報恩坊の怪しい偽作家!

 自作の小説がメインのブログです。
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 実際のものとは異なります。

“大魔道師の弟子” 「魔道師達の体内周期」

2016-03-15 19:01:08 | ユタと愉快な仲間たちシリーズ
[3月11日04:00.天候:曇 宮城県仙台市宮城野区榴岡・東横イン仙台東口1号館客室 マリアンナ・ベルフェ・スカーレット]

 まだ外は暗い。
 だが、雪は止んだようだ。
 何故かベッドの横の目覚まし時計が中途半端な時間に、ふとマリアは目が覚めた。
 特段、変な夢を見たわけではない。
 稲生と一緒に行動するようになってから、人間時代に受けた凄惨な体験を夢として再体験することはなくなった。
 ただ、稲生が帰省や旅行やらで1週間くらい出払うと、また変な夢を見たりするのだが。
 部屋は違えど、1つ屋根の下であれば、稲生からのブロックにより、悪夢を見ることは無いようである。
「…………」
 いつもならイリーナと一緒の部屋なのだが、今回は予約の都合で全員が1人部屋である。
 この方がいいような気がした。
 屋敷にいても、イリーナがいる時は何故かマリアの部屋で寝たがるからだ。
 一応、イリーナ用の部屋はあるのだが……。
 マリアは何でこんな時間に目が覚めたのか分からず、ボーッと天井を見つめていた。
 そう言えば昨晩、部屋に戻る直前、ホテルの外に“使い魔”のような者がいたのだが、ホテルの中に入って来ることはなかった。
 そして別に、この部屋にそれらしい気配は無い。
 あれば契約悪魔のベルフェゴールが警鐘を鳴らしてくれる。
(トイレ行こ……)
 何だか下半身が冷える感じがして、マリアはトイレに行こうとした。
 ホテルの部屋着は、マリアが屋敷で夜着として着るワンピース型のそれをもう少し地味にした感じである。
「!!!」
 どうして下半身が寒い感じがしたのかの理由が分かった。
 恐らく、それで目が覚めたのだろうとも。
 ショーツが半脱ぎ状態であったからだ。
 半脱ぎというか、左足から脱げて、右足で引っ掛かっている状態である。
(しまったな……!あのまま寝てしまったのか……)
 一体、マリアは何をしていたのだろうか。
 トイレに行っている間、マリアは昨日のことを思い出していた。
 稲生と一緒に行動したわけだが、実は初めて素手で稲生と手を握った。
 まだ人間時代のトラウマが治っておらず、何とか弟弟子の稲生にだけは心を開ける状態にはなれたが、それでも手を繋ごうとした時、手袋をしていないとダメな状態であった。
 それが昨日は……。
 嬉しくて、稲生と握った手で昨日は【自主規制】。

 トイレから戻った後、再びベッドに潜り込んだマリアだったが、昨夜のことで興奮冷めやらず、夜が明けるまで悶々としていたという。

[同日07:00.天候:曇 同場所・稲生の部屋 稲生勇太]

 ベッドの横に置いたスマホから、JR大宮駅4番線と9番線の発車メロディが流れてくる。
「うーん……」
 稲生は手を伸ばし、ピッと発車メロディ……もとい、スマホのアラームを止めた。
「宇都宮線、ドアが閉まります。ご注意ください……。ブー……」
 客終合図まで呟いた後、マリアと違って寝起き悪く起き上がる。
「んー……何だろう?風邪でも引いたかな……?」
 何だかだるい上に、頭の重い頭痛がする。
 別に咳が出たり、鼻水が出たり、熱っぽいなどの症状は無いのだが……。
「朝食べたら、バファリンでも飲んでおこう」
 一応、薬は持って来ていた稲生だった。

[同日07:30.天候:晴 同場所1Fロビー 稲生&マリア]

