旧九月五日。明日10月23日金曜日は二十四節気の【霜降(そうこう)】です。
つゆが陰気に結ばれて、霜となりて降るゆえ也
『暦便覧』(天明八年/1788年出版)
早この時期に霜が降るというのは、東京や上海の感覚ではまだまだですが、中国の天気予報などを見ていると、もうすでに内陸や北部、南部の山岳地方では最低気温が零下になるのを時々目にします。少しずつ冷えこみを感じる頃ですね。
上海の街中では9月頃にぽつぽつと咲き始めた芙蓉の花が日に日に花の数を増やして、賑やかになってきました。
中国原産の花木なので、繁殖力が旺盛なのでしょうか。公園や道路際、庭木などでたくさん見ることが出来ます。緑が一頃に比べると少し褪せてきているので、ピンクや白の花がとても良く映えます。
10月の始めに咲いていた金木犀(桂花)が、いちど花をしぼませたのですが、千秋あたりからまた花をつけています。一つの木の花が一度しぼんでまた咲く、というのはとても珍しいですね。ちょうど今頃がピークで豊かな芳香を放っています。
そして、秋と言えばこれ。公園の小さな紅葉の葉が色づいてきました。高度を下げた陽光を浴びて、色濃く紅色を輝かせています。都会の中でも秋の深まりを感じることができるのはいいですね。皆さんが暮らす町ではいかがでしょうか。
秋は美味しいものがたくさんあります。上海の秋の味覚と言えばやはり上海蟹です。これから12月いっぱいまで楽しめるそうです。
「旧暦九月は雌、旧暦十月は雄」と言われているそうですが、蟹の醍醐味は雄の味噌と雌の卵ですから、月の動きに大きく影響されるのかもしれません。満月の卵がおいしいのだとすれば、もうそろそろ、十三夜の頃からがいいのでしょうね。日本ではこの九月十三夜を「栗名月」と呼びますが、こちらではさながら「蟹名月」なのでしょうか。聞いたことはありませんが・・・。
街中では栗が盛んに売られています。甘栗屋さんもたくさん出現し、甘い良い香りを放っています。やはり天津の栗は美味しいと評判です。南の山間部、雲南省からは今年採れた胡桃がやってきてよく見かけます。新ものだからでしょうか、殻が割りやすく、味も甘みがあって美味しいです。珍しいものでは「菱角(lingjiao)」という水生植物の実。茹でて殻を剥いて食べるのですが、甘みのない栗のようで、そのまま食べるのには魅力的ではありません。写真右下は西塘の食堂で食べた「菱角毛豆」という枝豆との炒めものです。これは独特の食感と風味があって、あとを引く美味しさでした。木の実など、日本ではそのまま食べる習慣が薄くなってきましたが、季節を感じながら味わうと有り難さを感じるものですね。