上半身を起こした。
マリア:(何か……夢日記には書けないゴチャゴチャした夢を見てたような気がする……)
ベッドから起き上がると、カーテンを開けた。
朝日を浴びる富士山が目に飛び込んできた。
マリア:「師匠!起きてください!朝ですよ!」
イリーナ:「うん……あと5分……」
マリア:(言うと思った)
こりゃ先に稲生と朝食を取る、お決まりのパターンだとマリアは思った。
着替えとタオルを持って、バスルームに入る。
ところが、朝の支度を終えてまた部屋に戻ると、イリーナはちゃんと起きていた。
マリア:「おっ、師匠」
イリーナ:「いやあ、枕が変わると抵抗無く起きれるもんだねぇ……。私も使わせてもらうよ」
マリア:「はあ……」
マリアと入れ替わりでバスルームに入るイリーナだった。
マリア:(いやいやいや!いつもは枕が変わっても、あと1時間以上は起きなかったじゃないですか!)
こりゃきっと何かあると思ったマリアだった。
[同日08:00.天候:晴 同ホテル 1Fレストラン]
稲生:「あ、おはようございます。……って、先生!」
イリーナ:「ん?なぁに?」
稲生:「あ、いえ、別に……」
マリア:「な?師匠がちゃんと起きて来る方が珍しいだろ?」
稲生:「うーん……そうですねぇ……」
イリーナ:「随分と失礼な弟子達だねぇ……」
稲生:「あ、いえ、すいません!」
マリア:「いや、だって、そうじゃないですか。いつもは『あと5分』を1時間は繰り返すのがデフォなのに……」
イリーナ:「こりゃ後でお説教だねぇ……」
マリア:「え?」
稲生:「あ……」
取りあえず、先に朝食を取る魔道師達。
マリア:「朝からカレーとは……」
稲生:「そういえば、カレーも久しぶりだったなと思いまして」
稲生はトレイの上にカレーの皿を乗せていた。
イリーナ:「ホテルのカレーは美味しいからね」
イリーナの場合、カレーに加えてパンやらゆで卵やらかなり山盛りにして乗せていた。
この中で1番身長が高く、巨乳でもあるイリーナだが、食欲もこの中で1番のようである。
イリーナ:「それじゃ、食べましょうか」
稲生:「はい」
欧州人であるイリーナとマリア。
神に祈りでも捧げてから食べそうなところだが、あいにくと魔道師達は基本的に神に見放され、むしろ悪魔から注目されている存在。
悪魔に祈りを捧げる必要など無い為、そのまま食べる。
イリーナ:「うん、これはイケる」
稲生:「そうですね」
イリーナ:「杖は夕方までにはできるって話だから、その時に取りに行きましょう」
稲生:「はい」
マリア:「さすがに2泊もできませんよね?」
稲生:「取りあえず今日、最終の東京行きの高速バスを取ってあります。今日中には東京入りできるかと」
イリーナ:「さすがはユウタ君」
マリア:「その夕方までにはまだ時間がありますが、何をしてますか?」
イリーナ:「ユウタ君、このホテルのチェックアウトの時間は?」
稲生:「10時です」
イリーナ:「それじゃ、その時間に出ましょう。それまでの間、ユウタ君は部屋でゆっくりしてて」
稲生:「はい」
イリーナ:「マリアはお説教ね」
マリア:「くそ……」
稲生:「ぼ、僕も付き合いますね」
マリア:「いいよ、別に」
稲生:「あ、そうだ。先生」
イリーナ:「なーに?」
稲生:「実は昨晩、変な夢を見まして……」
イリーナ:「変な夢?」
稲生:「はい。夢日記には書いておいたんですが……」
イリーナ:「分かったわ。それじゃ、それを占ってあげましょう。マリアのお説教は延期ね」
マリア:「はい。(免除にしてくれよ、師匠……)」
[同日09:30.天候:晴 同ホテル 7F客室]
イリーナ:「うーむ……」
稲生:「先生、いかがでしょう?」
イリーナ:「この165系とやらは、今でも走ってるの?」
