[3月11日22:00.天候:晴 仙台市青葉区・ホテル法華クラブ仙台 3号機のシンディ&敷島孝夫]
ベッドにうつ伏せで爆睡する敷島。
シンディは窓の前に立って、通信を行っていた。
相手はオーナー(マスター)であるアリスである。
シンディ:「社長はお休みになりました。朝までぐっすり眠られると思います」
アリス:「ご苦労様。あなたも充電して、明日に備えなさい」
シンディ:「かしこまりました」
アリス:「サーバーに使用するダミーは誰になったの?」
シンディ:「エミリーです。トップナンバーを使用した方が良いという理由です」
アリス:「タカオらしいわ」(電話の向こうで笑う)
シンディ:「また、バージョン4.0が迷惑を掛けたらしいですね」
アリス:「まあね。でもまあ、心配しなくていいよ。こっちにはマリオとルイージがいるし。旧型の1機や2機、アタシの自身作の最新モデルならイチコロよ」
シンディ:「さすがです。私も……」
アリス:「ん?」
シンディ:「アルみたいな最新モデルが量産されたら、私達も……」
アリス:「その心配は当分無いね」
シンディ:「そうですか?」
アリス:「そもそもマルチタイプが1機ずつのハンドメイドだもの。バージョン・シリーズみたいに工場生産できるわけじゃないしね。そんな生産ペースじゃ、非売品同然だもの。てか、アルエットはまた違う行程で作った、マルチタイプに似て非なる物だから。あなたは何も心配することはないよ」
シンディ:「かしこまりました」
アリス:「とにかく、あなたは引き続き、タカオが浮気しないように監視を続けてちょうだい。その為なら、どんな手を使ってもいいから」
シンディ:「かしこまりました」
アリス:「今日はマッサージをしてあげて、気持ち良く眠らせたのね」
シンディ:「はい、そうです」
アリス:「よしよし。その調子よ」
シンディ:「お役に立てて何よりです。……それでは」
シンディは通信を切った。
そこで、ふと思い立つ。
シンディ:(そうだ。一応、私もボカロの護衛役なんだから、様子を見に行こう)
シンディは敷島の部屋を出て、まずは鏡音リン・レンの部屋に向かった。
[同日22:15.天候:晴 同ホテル・鏡音リンとレンの部屋 シンディ、鏡音リン・レン]
シンディの予想はグッスリ“寝てる”か、枕投げでもしているところだろうと思った。
まるで昔の修学旅行で、引率の教師になった気分だ。
ホテルのドアはオートロックなので、中から開けてもらうことになる。
外から呼び掛けてみると、意外にもすぐにドアが開いた。
レン:「はい、どうしました?シンディ?」
シンディ:「すぐに開けたってことは、まだ“寝て”なかったわけね?」
レン:「充電のタイマーは23時からですから」
ロイド達の充電は、一斉に深夜電力を使って充電される。
東京電力では深夜電力は23時からであるため、ボカロの充電開始設定時刻を23時にしているのだった。
シンディ:「ホテルの客室の電気はタダだから、別に今から充電開始したっていいのよ?」
レン:「まあ、確かに……」
シンディ:「で、リンはどこ?」
レンはバスルームを指さした。
右腕のペイント、赤字で『02』の数字が見えた。
レン:「体を洗ってます」
シンディ:「なるほど。あんたは……リンの次か」
レン:「ええ」
そこへ、ガチャッとバスルームのドアが開けられ、リンが出て来た。
体にバスタオルだけを巻いている。
リン:「あれ、シンディ!?」
シンディ:「何もそんなに驚くこともないでしょう?“就寝前”の巡察だよ」
リン:「なーんだ。つい、レンが何かしたのかと思ったYo〜」
レン:「何でだよ!」
シンディ:「まあとにかく、レンも体洗ったら、すぐに充電の準備するんだよ」
レン:「はい」
無邪気な双子の姉に対し、それよりしっかりとした弟のレンといった感じだが、設定年齢14歳という難しい年頃のせいか、そんなレンでも弾けることはある。
また、ファンの前ではイケメンキャラのKAITOと被らないようにする為か、無垢な少年というイメージで出ることが多い。
今回の追悼ライブでも、そんなイメージで出たと思われる。
[同日22:30.天候:晴 同ホテル・MEIKOの部屋 シンディ&MEIKO]
リンとレンはツインルームであった。
それに対し、MEIKOはシングルルームである。
シンディ:「お疲れ。MEIKO」
MEIKO:「お〜、シンディか。どうしたの?寂しくなった?」
シンディ:「冗談!警護役として、就寝前の巡察よ」
MEIKOも体を洗ったのか、髪が濡れていて、室内にあった部屋着を着ていた。
ライティングデスクやその椅子の上には、赤い服が無造作に置かれている。
MEIKOは敷島エージェンシー所属のボカロの中で、1番衣装の露出が高い。
バドスーツのような感じだからか。
それが却って、ガイノイドといった感じを出している。
シンディ:「“就寝前”の“入浴”?考えることは皆同じだね」
