昨日(11日)付朝日新聞声欄(投書欄)に、鉄道駅に転落防止のホーム柵を設置しろという意見が載っていました。こうした投書はたまに見られます。ホーム柵は新交通システムや一部の地下鉄などに設置されていても、なかなか普及していません。理由は簡単で、現状では問題点が多すぎるからです。
まず設置や維持には莫大な費用がかかります。そのため設置路線は例外なく車掌を廃止したり駅員さえ滅多に見かけないほどの“省力化”が行なわれています。このところ事故時の復旧に時間がかかりすぎるという鉄道への批判があります。しかし鉄道だって慈善事業ではありません。篤志家が費用を全額寄附するほどでなければ、人的サービスか機械化かのいずれかを選択せねばなりません。
次に車輌によってドアの数や位置が異なるため、ホーム柵を設置すると直通運転や臨時列車の運行が極めて限られてしまいます。そのため東急目蒲線は運転系統が目黒線と多摩川線へと完全に分断されてしまいました。意外に見過ごされがちですが、エレベーターなどだけでなく、直通運転もバリアフリーの一環なのではないでしょうか。目黒線の場合は都心への直通で帳消しということでしょうが、多摩川駅の地下と高架という乗り換えの手間を考えてか、東急ではホーム柵をバリアフリー設備として紹介していないのが象徴的で、東京地下鉄のケースとは対照的です。
実際に運用してみて明らかになる問題点もあります。一例として拙者がよく利用する東急目黒線をケースに考察してみます。
同線は田園調布~武蔵小杉間で東横線と並走しています。田園調布では同時に出発したのに、2駅先の新丸子では東横線がドアを閉めて出発した後に目黒線が到着というケースがほとんどです。時刻表を見ればどちらも同時刻なのですが、なぜそんなことが起こるのでしょう。
つまりホーム柵が設置されるとかなり厳密な停止位置を求められるため、停車までにより多くの時間を要します。そのためのシステムも装備されてはいても、微妙な天候に左右されやすい地上の路線では防ぎようがない問題です。現に目黒線では停止位置修正が、以前より減ったとはいえ頻繁に見られます。それらを回避して定刻どおりの運行を目指すなら、所要時間の増加だけでなく、運転本数の減少ということにもつながります。ラッシュ時の混雑増大を我慢してでもホーム柵を推進させるのか、これも選択が求められます。
相鉄横浜駅のような簡易的なものも考えられますが、同じ相鉄でも他の駅には設置されていません。横浜が終着駅で進入速度が遅いために可能になったようなものでしょう。
結論としては将来の人口減少で通勤利用が大幅に減るのを待つしかないのかもしれません。それに柵を設置することで新たな問題が生じるなら、事業者としては躊躇してしまうのは無理からぬことです。さらにホームから転落する人の半数以上が酔っ払いだという。そんな人のために鉄道事業者が多額の資金を投じる必要があるのかという疑問もあります。(その酔っ払いから費用を請求して蓄えておくというのも方策でしょうか)
ホーム柵の問題で常に思うのは、最初の投書主もマスメディアも、鉄道事業者に要求するばかりで、問題点をどうすればクリアできるかという具体的かつ現実的な提言を全く行なわないことです。まるっきり「おもちゃ買って~、○○ちゃんも持ってる~!」と騒ぐ子供と何ら変わりません。加えてこうした技術的な問題点を指摘できる専門家がほとんどいないことも鉄道にとっての不幸です。拙者も素人なので大きなことは言えませんが。
それでも鉄道マニヤのはしくれとして今後も様々な問題について考えてみたいと思います。
まず設置や維持には莫大な費用がかかります。そのため設置路線は例外なく車掌を廃止したり駅員さえ滅多に見かけないほどの“省力化”が行なわれています。このところ事故時の復旧に時間がかかりすぎるという鉄道への批判があります。しかし鉄道だって慈善事業ではありません。篤志家が費用を全額寄附するほどでなければ、人的サービスか機械化かのいずれかを選択せねばなりません。
次に車輌によってドアの数や位置が異なるため、ホーム柵を設置すると直通運転や臨時列車の運行が極めて限られてしまいます。そのため東急目蒲線は運転系統が目黒線と多摩川線へと完全に分断されてしまいました。意外に見過ごされがちですが、エレベーターなどだけでなく、直通運転もバリアフリーの一環なのではないでしょうか。目黒線の場合は都心への直通で帳消しということでしょうが、多摩川駅の地下と高架という乗り換えの手間を考えてか、東急ではホーム柵をバリアフリー設備として紹介していないのが象徴的で、東京地下鉄のケースとは対照的です。
実際に運用してみて明らかになる問題点もあります。一例として拙者がよく利用する東急目黒線をケースに考察してみます。
同線は田園調布~武蔵小杉間で東横線と並走しています。田園調布では同時に出発したのに、2駅先の新丸子では東横線がドアを閉めて出発した後に目黒線が到着というケースがほとんどです。時刻表を見ればどちらも同時刻なのですが、なぜそんなことが起こるのでしょう。
つまりホーム柵が設置されるとかなり厳密な停止位置を求められるため、停車までにより多くの時間を要します。そのためのシステムも装備されてはいても、微妙な天候に左右されやすい地上の路線では防ぎようがない問題です。現に目黒線では停止位置修正が、以前より減ったとはいえ頻繁に見られます。それらを回避して定刻どおりの運行を目指すなら、所要時間の増加だけでなく、運転本数の減少ということにもつながります。ラッシュ時の混雑増大を我慢してでもホーム柵を推進させるのか、これも選択が求められます。
相鉄横浜駅のような簡易的なものも考えられますが、同じ相鉄でも他の駅には設置されていません。横浜が終着駅で進入速度が遅いために可能になったようなものでしょう。
結論としては将来の人口減少で通勤利用が大幅に減るのを待つしかないのかもしれません。それに柵を設置することで新たな問題が生じるなら、事業者としては躊躇してしまうのは無理からぬことです。さらにホームから転落する人の半数以上が酔っ払いだという。そんな人のために鉄道事業者が多額の資金を投じる必要があるのかという疑問もあります。(その酔っ払いから費用を請求して蓄えておくというのも方策でしょうか)
ホーム柵の問題で常に思うのは、最初の投書主もマスメディアも、鉄道事業者に要求するばかりで、問題点をどうすればクリアできるかという具体的かつ現実的な提言を全く行なわないことです。まるっきり「おもちゃ買って~、○○ちゃんも持ってる~!」と騒ぐ子供と何ら変わりません。加えてこうした技術的な問題点を指摘できる専門家がほとんどいないことも鉄道にとっての不幸です。拙者も素人なので大きなことは言えませんが。
それでも鉄道マニヤのはしくれとして今後も様々な問題について考えてみたいと思います。