稲生:「いえ、今現役で運転されていることはないと思います。だからこそ、幽霊電車みたいに見えて……」
イリーナ:「なるほど……。確かに、ユウタ君が見たのは冥界鉄道公社のヤツで間違い無いでしょうね」
稲生:「やっぱり!」
イリーナ:「昨夜、あの線路の上を実際に走ったのでしょう。それがたまたまユウタ君の魔力と感応したってところだろうね」
稲生:「ということは、何も心配無いということですね」
イリーナ:「そういうことになるね。まあ、普通の人間が冥鉄列車に間違えて乗ろうものならバッドエンド直行だけど、私達は別だからね。魔界のアルカディアシティに連れて行かれるだけで済む」
稲生:「もっとも、僕だけの力じゃ帰れないと思いますが……」
イリーナ:「シティ内ならどこでも連絡できるでしょ?それで迎えに行けるし」
稲生:「なるほど、そうか」
マリア:「もし本当に地獄に行くような列車だったら、そもそも私達ですら乗れないからな。間違って乗ってしまうこと自体、それがアルカディア行きなんだよ」
稲生:「なるほど。そうですか」
それ以前に稲生は、マリアがいつものプリーツスカートなのに、ベッドで足を組んで座ってること自体が気になって仕方が無かった。
冬場は黒いストッキングをはいているが、夏場は生足で黒いソックスである。
もちろんイリーナはそれに気づいていて、
イリーナ:(マリアもだいぶ慣れたってことかねぇ……)
と、思った。
イリーナ:「補足説明として、もしこれが今でも実際に走っている車両だったら要注意だよ」
稲生:「と、言いますと?」
イリーナ:「この夢を見た者がその列車に乗ってしまい、とんでもないことに巻き込まれることになる」
稲生:「そうなんですか」
イリーナ:「東アジア魔道団っていたでしょ?」
稲生:「山形で会いましたね」
イリーナ:「関西地方で、電車の大きな脱線事故があったでしょう?」
稲生:「福知山線脱線事故ですか?」
イリーナ:「あの犠牲者の中に、東アジア魔道団の者がいたの」
稲生:「本当ですか!?」
イリーナ:「もちろん、表向きは一般の乗客ってことになってるけどね。その彼も、稲生君と殆ど似たような夢を見たらしいよ。もっとも彼の場合は、お寺と御経ではなくて、選挙ポスターと御経だったらしいけど」
稲生:「創価学会!?」
イリーナ:「古い電車……ま、私は稲生君みたいに詳しいわけじゃないから分からないけど、とにかく今はもう走っていない古い電車が闇の中に消える直前、それが新しい電車に変身したんですって。でもほんの一瞬の出来事だったから、それが何だったのか、どんな意味なのか分からないまま、あの事故に巻き込まれたらしいね」
稲生:「207系ですか。そうですねぇ……」
イリーナ:「稲生君の場合は、今はもう走っていない古い電車しか出てこなかったから大丈夫だよ」
稲生:「まかり間違って、今はもう運転されてないはずの165系を見たら要注意ってことですね。僕の場合は」
イリーナ:「ま、そういうことになるかな」
マリアは右足の靴下が下がっているのに気づいて、右足をベッドの上に上げたが、すぐに下ろした。
イリーナ:「あら?ユウタ君、残念ね。今マリア、ラッキースケベだったのにw」
稲生:「えっ!?」
マリア:「師匠ッ!(危ない、危ない。つい無意識にやるところだった……)」
イリーナ:「さーさー、夕方まで時間があるんだから、今日は観光でもしよう!」
稲生:「今日の先生はノリノリですね」
マリア:(よしっ!私の説教のことは忘れてるぞ!)
イリーナ:「どこかいい所ある?」
稲生:「大石寺はどうでしょう?」
イリーナ:「却下」
マリア:「却下」
イリーナ:「あ、思い出した。マリア、あと30分あるからお説教タイムね」
マリア:「ええっ!?ユウタ、お前のせいだぞ!」
イリーナ:(大石寺……お寺……お坊さん……説法……説教!)