MEIKOは自分の服を畳む。
MEIKO:「まあね」
シンディ:「ヴァージョン3にソフトウェア交換もしたことだし、調子もいいみたいだね」
MEIKO:「おかげさまで。あとはボディ交換だって」
シンディ:「ロイドなら、だれでも通る道か。大丈夫大丈夫。ちゃんとメモリーやデータは別の媒体に保存されているから、それからソフト関係を新しいボディに移し替えるだけだから」
ロイドの体はとても精密である。
その為、通常のメンテナンスだけではとても長期間稼働できるものではない。
ボディを丸ごと交換する必要も出てくる。
大抵はモデルチェンジすることはなく、そのままの設計で新しく造ったボディに移し替えるだけである。
ボーカロイドでも大変なのにマルチタイプはもっと大変で、エミリーは交換用のボディの新造が間に合わず、無理ができない為に南里志郎記念館への“常設展示”を余儀無くされた。
今ではボディの交換も済んでいるのだが、引き続き記念館に残り、“館長”として来館者を出迎えている。
シンディ:「何も心配無い。誰でも通る道だから」
MEIKO:「それならいいんだけど……」
シンディ:「あなたはリン達と違って“大人”だから、何も心配無いか」
MEIKO:「大丈夫よ。ちゃんと設定時間は守るって」
シンディ:「じゃ、何かあったら教えて。充電中でも通信はできるから」
MEIKO:「了解、お休み」
[同日22:30.天候:晴 同ホテル・敷島の部屋 シンディ]
巡察を終えたシンディは、敷島の部屋に戻ってきた。
シンディ:「!」
入った瞬間、シンディは何か違和感を覚えた。
持ち出したカードキーをドアの横の壁に差し込む。
これで室内が通電する。
敷島が寝ているので、照明は点けない。
点けなくても、ロイドには暗視カメラが付いているので暗闇でも見える。
敷島のベッドを見ると、こんもりと布団が盛り上がってる。
頭から布団を被って寝ているのだろう。
だが、生命反応が無い。
シンディ:「!」
シンディはその布団を捲り上げた。
するとそこに、本人はいなかった。
予備の毛布やタオルを丸めて詰め込んだだけ。
シンディはバスルームを確認したが、そこにもいない。
部屋中をスキャンしたが、敷島の姿は無かった。
で、クロゼットを開けると、掛けてあった敷島の服が無い。
シンディ:「逃げやがったな!あのクソ社長!!」
シンディも急いで部屋を飛び出した。
ターゲットは、どこまでも追い掛けて追い詰めるのがマルチタイプだ。
敷島は果たして、逃げ切れるだろうか。
翌朝が楽しみだ。
ベッドにうつ伏せで爆睡する敷島。
シンディは窓の前に立って、通信を行っていた。
相手はオーナー(マスター)であるアリスである。
シンディ:「社長はお休みになりました。朝までぐっすり眠られると思います」
アリス:「ご苦労様。あなたも充電して、明日に備えなさい」
シンディ:「かしこまりました」
アリス:「サーバーに使用するダミーは誰になったの?」
シンディ:「エミリーです。トップナンバーを使用した方が良いという理由です」
アリス:「タカオらしいわ」(電話の向こうで笑う)
シンディ:「また、バージョン4.0が迷惑を掛けたらしいですね」
アリス:「まあね。でもまあ、心配しなくていいよ。こっちにはマリオとルイージがいるし。旧型の1機や2機、アタシの自身作の最新モデルならイチコロよ」
シンディ:「さすがです。私も……」
アリス:「ん?」
シンディ:「アルみたいな最新モデルが量産されたら、私達も……」
アリス:「その心配は当分無いね」
シンディ:「そうですか?」
アリス:「そもそもマルチタイプが1機ずつのハンドメイドだもの。バージョン・シリーズみたいに工場生産できるわけじゃないしね。そんな生産ペースじゃ、非売品同然だもの。てか、アルエットはまた違う行程で作った、マルチタイプに似て非なる物だから。あなたは何も心配することはないよ」
シンディ:「かしこまりました」
アリス:「とにかく、あなたは引き続き、タカオが浮気しないように監視を続けてちょうだい。その為なら、どんな手を使ってもいいから」
シンディ:「かしこまりました」
アリス:「今日はマッサージをしてあげて、気持ち良く眠らせたのね」
シンディ:「はい、そうです」
アリス:「よしよし。その調子よ」
シンディ:「お役に立てて何よりです。……それでは」
シンディは通信を切った。
そこで、ふと思い立つ。
シンディ:(そうだ。一応、私もボカロの護衛役なんだから、様子を見に行こう)
シンディは敷島の部屋を出て、まずは鏡音リン・レンの部屋に向かった。
[同日22:15.天候:晴 同ホテル・鏡音リンとレンの部屋 シンディ、鏡音リン・レン]
シンディの予想はグッスリ“寝てる”か、枕投げでもしているところだろうと思った。
まるで昔の修学旅行で、引率の教師になった気分だ。
ホテルのドアはオートロックなので、中から開けてもらうことになる。
外から呼び掛けてみると、意外にもすぐにドアが開いた。
