[3月11日08:00.天候:晴 JR東北新幹線“やまびこ”41号・10号車内→JR仙台駅 シンディ、敷島孝夫、鏡音リン・レン、MEIKO]
朝日を浴びて始発列車が杜の都の市街地をゆっくりと進む。
〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく、仙台です。仙石線、仙山線、常磐線、東北本線、仙石東北ライン、仙台空港アクセス鉄道線、仙台市地下鉄南北線、東西線はお乗り換えです。……仙台の次は、古川に止まります〕
シンディ:「社長、もうすぐ仙台駅ですよ」
隣に座るシンディが居眠りしている敷島を揺り起す。
敷島:「んおっ?もう仙台か。早いな」
リン:「社長もよく寝るようになったねー!」
敷島:「ははっ(笑)、もうトシかなー」
シンディ:「社長、まだ40にもなってないでしょう?」
敷島:「お前が俺の目の前でウィリーを【ホワホワ】した時、ちょうど作者の今の年齢と同じだった」
シンディ:「それじゃ、分からないわよ」
〔「仙台でお降りのお客様、ご乗車ありがとうございました。まもなく仙台、仙台です。11番線到着、お出口は右側です。……」〕
敷島:「降りたら、勾当台公園に移動するぞ。今年はそこで追悼行事が行われる。リンとレンは売れる前(震災前)から、仙台で活動していたからな」
リン:「はーい」
レン:「分かりました」
震災のあった時間帯、リンとレンは泉区の南里研究所にて整備中であったが、とてもエンターテイメントとしてのボカロにまでは電力を回すことができず、1ヶ月の稼働停止を余儀無くされた。
そもそも市民生活レベルで電力が足りなかったのだから、しょうがない。
いち早く南里研究所周辺の、崖崩れなどによる孤立世帯の救助に当たっていたエミリーでさえ、研究所の自家発電設備を使用してもカツカツの状態だったのである。
列車は下り副線ホームに入線した。
〔「ご乗車ありがとうございました。仙台、仙台です。お忘れ物の無いよう、ご注意ください。11番線の電車は8時2分発、“やまびこ”41号、盛岡行きです。終点まで各駅に止まります」〕
ここで多くの乗客達が列車を降りる。
敷島達もその列に続く。
乗降ドアの横には、その後で乗車しようとする乗客達が長い列を作っていた。
敷島:「リンとレンは午前中から配置につくから、先に勾当台公園に向かう。MEIKOも自分の仕事が始まるまで、リン達の手伝いをしてくれ」
MEIKO:「分かりました。私の追悼ライブ会場も、同じ市内ですしね」
敷島:「悪いが、俺は平賀先生達と昼には合流して山形に向かうことになっている。昼前までしか立ち会えないんだが……」
レン:「大丈夫ですよ。この町は僕達も慣れてますから」
MEIKO:「それに、途中までは私もいるしね。会場も、昔、ルカがよく出入りしてたライブハウスでしょう?」
敷島:「そうなんだ。山形での視察が終わったら、なるべく早く仙台に戻るから、それまで頑張ってくれ」
リン:「まっかせてー!」
リンは右腕に拳を作って大きく上げた。
腕に赤字でペイントされている『02』の数字が目立つ。
ボーカロイド2号機という意味だ。
敷島:「頼もしい言葉だ。よろしく頼むぞ」
[同日11:00.天候:晴 JR仙台駅 3号機のシンディ、敷島孝夫、平賀太一、1号機のエミリー]
多くの人で行き交うJR仙台駅。
そこで待ち合わせをするは平賀太一とシンディの姉機、エミリーだった。
マルチタイプの腕にペイントされている号数は、ボカロの英数字に対し、ローマ数字である。
敷島:「平賀先生、お久しぶりです」
平賀:「どうも。敷島さんも、お仕事の方は順調のようで」
シンディは姉のエミリーとハイタッチした。
エミリーはクールで寡黙な性格に設定されているのだが、微笑を浮かべて素直にハイテンションの妹機のハイタッチに応じた。
敷島:「エミリーの活躍、俺も聞いてるぞ」
エミリー:「役に・立たない・バージョンの・フォローを・しただけ・です。大した・ことは・していません」
シンディ:「いやいや。社長が褒めてたよー。ね?」
敷島:「どちらかというと、俺はエミリーとの付き合いの方が長いからな。その辺もあるのかな」
平賀:「運命とは皮肉なものですね。南里先生の遺言次第では、敷島さんがエミリーを引き取っていたんですよ」
シンディ:「で、アタシはお払い箱?」
平賀:「……エミリーの代わりに、大学の警備でもしてもらうよ」
エミリー:「シンディの・警備は・厳重です。侵入者が・蜂の巣に・なるでしょう」
シンディ:「姉さんこそ、侵入者の頭と胴体を引きちぎりそうね」
敷島:「さらっと物騒なこと言うなよ、お前ら」
平賀:「人間に対してはやるなよ?本当に実行したら爆破処分だぞ?」
エミリー:「承知して・おります」
シンディ:「分かってますよー。過剰防衛はしませんって」
[同日11:18.天候:晴 JR仙台駅・仙山線ホーム 上記メンバー]