稲生:「すすす、すいません!」
ガッ!とマリア、稲生の首を掴んで締め上げる。
稲生:「ず……ずいませ……!(嗚呼……でも、マリアさん……直接、手の感覚が伝わってきて……!)」
M男、稲生。
イリーナ:「マリア、マリア。稲生君、幸せそうな顔してるけど、取りあえず死んじゃうから放しなさい」
マリア:「ぅおっと!」
チーン♪(稲生、泡吹いた)
ベッド脇のアラームが鳴る。
マリア:「ん……」
マリアは手を伸ばして、アラームを止めた。
マリア:「はー……」
そしてゆっくりと上半身を起こした。
マリア:(何か……夢日記には書けないゴチャゴチャした夢を見てたような気がする……)
ベッドから起き上がると、カーテンを開けた。
朝日を浴びる富士山が目に飛び込んできた。
マリア:「師匠!起きてください!朝ですよ!」
イリーナ:「うん……あと5分……」
マリア:(言うと思った)
こりゃ先に稲生と朝食を取る、お決まりのパターンだとマリアは思った。
着替えとタオルを持って、バスルームに入る。
ところが、朝の支度を終えてまた部屋に戻ると、イリーナはちゃんと起きていた。
マリア:「おっ、師匠」
イリーナ:「いやあ、枕が変わると抵抗無く起きれるもんだねぇ……。私も使わせてもらうよ」
マリア:「はあ……」
マリアと入れ替わりでバスルームに入るイリーナだった。
マリア:(いやいやいや!いつもは枕が変わっても、あと1時間以上は起きなかったじゃないですか!)
こりゃきっと何かあると思ったマリアだった。
[同日08:00.天候:晴 同ホテル 1Fレストラン]
稲生:「あ、おはようございます。……って、先生!」
イリーナ:「ん?なぁに?」
稲生:「あ、いえ、別に……」
マリア:「な?師匠がちゃんと起きて来る方が珍しいだろ?」
稲生:「うーん……そうですねぇ……」
イリーナ:「随分と失礼な弟子達だねぇ……」
稲生:「あ、いえ、すいません!」
マリア:「いや、だって、そうじゃないですか。いつもは『あと5分』を1時間は繰り返すのがデフォなのに……」
イリーナ:「こりゃ後でお説教だねぇ……」
マリア:「え?」
稲生:「あ……」
取りあえず、先に朝食を取る魔道師達。
マリア:「朝からカレーとは……」
稲生:「そういえば、カレーも久しぶりだったなと思いまして」
稲生はトレイの上にカレーの皿を乗せていた。
イリーナ:「ホテルのカレーは美味しいからね」
イリーナの場合、カレーに加えてパンやらゆで卵やらかなり山盛りにして乗せていた。
この中で1番身長が高く、巨乳でもあるイリーナだが、食欲もこの中で1番のようである。
イリーナ:「それじゃ、食べましょうか」
稲生:「はい」
欧州人であるイリーナとマリア。
神に祈りでも捧げてから食べそうなところだが、あいにくと魔道師達は基本的に神に見放され、むしろ悪魔から注目されている存在。
悪魔に祈りを捧げる必要など無い為、そのまま食べる。
イリーナ:「うん、これはイケる」
稲生:「そうですね」
イリーナ:「杖は夕方までにはできるって話だから、その時に取りに行きましょう」
稲生:「はい」
マリア:「さすがに2泊もできませんよね?」
稲生:「取りあえず今日、最終の東京行きの高速バスを取ってあります。今日中には東京入りできるかと」
イリーナ:「さすがはユウタ君」
マリア:「その夕方までにはまだ時間がありますが、何をしてますか?」
イリーナ:「ユウタ君、このホテルのチェックアウトの時間は?」
稲生:「10時です」
イリーナ:「それじゃ、その時間に出ましょう。それまでの間、ユウタ君は部屋でゆっくりしてて」
稲生:「はい」
イリーナ:「マリアはお説教ね」
マリア:「くそ……」
稲生:「ぼ、僕も付き合いますね」
マリア:「いいよ、別に」
稲生:「あ、そうだ。先生」
イリーナ:「なーに?」
稲生:「実は昨晩、変な夢を見まして……」
イリーナ:「変な夢?」
稲生:「はい。夢日記には書いておいたんですが……」
イリーナ:「分かったわ。それじゃ、それを占ってあげましょう。マリアのお説教は延期ね」
マリア:「はい。(免除にしてくれよ、師匠……)」
[同日09:30.天候:晴 同ホテル 7F客室]
イリーナ:「うーむ……」
稲生:「先生、いかがでしょう?」
