[3月11日14:46~14:47.天候:晴 山形県山形市郊外・DCJ山形工場 3号機のシンディ、敷島孝夫、平賀太一、1号機のエミリー、西山潔(工場長)]
応接室内にあるテレビ。
そこでは追悼式の模様が中継されている。
〔「黙祷!」〕
震災発生の14時46分になり、室内の人間達はもちろん、鋼鉄姉妹も黙祷を行う。
その間1分であるが、鋼鉄姉妹達は体内時計が正確なせいか、1秒たりとも狂わず、ピッタリ1分間黙祷した。
〔「黙祷、終わります。……」〕
ここでテレビを消す西山。
西山:「山形などの日本海側は確かに大津波の被害などはありませんでしたけどね、他人事ではなかったですよ。仙台支社との交流は盛んですから、支社に行ったうちの人間が帰って来れなくなったりして、大変でした」
敷島:「なるほど……」
西山:「平賀先生のエミリーは、震災当時から救助活動をしていたそうですね」
平賀:「ええ。自分のバッテリー消耗が激しくなるのも厭わず、研究所周辺に飛び出していったそうです。その時のメモリーはちゃんと保存されています」
西山:「機会があれば、是非見てみたいものですね」
[同日15:00.天候:晴 DCJ山形工場 シンディ、敷島、平賀、エミリー]
西山:「それではタクシーが到着したようですので……」
敷島:「どうもすいません」
西山:「それでは先生の発明のアイディアについて、うちのライセンス契約の件、よろしくお願いしますよ」
平賀:「1から作るわけじゃないから発明というにはどうかと思いますが、それは間違いなく……」
DCJ山形工場で既に製造している製品を、敷島の発案並びに平賀の技術でアレンジするだけだ。
応接室を出て先ほど車で乗り付けた正面入口に向かうと……。
一同:「!!!」
通路の両脇にズラッと並んで、“伏せ拝”するロボット達がいた。
そのロボット達の中にはバージョン4.0が何体かおり、こいつらが何か鼓舞しているらしい。
それぞれ右腕に号数がペイントされている。
13号機:「エミリー様並ビにシンディ様ノオ帰リ〜!」
48号機:「オ前ラ、頭ガ高イ!シリーズM殿方ハ、コレヨリ仙台ヘオ戻リデアラレルゾー!」
112号機:「ソコノPepper!控エオロウ!」
Pepper:「すみません。何を・言ってるのか・分かりません」
というかPepperは体の構造上、伏せ拝は無理だろう。
西山:「な、何の騒ぎだ!?」(驚愕する工場長)
敷島:「またか、こいつら……。一体、何だってんだ」(軽い頭痛を覚える敷島)
平賀:「エミリー達の“親衛隊”みたいなものですからねぇ……。てか、こりゃ早いとこ、何とかしないと」
エミリー:「お前達・散れ!」
シンディ:「恥ずかしいことしてんじゃないよ!普通に挨拶できないのかい!?」
鋼鉄姉妹達の叱責により、一応、ロボット達を散開させることはできたものの……。
タクシーに乗り込んで出発はした。
敷島:「敷地外まで追って来る気か、あいつら……」(後ろを振り向いて、大きく手を振りながら追い掛けてくるバージョン達を見る)
平賀:「何とか言うか……。昔、アイドルの追っかけをする親衛隊……というよりは、金正恩第一書記の見送りをする朝鮮人民軍の兵士達って感じですね」
敷島:「言えてる」
唯一、普通に挨拶してくれたのが、クワを片手にイモ畑から戻ってきたゴンスケ(量産型?号数不明)であったという。
[同日15:25.天候:晴 山交ビルバスターミナル シンディ、敷島、平賀、エミリー]
タクシーが市街地に入る。
向かう先はJR山形駅ではなく、その東側にある山交ビル。
敷島:「ありゃりゃ?バス、行っちゃったか……」
山交ビルは1階がバスターミナルになっており、タクシーがその付近に差し掛かると、ちょうど仙台行きの高速バスが出てくる所が見えた。
シンディ:「どうする?アタシが狙撃して止める?」
敷島:「別に終バスじゃないんだし、いいよ、次のバスで」(苦笑)
平賀:「(最終バスだったら、狙撃命令出してたのか、敷島さんは……)」(冷や汗)
エミリー:(私の・ショットガンと・マシンガン、狙撃に・向いて・いない)
タクシーがビルの前に到着し、そこで降りる。
帰りは電車にしなかったのは接続が悪かったのと、バスの方が本数が多いし、安いからである。
何より、高速バスは全員着席が基本。
これなら鋼鉄姉妹達も気を使って立つことはなく、着席できるというわけだ。
エミリー:「次の・バスは・15時40分発、宮城交通便です」(エミリー、自前の検索機能で時刻表検索を行った)
敷島:「おっ、結構本数あるな」
平賀:「それだけ賑わう路線なんですね。運賃はいくらだろう?」
シンディ:「社長、アタシが乗車券買ってきます」
敷島:「ああ、そうだな」
