[6号車]
5号車に巣くうゾンビ達を倒し、6号車に入ると、今度は1人の中年男が叫び声を上げて突っ込んできた。
愛原:「ぅおらっ!」
高橋:「先生!?」
私は何故だか、咄嗟にその男にタックルをかましてしまった。
何故こんなことをさせるんだ!?
私は勢いで後ろに仰け反り、男もまた後ろに仰け反って仰向けに倒れた。
高橋:「うわっ!」
私が後ろに倒れ込むと、最後に6号車入って来た高橋が抱き抱えてくれた。
愛原:「す、すまん、高橋!」
高橋:「いえっ、最高です……!」
敷島:「高橋君、そこは顔を赤くするところなのかい?」
男:「待てっ、閉めるんじゃない!!」
男は仰向けに倒れて一瞬、何が起きたか分からない様子だったが、すぐに我に返ったようだ。
敷島:「心配しなくても205系のドアは、勝手には閉まらな……あっ」
電車はカーブを通過していた。
その為に車両が傾き、貫通扉はその勢いでガチャンと強く閉まった。
男:「あぁあ!な、何てこった!!くそぅ……!」
男はドアの前に駆け寄り、ドアをドンドンと叩いた。
そして、ガチャガチャと取っ手を引っ張った。
どうやら開かないらしい。
男:「お前達のせいだぞ!せっかく……!せっかく助かったと思ったのに!何てことしやがるんだ!!」
よく見ると、男の顔が赤いのは憤怒のせいではなく、酔っ払っているからというのもあるようだった。
少し離れた私の位置からも、酒の臭いが感じ取れる。
敷島:「あんた、前の車両にいた人か?」
男:「このドアが開かなかったんだ!前の方は地獄だ!地獄から脱出する為のドアだったのに!お前達が閉めやがるから!!」
高橋:「閉まったのは電車の揺れのせいだ。文句あんなら、電車に言えっ、コラ!」
高橋が男に怒鳴りつけた。
男:「なにお……!?若造の分際で、生意気言うな、ヒック!」
敷島:「その若造に生意気言われるようなことをしたのは、どこの分際だい?」
男:「なに……!?」
男はスーツのポケットの中に手を入れると、そこからナイフを取り出した。
男:「き、キミは……ぼ、僕のことを……バカにしたよね?ぼ、僕はね……ヒック……バカにされるのが……ウッ……大嫌いなんだ。こ、こ、この罪は……ィック!命で償ってもらうよ……」
男は目がイかせると、ナイフを振り回した。
敷島氏はさすがテロを掻い潜って来たというだけあって、上手く避けている。
あの男がどうしてナイフを持っているかは知らないが、泥酔しているということもあって、ヘタな鉄砲もいい所だ。
愛原:「高橋君!無理無くあの酔っ払いを制圧できるかい!?」
高橋:「俺に任せてくださるのですか!?」
愛原:「相手は何をしでかすか分からない酔っ払いだ。ケンカの強いキミが倒してくれると助かるな」
高橋:「うおおっ!わっかりました!この俺にお任せ!!」
愛原:(チャラ男ならぬ、チョロ男)
敷島:「愛原さん、意外と悪党ですな」
高橋は酔っ払いのナイフ攻撃を掻い潜ると、ドンッと肩を当てた。
男:「うわっ!」
高橋は軽く肩を当てただけのように見えたが、酔っ払いはかなり遠くまで飛んだ。
それはつまり、高橋がそれだけケンカ慣れしているということだろう。
元ヤンというのは、やはり本当だったか。
男:「いてっ!!」
男はナイフを落としてしまい、5号車の貫通扉に背中をぶつけた。
その時、ポケットから何かメモ帳のようなものを落とした。
男:「うう……。あっ!」
男は立ち上がる時に、貫通扉の取っ手を握った。
その時、ガチャと貫通扉が開いた。
男:「おおっ、開いたぞ!これで助かる!」
愛原:「いや、ちょっと待て!後ろも後ろで危険だぞ!」
だが男は、私の声など聞いていなかった。
ドアがまたもやカーブの傾きで自動で閉まってしまう。
私が男の後を追おうとドアを開けようとしたが、なるほど、確かにドアがロックされているかのようにビクともしなかった。
高橋:「先生、あれを!」
高橋が指をさした先を見ると、窓ガラスに頭を突っ込んでいた女子高生ゾンビと男性客ゾンビが復活した。
生きている人間なら頭から大量出血モノの大ケガだが、ゾンビにとっては一時的に動きを止めるだけの凌ぎに過ぎなかったか。
男:「わっ、わっ、わあああああああああ!!」
男は男性客ゾンビに捕まり、首筋を噛まれた。
背後からは女子高生ゾンビがやってきて、彼の右腕に食らい付いた。
頭を踏み潰した女性客だけは、再びゾンビ化して襲い掛かって来ることはなかったが。
高橋:「先生、あれは……」
愛原:「霧生市のバイオハザードそのまんまだな」