イリーナ:「この165系とやらは、今でも走ってるの?」
稲生:「いえ、今現役で運転されていることはないと思います。だからこそ、幽霊電車みたいに見えて……」
イリーナ:「なるほど……。確かに、ユウタ君が見たのは冥界鉄道公社のヤツで間違い無いでしょうね」
稲生:「やっぱり!」
イリーナ:「昨夜、あの線路の上を実際に走ったのでしょう。それがたまたまユウタ君の魔力と感応したってところだろうね」
稲生:「ということは、何も心配無いということですね」
イリーナ:「そういうことになるね。まあ、普通の人間が冥鉄列車に間違えて乗ろうものならバッドエンド直行だけど、私達は別だからね。魔界のアルカディアシティに連れて行かれるだけで済む」
稲生:「もっとも、僕だけの力じゃ帰れないと思いますが……」
イリーナ:「シティ内ならどこでも連絡できるでしょ?それで迎えに行けるし」
稲生:「なるほど、そうか」
マリア:「もし本当に地獄に行くような列車だったら、そもそも私達ですら乗れないからな。間違って乗ってしまうこと自体、それがアルカディア行きなんだよ」
稲生:「なるほど。そうですか」
それ以前に稲生は、マリアがいつものプリーツスカートなのに、ベッドで足を組んで座ってること自体が気になって仕方が無かった。
冬場は黒いストッキングをはいているが、夏場は生足で黒いソックスである。
もちろんイリーナはそれに気づいていて、
イリーナ:(マリアもだいぶ慣れたってことかねぇ……)
と、思った。
イリーナ:「補足説明として、もしこれが今でも実際に走っている車両だったら要注意だよ」
稲生:「と、言いますと?」
イリーナ:「この夢を見た者がその列車に乗ってしまい、とんでもないことに巻き込まれることになる」
稲生:「そうなんですか」
イリーナ:「東アジア魔道団っていたでしょ?」
稲生:「山形で会いましたね」
イリーナ:「関西地方で、電車の大きな脱線事故があったでしょう?」
稲生:「福知山線脱線事故ですか?」
イリーナ:「あの犠牲者の中に、東アジア魔道団の者がいたの」
稲生:「本当ですか!?」
イリーナ:「もちろん、表向きは一般の乗客ってことになってるけどね。その彼も、稲生君と殆ど似たような夢を見たらしいよ。もっとも彼の場合は、お寺と御経ではなくて、選挙ポスターと御経だったらしいけど」
稲生:「創価学会!?」
イリーナ:「古い電車……ま、私は稲生君みたいに詳しいわけじゃないから分からないけど、とにかく今はもう走っていない古い電車が闇の中に消える直前、それが新しい電車に変身したんですって。でもほんの一瞬の出来事だったから、それが何だったのか、どんな意味なのか分からないまま、あの事故に巻き込まれたらしいね」
稲生:「207系ですか。そうですねぇ……」
イリーナ:「稲生君の場合は、今はもう走っていない古い電車しか出てこなかったから大丈夫だよ」
稲生:「まかり間違って、今はもう運転されてないはずの165系を見たら要注意ってことですね。僕の場合は」
イリーナ:「ま、そういうことになるかな」
マリアは右足の靴下が下がっているのに気づいて、右足をベッドの上に上げたが、すぐに下ろした。
イリーナ:「あら?ユウタ君、残念ね。今マリア、ラッキースケベだったのにw」
稲生:「えっ!?」
マリア:「師匠ッ!(危ない、危ない。つい無意識にやるところだった……)」
イリーナ:「さーさー、夕方まで時間があるんだから、今日は観光でもしよう!」
稲生:「今日の先生はノリノリですね」
マリア:(よしっ!私の説教のことは忘れてるぞ!)
イリーナ:「どこかいい所ある?」
稲生:「大石寺はどうでしょう?」
イリーナ:「却下」
マリア:「却下」
イリーナ:「あ、思い出した。マリア、あと30分あるからお説教タイムね」
マリア:「ええっ!?ユウタ、お前のせいだぞ!」
イリーナ:(大石寺……お寺……お坊さん……説法……説教!)
稲生:「すすす、すいません!」
ガッ!とマリア、稲生の首を掴んで締め上げる。
稲生:「ず……ずいませ……!(嗚呼……でも、マリアさん……直接、手の感覚が伝わってきて……!)」
M男、稲生。
イリーナ:「マリア、マリア。稲生君、幸せそうな顔してるけど、取りあえず死んじゃうから放しなさい」
マリア:「ぅおっと!」
チーン♪(稲生、泡吹いた)