"暮らしのリズム"的できごと

先人が培った暮らしの知恵を通じて今を楽しむ【暮らしのリズム】のブログ。旧暦、落語、音楽、工芸品、食、民俗芸能などをご紹介

日本の道具~鰹節箱

2005年09月02日 12時22分07秒 | 食と呑

旧七月二十九日。月がとても薄くなってきました。今度の日曜日は朔、新月で旧暦では八月がスタートします。処暑(8/23)~二百十日(9/1)~八朔(9/4)~二百二十日(9/11)は台風などによる自然災害が多い時期とされています。日本に限ったことではないのでしょうか、米国本土を襲ったハリケーンは過去に例のない膨大な被害をもたらしています。日本列島の遙か南海上には大きな台風14号がゆっくり北上を始めています。来週前半にやってきそうです。水不足の四国には恵みの雨となるかもしれませんが、災害にならないかと心配です。

さて、日中の残暑が厳しく、夏の疲れも出てくるこの頃。どうも食欲がわきません。こってしたものより、あっさりした和食を求めてしまいます。この春、我が家に鰹節箱がやってきました。これが大活躍しています。友人から頂いたのですが、なんでも日本に住む彼女の友人(米国人)が帰国する際に「いらない」といって置いていった物なんだそうです。よほどの日本食通ならいざしらず、米国の食生活の中で鰹節箱が活躍するとはあまり想像できません。鰹節のことを「木」だと信じて疑わない外国人が多いという話を聞いたこともあります。
今や食事の度に鰹節箱を用意して「シャッシャッ」と掻く(どうも“削る”より“掻く”という表現の方がピンとくるのです)のが習慣になってきました。冷や奴、お浸し、納豆、猫まんまにと万能です。

(↓我が家の鰹節箱。左がまもなく終了の節。右が今朝買ってきた本節)9-2katsuobushi
そういえばいつの頃からでしょうか?小分けにパックされた削り節が食卓の主流になったのは。創業305年の歴史を誇るパイオニア、にんべんのホームページ(鰹のことならなんでもわかる濃いHPです)にその答えがありました。業界に先駆けて発売したのが昭和44年(1969)で大ヒットしたのが47年(1972)とのことです。なるほど、確かにこの頃ですね、鰹節箱が静かに役目を終えたのは。他にも、お味噌汁の出汁が煮干しからダシの素になったり、めんつゆ、カップスープ、カップラーメンといったものが登場したのって、この頃かもしれません。みんな忙しくなって急ぎ始めた時代なんですね。
今でこそ削り節といえば、パックのように薄くピンク色のものですが、鰹節箱で掻くと、粉になったり黒い血合いが混ざったり、いろいろと表情豊かでした。節が小慣れてくると「シュ~ッ」という音という感触と共に、薄くて美しい削り節ができるものです。小さな幸せとでも言いましょうか「おっ!いいぞっ!」という感覚。軽く浮き浮きするのです。もちろん風味、香りは抜群。時間にしたら30秒か1分程度のこと。ぜひキッチンに鰹節箱をリバイバルさせてもらいたいです。
ところで、鰹節箱の使い方。私のは両親がやっていた手法をそのまま受け継いでいるのですが、自己流でどうも怪しいのです。節の頭を手前に、引いて掻いています。このblogを呼んで頂いている皆様はいかがでしょうか?押している派?、引いている派?ぜひ教えて下さい。
さて、我が家の鰹節も10cm程になってしまいました。
そこでひとっ走り築地に買いに行ってまいりました。9-2matsumuraいつも買いに行くのは築地市場の波除神社前にある鰹節専門店の「松村」というお店。周辺がいつも良い香りに包まれていて、いつも吸い寄せられてしまいます。ちょっとキズがあるため安くなっている本節の背中を買いました。これがだいたい800円で2か月は持ちます。うん。実にリーズナブルですね。鰹節箱も売っています。
(築地市場の鰹節専門店「松村」年季の入った木箱が並んでいます↑)

お薦めの本です。左のメニュー「良いリズムで暮らすための本です」をご覧下さい。
懐かしい台所の道具を紹介した大好きな本です。電気や水道に頼らない先人たちの生活の知恵がぎっしり詰まっています。もちろん鰹節箱も登場します。
『昭和 台所なつかし図鑑』小泉和子著 平凡社1998年