男の返り血が貫通扉の窓ガラスにまで掛かって来るほどだった。
幸い敷島氏が幸太郎君の目を塞いで、この惨劇を見ないようにしてくれている。
敷島:「キミもなかなかのイケメンだね。どうだい?親会社に頼んでみるから、ジュニアアイドルになる気はないか?」
さり気なくスカウトしているのは、きっと気を紛らわせる為であると信じたい。
高橋はナイフを拾った。
結構刃渡りの長いバタフライナイフだ。
高橋:「ふっ、ふふ……うふふふふふふ……!10代の頃を思い出すぜ……!」
愛原:「高橋君、それはあくまで護身用にだけ使ってね」
高橋:「了解であります!」
取りあえず、手に入れたのはナイフとメモ帳か……。
バイオハザード的なノリだと、メモ帳には何かヒントが書かれているはずだ。
ナイフは高橋が1番扱い慣れているみたいだから、彼に任せるとしよう。
私はメモ帳を開いた。
だが、そのメモ帳は比較的真新しいもので、殆どが白紙だった。
愛原:「ちぇっ!何かヒントが書かれているかと思ったのに!」
敷島:「まあ、世の中そんなに甘くないということですよ。……あれ?でも最後のページにだけ、何か書いてありますよ?」
愛原:「『パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ!嗚呼、神の復讐よ!嗚呼、何ということだ!』?……何かのポエムかな?」
敷島:「変な宗教の人だったのかな?」
高橋:「先生、それより早く行きましょう。戻っても地獄です。進むべきだと思いますが?」
高橋は新しい武器を手に入れて少し気が大きくなったようだ。
愛原:「この先は地獄だとあの男は言ってました。大量にゾンビがいるか、それともハンターがいるか分かりませんが、行くしか無さそうですね」
敷島:「さっきのゾンビより強いヤツがいるんですか。うちのエミリーやシンディがいればなぁ……」
山根:「ジェットエンジンで空を飛ぶロボットのこと?」
敷島:「ロボットじゃない。ちゃんと心を持ったガイノイドだよ。ヘタな人間よりも優れているんだ」
愛原:「それは是非とも会ってみたいものですな」
敷島:「ええ。是非ともご紹介したいくらいです」
高橋:「フン、人間より優れたロボットねぇ……」
高橋は物凄く懐疑的だった。
私達は次なる車両、7号車への扉を開けた。
先頭車までは、あともう少し。
5号車に巣くうゾンビ達を倒し、6号車に入ると、今度は1人の中年男が叫び声を上げて突っ込んできた。
愛原:「ぅおらっ!」
高橋:「先生!?」
私は何故だか、咄嗟にその男にタックルをかましてしまった。
何故こんなことをさせるんだ!?
私は勢いで後ろに仰け反り、男もまた後ろに仰け反って仰向けに倒れた。
高橋:「うわっ!」
私が後ろに倒れ込むと、最後に6号車入って来た高橋が抱き抱えてくれた。
愛原:「す、すまん、高橋!」
高橋:「いえっ、最高です……!」
敷島:「高橋君、そこは顔を赤くするところなのかい?」
男:「待てっ、閉めるんじゃない!!」
男は仰向けに倒れて一瞬、何が起きたか分からない様子だったが、すぐに我に返ったようだ。
敷島:「心配しなくても205系のドアは、勝手には閉まらな……あっ」
電車はカーブを通過していた。
その為に車両が傾き、貫通扉はその勢いでガチャンと強く閉まった。
男:「あぁあ!な、何てこった!!くそぅ……!」
男はドアの前に駆け寄り、ドアをドンドンと叩いた。
そして、ガチャガチャと取っ手を引っ張った。
どうやら開かないらしい。
男:「お前達のせいだぞ!せっかく……!せっかく助かったと思ったのに!何てことしやがるんだ!!」
よく見ると、男の顔が赤いのは憤怒のせいではなく、酔っ払っているからというのもあるようだった。
少し離れた私の位置からも、酒の臭いが感じ取れる。
敷島:「あんた、前の車両にいた人か?」
男:「このドアが開かなかったんだ!前の方は地獄だ!地獄から脱出する為のドアだったのに!お前達が閉めやがるから!!」
高橋:「閉まったのは電車の揺れのせいだ。文句あんなら、電車に言えっ、コラ!」
高橋が男に怒鳴りつけた。
男:「なにお……!?若造の分際で、生意気言うな、ヒック!」
敷島:「その若造に生意気言われるようなことをしたのは、どこの分際だい?」
男:「なに……!?」
男はスーツのポケットの中に手を入れると、そこからナイフを取り出した。
男:「き、キミは……ぼ、僕のことを……バカにしたよね?ぼ、僕はね……ヒック……バカにされるのが……ウッ……大嫌いなんだ。こ、こ、この罪は……ィック!命で償ってもらうよ……」