レン:「はい、どうしました?シンディ?」
シンディ:「すぐに開けたってことは、まだ“寝て”なかったわけね?」
レン:「充電のタイマーは23時からですから」
ロイド達の充電は、一斉に深夜電力を使って充電される。
東京電力では深夜電力は23時からであるため、ボカロの充電開始設定時刻を23時にしているのだった。
シンディ:「ホテルの客室の電気はタダだから、別に今から充電開始したっていいのよ?」
レン:「まあ、確かに……」
シンディ:「で、リンはどこ?」
レンはバスルームを指さした。
右腕のペイント、赤字で『02』の数字が見えた。
レン:「体を洗ってます」
シンディ:「なるほど。あんたは……リンの次か」
レン:「ええ」
そこへ、ガチャッとバスルームのドアが開けられ、リンが出て来た。
体にバスタオルだけを巻いている。
リン:「あれ、シンディ!?」
シンディ:「何もそんなに驚くこともないでしょう?“就寝前”の巡察だよ」
リン:「なーんだ。つい、レンが何かしたのかと思ったYo〜」
レン:「何でだよ!」
シンディ:「まあとにかく、レンも体洗ったら、すぐに充電の準備するんだよ」
レン:「はい」
無邪気な双子の姉に対し、それよりしっかりとした弟のレンといった感じだが、設定年齢14歳という難しい年頃のせいか、そんなレンでも弾けることはある。
また、ファンの前ではイケメンキャラのKAITOと被らないようにする為か、無垢な少年というイメージで出ることが多い。
今回の追悼ライブでも、そんなイメージで出たと思われる。
[同日22:30.天候:晴 同ホテル・MEIKOの部屋 シンディ&MEIKO]
リンとレンはツインルームであった。
それに対し、MEIKOはシングルルームである。
シンディ:「お疲れ。MEIKO」
MEIKO:「お〜、シンディか。どうしたの?寂しくなった?」
シンディ:「冗談!警護役として、就寝前の巡察よ」
MEIKOも体を洗ったのか、髪が濡れていて、室内にあった部屋着を着ていた。
ライティングデスクやその椅子の上には、赤い服が無造作に置かれている。
MEIKOは敷島エージェンシー所属のボカロの中で、1番衣装の露出が高い。
バドスーツのような感じだからか。
それが却って、ガイノイドといった感じを出している。
シンディ:「“就寝前”の“入浴”?考えることは皆同じだね」
MEIKOは自分の服を畳む。
MEIKO:「まあね」
シンディ:「ヴァージョン3にソフトウェア交換もしたことだし、調子もいいみたいだね」
MEIKO:「おかげさまで。あとはボディ交換だって」
シンディ:「ロイドなら、だれでも通る道か。大丈夫大丈夫。ちゃんとメモリーやデータは別の媒体に保存されているから、それからソフト関係を新しいボディに移し替えるだけだから」
ロイドの体はとても精密である。
その為、通常のメンテナンスだけではとても長期間稼働できるものではない。
ボディを丸ごと交換する必要も出てくる。
大抵はモデルチェンジすることはなく、そのままの設計で新しく造ったボディに移し替えるだけである。
ボーカロイドでも大変なのにマルチタイプはもっと大変で、エミリーは交換用のボディの新造が間に合わず、無理ができない為に南里志郎記念館への“常設展示”を余儀無くされた。
今ではボディの交換も済んでいるのだが、引き続き記念館に残り、“館長”として来館者を出迎えている。
シンディ:「何も心配無い。誰でも通る道だから」
MEIKO:「それならいいんだけど……」
シンディ:「あなたはリン達と違って“大人”だから、何も心配無いか」
MEIKO:「大丈夫よ。ちゃんと設定時間は守るって」
シンディ:「じゃ、何かあったら教えて。充電中でも通信はできるから」
MEIKO:「了解、お休み」
[同日22:30.天候:晴 同ホテル・敷島の部屋 シンディ]
巡察を終えたシンディは、敷島の部屋に戻ってきた。
シンディ:「!」
入った瞬間、シンディは何か違和感を覚えた。
持ち出したカードキーをドアの横の壁に差し込む。
これで室内が通電する。
敷島が寝ているので、照明は点けない。
点けなくても、ロイドには暗視カメラが付いているので暗闇でも見える。
敷島のベッドを見ると、こんもりと布団が盛り上がってる。
頭から布団を被って寝ているのだろう。
だが、生命反応が無い。
シンディ:「!」
シンディはその布団を捲り上げた。
するとそこに、本人はいなかった。
予備の毛布やタオルを丸めて詰め込んだだけ。
シンディはバスルームを確認したが、そこにもいない。
部屋中をスキャンしたが、敷島の姿は無かった。
で、クロゼットを開けると、掛けてあった敷島の服が無い。
シンディ:「逃げやがったな!あのクソ社長!!」
シンディも急いで部屋を飛び出した。
ターゲットは、どこまでも追い掛けて追い詰めるのがマルチタイプだ。
敷島は果たして、逃げ切れるだろうか。
翌朝が楽しみだ。