エミリー:「運賃は片道930円、合計3720円です」
シンディ:「じゃあ、アタシが乗車券買ってくるよ」
敷島、財布の中から5000円札を出す。
敷島:「ほい、じゃあ買って来てくれや」
シンディ:「了解」
平賀:「敷島さん、後でお金払いますから……」
敷島:「いや、いいですよ。先ほど、タクシー代出してくれましたし……」
バスの発着場、3番乗り場でバスを待つ。
まだ誰も並んでいない。
前便が出発したばかりだからだろうか。
平賀:「敷島さん、自分、タバコ行って来ます」
敷島:「ああ、どうぞ。ギリギリまで。席は取っておきますから」
平賀:「どうも」
シンディ:「はい、キップ」(何故か自分の胸の間に挟んで持って来る)
敷島:「七海じゃないんだから、お前……」(呆)
日本初のメイドロイド、七海を完成させた平賀は、稼働テストと海水耐性テストを兼ねて、海水浴場に連れて行った。
浜辺でジュースを買いに行かせた平賀、七海は無事に平賀の命令をクリアした。
……のだが、何故かジュースを豊かな胸の間に挟んで持って来たという。
理由は平賀の個人PCの中に入っていた画像データの中に、そういうポーズを取って撮影されたグラビアアイドルのものがあり、それをマネしたのだという。
そんなことしている間に発車5分前には、バスがやってきた。
宮城交通バスの三菱ふそうの新型エアロエース(ハイウェイライナー)である。
〔「お待たせ致しました。15時40分発、仙台行きです」〕
ブシューという大きなエアーの音と共に、運転席横のドアが開く。
運賃は後払い形式なので、乗車券を持っていても、先に運賃箱に入れることはない。
乗降口入ってすぐの所にある整理券は取る必要がある。
鋼鉄姉妹達が乗り込むと、まるでバスがニーリング機能を使ったかのように一瞬沈み込む。
エミリーの自重は150キロ、シンディでも180キロはあるからだ。
これでも前期型のボディにおいては共に200キロあったことから、一応の軽量化はされている。
敷島:「じゃあ、シンディは俺の隣に座ってくれ」
シンディ:「了解」
敷島:「平賀先生はそっちの席にしてもらおう。これならお前ら、通路を挟んでだけれども、隣り合わせになれるぞ」
エミリー:「ありがとう・ございます」
タバコから戻ってきた平賀が、このバスターミナルから乗った最後の乗客となった。
バスはまだガラガラの状態の中、定刻通りにバスターミナルを発車した。
応接室内にあるテレビ。
そこでは追悼式の模様が中継されている。
〔「黙祷!」〕
震災発生の14時46分になり、室内の人間達はもちろん、鋼鉄姉妹も黙祷を行う。
その間1分であるが、鋼鉄姉妹達は体内時計が正確なせいか、1秒たりとも狂わず、ピッタリ1分間黙祷した。
〔「黙祷、終わります。……」〕
ここでテレビを消す西山。
西山:「山形などの日本海側は確かに大津波の被害などはありませんでしたけどね、他人事ではなかったですよ。仙台支社との交流は盛んですから、支社に行ったうちの人間が帰って来れなくなったりして、大変でした」
敷島:「なるほど……」
西山:「平賀先生のエミリーは、震災当時から救助活動をしていたそうですね」
平賀:「ええ。自分のバッテリー消耗が激しくなるのも厭わず、研究所周辺に飛び出していったそうです。その時のメモリーはちゃんと保存されています」
西山:「機会があれば、是非見てみたいものですね」
[同日15:00.天候:晴 DCJ山形工場 シンディ、敷島、平賀、エミリー]
西山:「それではタクシーが到着したようですので……」
敷島:「どうもすいません」
西山:「それでは先生の発明のアイディアについて、うちのライセンス契約の件、よろしくお願いしますよ」
平賀:「1から作るわけじゃないから発明というにはどうかと思いますが、それは間違いなく……」
DCJ山形工場で既に製造している製品を、敷島の発案並びに平賀の技術でアレンジするだけだ。
応接室を出て先ほど車で乗り付けた正面入口に向かうと……。
一同:「!!!」
通路の両脇にズラッと並んで、“伏せ拝”するロボット達がいた。
そのロボット達の中にはバージョン4.0が何体かおり、こいつらが何か鼓舞しているらしい。
それぞれ右腕に号数がペイントされている。
13号機:「エミリー様並ビにシンディ様ノオ帰リ〜!」
48号機:「オ前ラ、頭ガ高イ!シリーズM殿方ハ、コレヨリ仙台ヘオ戻リデアラレルゾー!」
112号機:「ソコノPepper!控エオロウ!」
Pepper:「すみません。何を・言ってるのか・分かりません」
というかPepperは体の構造上、伏せ拝は無理だろう。
西山:「な、何の騒ぎだ!?」(驚愕する工場長)