〔本日も、JR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。8番線に停車中の列車は、11時18分発、快速、山形行きです。発車まで、しばらくお待ちください〕
エミリー:「コーヒーを・買って・きました」
敷島:「おう、悪いな」
平賀:「てか、ギリギリだ……」
〔「ご案内致します。この電車は11時18分発、仙山線快速、山形行きです。発車時刻となっておりますが、信号が変わり次第の発車となります。発車まで、もう少々お待ちください」〕
仙山線は全線単線の為、対向列車が遅れると、こちらも遅れるというジレンマがある。
4両編成の電車はなかなかの乗客数で、敷島と平賀はボックスシートに座っているのだが、シンディとエミリーは立っているという状態だ。
敷島:「多分、愛子を出る頃には空いて来るだろうから、その時は座っていいよ」
シンディ:「はい」
ようやく対向列車がやってきて、ホームにオリジナルの発車メロディが流れる。
〔8番線から、仙山線、快速、山形行きが発車致します。ドアが閉まります。ご注意ください〕
電車は3分遅れで仙台駅を発車した。
〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は仙山線、快速、山形行きです。停車駅は愛子までの各駅と、作並、山寺、羽前千歳、北山形です。次は、東照宮です。……〕
平賀:「すいませんね。本当は自分が車を出して、それで直接デイライトさんの工場へ行ければ良かったんですが、ナツの車が故障したもんで、いま彼女が使ってるんですよ。チビ達の保育園の送り迎えに必要だって聞かないんです」
敷島:「『保育園落ちた日本タヒね』のブロガーとその賛同者達からすれば、先生の悩みは物凄い贅沢だと思います」
平賀:「そうですか?」
敷島:「ええ」
平賀:「敷島さんの所は?まだよちよち歩きでしょうが、もうそろそろ保育園とかを考える時期でしょう?」
敷島:「いや、まだよちよち歩きでもないんで大丈夫です。……んー、いざとなったら、二海に面倒見続けてもらうしかないですね。平賀先生の所は七海がいるのに、保育園入れたんですね?」
平賀:「家の外に出して、早くから外部とのコミュニケーション能力を付けさせるのが目的です。あいにくとロイドでは、その人間の望む通りの答えしか返しませんので」
敷島:「そ、そうか。じゃあ、シンディに面倒見させよう」
シンディ:「あたし?いいけど、あたしで役に立てるかなぁ……?」
エミリー:「遠巻きに・御子息の・望む答えを・返せないと・思われている・という・ことだ」
エミリーはさらっと妹機の欠点を突っついた。
朝日を浴びて始発列車が杜の都の市街地をゆっくりと進む。
〔♪♪(車内チャイム)♪♪。まもなく、仙台です。仙石線、仙山線、常磐線、東北本線、仙石東北ライン、仙台空港アクセス鉄道線、仙台市地下鉄南北線、東西線はお乗り換えです。……仙台の次は、古川に止まります〕
シンディ:「社長、もうすぐ仙台駅ですよ」
隣に座るシンディが居眠りしている敷島を揺り起す。
敷島:「んおっ?もう仙台か。早いな」
リン:「社長もよく寝るようになったねー!」
敷島:「ははっ(笑)、もうトシかなー」
シンディ:「社長、まだ40にもなってないでしょう?」
敷島:「お前が俺の目の前でウィリーを【ホワホワ】した時、ちょうど作者の今の年齢と同じだった」
シンディ:「それじゃ、分からないわよ」
〔「仙台でお降りのお客様、ご乗車ありがとうございました。まもなく仙台、仙台です。11番線到着、お出口は右側です。……」〕
敷島:「降りたら、勾当台公園に移動するぞ。今年はそこで追悼行事が行われる。リンとレンは売れる前(震災前)から、仙台で活動していたからな」
リン:「はーい」
レン:「分かりました」
震災のあった時間帯、リンとレンは泉区の南里研究所にて整備中であったが、とてもエンターテイメントとしてのボカロにまでは電力を回すことができず、1ヶ月の稼働停止を余儀無くされた。
そもそも市民生活レベルで電力が足りなかったのだから、しょうがない。
いち早く南里研究所周辺の、崖崩れなどによる孤立世帯の救助に当たっていたエミリーでさえ、研究所の自家発電設備を使用してもカツカツの状態だったのである。
列車は下り副線ホームに入線した。
〔「ご乗車ありがとうございました。仙台、仙台です。お忘れ物の無いよう、ご注意ください。11番線の電車は8時2分発、“やまびこ”41号、盛岡行きです。終点まで各駅に止まります」〕
ここで多くの乗客達が列車を降りる。
敷島達もその列に続く。
乗降ドアの横には、その後で乗車しようとする乗客達が長い列を作っていた。
敷島:「リンとレンは午前中から配置につくから、先に勾当台公園に向かう。MEIKOも自分の仕事が始まるまで、リン達の手伝いをしてくれ」
MEIKO:「分かりました。私の追悼ライブ会場も、同じ市内ですしね」