「ユウタ、おは……よ?」
「おはようございます……」
 東横インでは、1Fロビーが朝食会場と兼用である。
 宿泊客には無料で振る舞われ、稲生はおにぎりや漬物、味噌汁などを取っていた。
 元から大食ではない稲生である為、いつもの量ではあるが、明らかにテンションが低い。
「どうした、ユウタ?具合が悪いのか?」
 マリアは稲生の顔を覗き込むように聞いた。
 逆にどういうわけだか、マリアの方がいつもよりテンションは高そう。
「まあ……。何か、寝起きが悪くて……。少し頭も痛いので、後で薬を飲もうと思います」
「風邪でも引いた?」
「いや、そんな感じではないんですが……」
「ふーん……?後で師匠に相談しよう。師匠ならいい薬があるかもしれない」
「はあ……」

 稲生がいつもよりゆっくり食べている中、マリアはいつもより食欲旺盛にパクパクと食べていた。
「マリアさんは……元気そうですね……」
「まあ、数日後にはユウタみたいになると思うよ」
「えっ?」
 稲生はマリアの言葉に首を傾げた。
「おーはよー」
 そこへイリーナが欠伸をしながらエレベーターを降りてきた。
「おはようございます」
「おはようございます……」
「んお?まるで2人とも、体と魂が入れ替わったかのようだねぇ……」
「ええっ?」
「ははっ(笑)、実際そんな魔法、儀式でも行わないとできないことなんだけどね」
(儀式をすればできるんだ……)
「師匠、ユウタの調子が悪いみたいなんです。何かいい薬はありますか?」
「おぉ?何だか顔色が悪いねぇ……」
「昨夜までは何とも無くて、寝付きは良かったんですけど、朝起きたらこのザマで……」
「……で、逆にマリアは調子が良さそうだね」
「一応は」
「ふむふむ。じゃあ、後で部屋で看てあげようね」

[同日09:00.天候:晴 同ホテル・イリーナの部屋 稲生、マリア、イリーナ・レヴィア・ブリジッド]

 イリーナが寝泊まりした部屋はデラックスシングルであるが、稲生達が寝泊まりした普通のシングルとの違いは、窓際にテーブルと椅子があるかどうかの違いである。
 稲生とマリアの部屋は広くなく、ほとんどベッドが窓際までくっついている状態だが、イリーナの部屋は椅子とテーブルを別に置けるくらいの広さがあるということだ。
 しかしベッドはセミダブルくらいの大きさがあるので、ベッドまで小さくて狭いわけではない。
「なるほどね。じゃあ稲生君、ちょっと立ってみてー」
「はい」
 稲生はイリーナの前に立った。
 イリーナは椅子に座ったまま稲生と正対し、そして、両手でポンポンと腰と尻の横を叩いた。
「師匠!?」
「フム……。今度はマリア、おいでー」
「は、はい」
 今度はイリーナ、マリアに対して稲生と同じことをする。
「本当はスカートの上からじゃなくて、下着の上からの方がいいんだけど……」
「ぼ、僕、外に出てます」
「いや、いいよ。何となく分かったから」
「は?」
「原因は『生理』だね」
「生理!?僕は男ですよ!?」
「私はまだ来てませんが?」
「男性にも『生理』はあるのよ。女性と同じ周期的にね。だもんで、症状は女性と似てたりするのね」
「まあ、私も来たら頭は痛いし、体もだるくて起き上がれないことがありますが……」
「今やったのは、骨盤の開き具合を見ただけ。もちろん、人間の医師はこんなことしないけどね。稲生君は骨盤が開いてて、マリアは閉じていた。骨盤が開くと、『生理』になるからね」
「へえ……」
「ユウタ君にはマリアの生理薬をアレンジしておくから、それを後で飲んで。チェック・アウトの時間までにはやっておくから」
「骨盤を閉じさせる薬ですか?」
「骨盤が開いても症状を抑える薬よ」
「ユウタ、良かったら私のナプキン使って」
「は!?」
「マリア。男性の『生理』で、おりものとかは出ないからね?それ以外の症状は似てるって話なだけでね」
 因みに子宮も無いので、腹痛の症状があるわけでもない。
 精巣の働きが悪くなるので、性欲はかなり減退する。
「こんな大事な日に、体の具合が悪いんじゃ、ここまで来た意味が無くなっちゃうものね」
「どうもすいません」

 その後、稲生はイリーナから薬をもらい、それを服用したのだった。
コメント (2)
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