敷島:「またか、こいつら……。一体、何だってんだ」(軽い頭痛を覚える敷島)
平賀:「エミリー達の“親衛隊”みたいなものですからねぇ……。てか、こりゃ早いとこ、何とかしないと」
エミリー:「お前達・散れ!」
シンディ:「恥ずかしいことしてんじゃないよ!普通に挨拶できないのかい!?」
鋼鉄姉妹達の叱責により、一応、ロボット達を散開させることはできたものの……。
タクシーに乗り込んで出発はした。
敷島:「敷地外まで追って来る気か、あいつら……」(後ろを振り向いて、大きく手を振りながら追い掛けてくるバージョン達を見る)
平賀:「何とか言うか……。昔、アイドルの追っかけをする親衛隊……というよりは、金正恩第一書記の見送りをする朝鮮人民軍の兵士達って感じですね」
敷島:「言えてる」
唯一、普通に挨拶してくれたのが、クワを片手にイモ畑から戻ってきたゴンスケ(量産型?号数不明)であったという。
[同日15:25.天候:晴 山交ビルバスターミナル シンディ、敷島、平賀、エミリー]
タクシーが市街地に入る。
向かう先はJR山形駅ではなく、その東側にある山交ビル。
敷島:「ありゃりゃ?バス、行っちゃったか……」
山交ビルは1階がバスターミナルになっており、タクシーがその付近に差し掛かると、ちょうど仙台行きの高速バスが出てくる所が見えた。
シンディ:「どうする?アタシが狙撃して止める?」
敷島:「別に終バスじゃないんだし、いいよ、次のバスで」(苦笑)
平賀:「(最終バスだったら、狙撃命令出してたのか、敷島さんは……)」(冷や汗)
エミリー:(私の・ショットガンと・マシンガン、狙撃に・向いて・いない)
タクシーがビルの前に到着し、そこで降りる。
帰りは電車にしなかったのは接続が悪かったのと、バスの方が本数が多いし、安いからである。
何より、高速バスは全員着席が基本。
これなら鋼鉄姉妹達も気を使って立つことはなく、着席できるというわけだ。
エミリー:「次の・バスは・15時40分発、宮城交通便です」(エミリー、自前の検索機能で時刻表検索を行った)
敷島:「おっ、結構本数あるな」
平賀:「それだけ賑わう路線なんですね。運賃はいくらだろう?」
シンディ:「社長、アタシが乗車券買ってきます」
敷島:「ああ、そうだな」
エミリー:「運賃は片道930円、合計3720円です」
シンディ:「じゃあ、アタシが乗車券買ってくるよ」
敷島、財布の中から5000円札を出す。
敷島:「ほい、じゃあ買って来てくれや」
シンディ:「了解」
平賀:「敷島さん、後でお金払いますから……」
敷島:「いや、いいですよ。先ほど、タクシー代出してくれましたし……」
バスの発着場、3番乗り場でバスを待つ。
まだ誰も並んでいない。
前便が出発したばかりだからだろうか。
平賀:「敷島さん、自分、タバコ行って来ます」
敷島:「ああ、どうぞ。ギリギリまで。席は取っておきますから」
平賀:「どうも」
シンディ:「はい、キップ」(何故か自分の胸の間に挟んで持って来る)
敷島:「七海じゃないんだから、お前……」(呆)
日本初のメイドロイド、七海を完成させた平賀は、稼働テストと海水耐性テストを兼ねて、海水浴場に連れて行った。
浜辺でジュースを買いに行かせた平賀、七海は無事に平賀の命令をクリアした。
……のだが、何故かジュースを豊かな胸の間に挟んで持って来たという。
理由は平賀の個人PCの中に入っていた画像データの中に、そういうポーズを取って撮影されたグラビアアイドルのものがあり、それをマネしたのだという。
そんなことしている間に発車5分前には、バスがやってきた。
宮城交通バスの三菱ふそうの新型エアロエース(ハイウェイライナー)である。
〔「お待たせ致しました。15時40分発、仙台行きです」〕
ブシューという大きなエアーの音と共に、運転席横のドアが開く。
運賃は後払い形式なので、乗車券を持っていても、先に運賃箱に入れることはない。
乗降口入ってすぐの所にある整理券は取る必要がある。
鋼鉄姉妹達が乗り込むと、まるでバスがニーリング機能を使ったかのように一瞬沈み込む。
エミリーの自重は150キロ、シンディでも180キロはあるからだ。
これでも前期型のボディにおいては共に200キロあったことから、一応の軽量化はされている。
敷島:「じゃあ、シンディは俺の隣に座ってくれ」
シンディ:「了解」
敷島:「平賀先生はそっちの席にしてもらおう。これならお前ら、通路を挟んでだけれども、隣り合わせになれるぞ」
エミリー:「ありがとう・ございます」
タバコから戻ってきた平賀が、このバスターミナルから乗った最後の乗客となった。
バスはまだガラガラの状態の中、定刻通りにバスターミナルを発車した。