敷島:「悪いが、俺は平賀先生達と昼には合流して山形に向かうことになっている。昼前までしか立ち会えないんだが……」
レン:「大丈夫ですよ。この町は僕達も慣れてますから」
MEIKO:「それに、途中までは私もいるしね。会場も、昔、ルカがよく出入りしてたライブハウスでしょう?」
敷島:「そうなんだ。山形での視察が終わったら、なるべく早く仙台に戻るから、それまで頑張ってくれ」
リン:「まっかせてー!」
リンは右腕に拳を作って大きく上げた。
腕に赤字でペイントされている『02』の数字が目立つ。
ボーカロイド2号機という意味だ。
敷島:「頼もしい言葉だ。よろしく頼むぞ」
[同日11:00.天候:晴 JR仙台駅 3号機のシンディ、敷島孝夫、平賀太一、1号機のエミリー]
多くの人で行き交うJR仙台駅。
そこで待ち合わせをするは平賀太一とシンディの姉機、エミリーだった。
マルチタイプの腕にペイントされている号数は、ボカロの英数字に対し、ローマ数字である。
敷島:「平賀先生、お久しぶりです」
平賀:「どうも。敷島さんも、お仕事の方は順調のようで」
シンディは姉のエミリーとハイタッチした。
エミリーはクールで寡黙な性格に設定されているのだが、微笑を浮かべて素直にハイテンションの妹機のハイタッチに応じた。
敷島:「エミリーの活躍、俺も聞いてるぞ」
エミリー:「役に・立たない・バージョンの・フォローを・しただけ・です。大した・ことは・していません」
シンディ:「いやいや。社長が褒めてたよー。ね?」
敷島:「どちらかというと、俺はエミリーとの付き合いの方が長いからな。その辺もあるのかな」
平賀:「運命とは皮肉なものですね。南里先生の遺言次第では、敷島さんがエミリーを引き取っていたんですよ」
シンディ:「で、アタシはお払い箱?」
平賀:「……エミリーの代わりに、大学の警備でもしてもらうよ」
エミリー:「シンディの・警備は・厳重です。侵入者が・蜂の巣に・なるでしょう」
シンディ:「姉さんこそ、侵入者の頭と胴体を引きちぎりそうね」
敷島:「さらっと物騒なこと言うなよ、お前ら」
平賀:「人間に対してはやるなよ?本当に実行したら爆破処分だぞ?」
エミリー:「承知して・おります」
シンディ:「分かってますよー。過剰防衛はしませんって」
[同日11:18.天候:晴 JR仙台駅・仙山線ホーム 上記メンバー]
〔本日も、JR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。8番線に停車中の列車は、11時18分発、快速、山形行きです。発車まで、しばらくお待ちください〕
エミリー:「コーヒーを・買って・きました」
敷島:「おう、悪いな」
平賀:「てか、ギリギリだ……」
〔「ご案内致します。この電車は11時18分発、仙山線快速、山形行きです。発車時刻となっておりますが、信号が変わり次第の発車となります。発車まで、もう少々お待ちください」〕
仙山線は全線単線の為、対向列車が遅れると、こちらも遅れるというジレンマがある。
4両編成の電車はなかなかの乗客数で、敷島と平賀はボックスシートに座っているのだが、シンディとエミリーは立っているという状態だ。
敷島:「多分、愛子を出る頃には空いて来るだろうから、その時は座っていいよ」
シンディ:「はい」
ようやく対向列車がやってきて、ホームにオリジナルの発車メロディが流れる。
〔8番線から、仙山線、快速、山形行きが発車致します。ドアが閉まります。ご注意ください〕
電車は3分遅れで仙台駅を発車した。
〔本日もJR東日本をご利用くださいまして、ありがとうございます。この電車は仙山線、快速、山形行きです。停車駅は愛子までの各駅と、作並、山寺、羽前千歳、北山形です。次は、東照宮です。……〕
平賀:「すいませんね。本当は自分が車を出して、それで直接デイライトさんの工場へ行ければ良かったんですが、ナツの車が故障したもんで、いま彼女が使ってるんですよ。チビ達の保育園の送り迎えに必要だって聞かないんです」
敷島:「『保育園落ちた日本タヒね』のブロガーとその賛同者達からすれば、先生の悩みは物凄い贅沢だと思います」
平賀:「そうですか?」
敷島:「ええ」
平賀:「敷島さんの所は?まだよちよち歩きでしょうが、もうそろそろ保育園とかを考える時期でしょう?」
敷島:「いや、まだよちよち歩きでもないんで大丈夫です。……んー、いざとなったら、二海に面倒見続けてもらうしかないですね。平賀先生の所は七海がいるのに、保育園入れたんですね?」
平賀:「家の外に出して、早くから外部とのコミュニケーション能力を付けさせるのが目的です。あいにくとロイドでは、その人間の望む通りの答えしか返しませんので」
敷島:「そ、そうか。じゃあ、シンディに面倒見させよう」
シンディ:「あたし?いいけど、あたしで役に立てるかなぁ……?」
エミリー:「遠巻きに・御子息の・望む答えを・返せないと・思われている・という・ことだ」
エミリーはさらっと妹機の欠点を突っついた。