男は目がイかせると、ナイフを振り回した。
敷島氏はさすがテロを掻い潜って来たというだけあって、上手く避けている。
あの男がどうしてナイフを持っているかは知らないが、泥酔しているということもあって、ヘタな鉄砲もいい所だ。
愛原:「高橋君!無理無くあの酔っ払いを制圧できるかい!?」
高橋:「俺に任せてくださるのですか!?」
愛原:「相手は何をしでかすか分からない酔っ払いだ。ケンカの強いキミが倒してくれると助かるな」
高橋:「うおおっ!わっかりました!この俺にお任せ!!」
愛原:(チャラ男ならぬ、チョロ男)
敷島:「愛原さん、意外と悪党ですな」
高橋は酔っ払いのナイフ攻撃を掻い潜ると、ドンッと肩を当てた。
男:「うわっ!」
高橋は軽く肩を当てただけのように見えたが、酔っ払いはかなり遠くまで飛んだ。
それはつまり、高橋がそれだけケンカ慣れしているということだろう。
元ヤンというのは、やはり本当だったか。
男:「いてっ!!」
男はナイフを落としてしまい、5号車の貫通扉に背中をぶつけた。
その時、ポケットから何かメモ帳のようなものを落とした。
男:「うう……。あっ!」
男は立ち上がる時に、貫通扉の取っ手を握った。
その時、ガチャと貫通扉が開いた。
男:「おおっ、開いたぞ!これで助かる!」
愛原:「いや、ちょっと待て!後ろも後ろで危険だぞ!」
だが男は、私の声など聞いていなかった。
ドアがまたもやカーブの傾きで自動で閉まってしまう。
私が男の後を追おうとドアを開けようとしたが、なるほど、確かにドアがロックされているかのようにビクともしなかった。
高橋:「先生、あれを!」
高橋が指をさした先を見ると、窓ガラスに頭を突っ込んでいた女子高生ゾンビと男性客ゾンビが復活した。
生きている人間なら頭から大量出血モノの大ケガだが、ゾンビにとっては一時的に動きを止めるだけの凌ぎに過ぎなかったか。
男:「わっ、わっ、わあああああああああ!!」
男は男性客ゾンビに捕まり、首筋を噛まれた。
背後からは女子高生ゾンビがやってきて、彼の右腕に食らい付いた。
頭を踏み潰した女性客だけは、再びゾンビ化して襲い掛かって来ることはなかったが。
高橋:「先生、あれは……」
愛原:「霧生市のバイオハザードそのまんまだな」
男の返り血が貫通扉の窓ガラスにまで掛かって来るほどだった。
幸い敷島氏が幸太郎君の目を塞いで、この惨劇を見ないようにしてくれている。
敷島:「キミもなかなかのイケメンだね。どうだい?親会社に頼んでみるから、ジュニアアイドルになる気はないか?」
さり気なくスカウトしているのは、きっと気を紛らわせる為であると信じたい。
高橋はナイフを拾った。
結構刃渡りの長いバタフライナイフだ。
高橋:「ふっ、ふふ……うふふふふふふ……!10代の頃を思い出すぜ……!」
愛原:「高橋君、それはあくまで護身用にだけ使ってね」
高橋:「了解であります!」
取りあえず、手に入れたのはナイフとメモ帳か……。
バイオハザード的なノリだと、メモ帳には何かヒントが書かれているはずだ。
ナイフは高橋が1番扱い慣れているみたいだから、彼に任せるとしよう。
私はメモ帳を開いた。
だが、そのメモ帳は比較的真新しいもので、殆どが白紙だった。
愛原:「ちぇっ!何かヒントが書かれているかと思ったのに!」
敷島:「まあ、世の中そんなに甘くないということですよ。……あれ?でも最後のページにだけ、何か書いてありますよ?」
愛原:「『パペ、サタン、パペ、サタン、アレッペ!嗚呼、神の復讐よ!嗚呼、何ということだ!』?……何かのポエムかな?」
敷島:「変な宗教の人だったのかな?」
高橋:「先生、それより早く行きましょう。戻っても地獄です。進むべきだと思いますが?」
高橋は新しい武器を手に入れて少し気が大きくなったようだ。
愛原:「この先は地獄だとあの男は言ってました。大量にゾンビがいるか、それともハンターがいるか分かりませんが、行くしか無さそうですね」
敷島:「さっきのゾンビより強いヤツがいるんですか。うちのエミリーやシンディがいればなぁ……」
山根:「ジェットエンジンで空を飛ぶロボットのこと?」
敷島:「ロボットじゃない。ちゃんと心を持ったガイノイドだよ。ヘタな人間よりも優れているんだ」
愛原:「それは是非とも会ってみたいものですな」
敷島:「ええ。是非ともご紹介したいくらいです」
高橋:「フン、人間より優れたロボットねぇ……」
高橋は物凄く懐疑的だった。
私達は次なる車両、7号車への扉を開けた。
先頭車までは、あともう少し。