紀州新聞 THE KISYU SIMBUN ONLINE

和歌山県の御坊市と日高郡をカバーする地方紙「紀州新聞」のウェブサイトです。主要記事、バックナンバーなどを紹介。

印南中生徒が貴重な防災資料「かめや板壁」解読に取り組む 〈2015年8月28日〉

2015年08月28日 08時30分00秒 | 記事

保管されている「かめや板壁」

解読に取り組む印南中生徒


 平成21年3月11日の東日本大震災以降、全国的に過去の被害を教訓とし、津波避難などに生かそうとの取り組みで災害記念碑などが見直されているが、印南町のいなみっ子交流センターに保管されている安政の大地震(1854年11月4日)の際の津波の様子や高い所への逃げるよう記した「かめや板壁」の原文の解読に印南中生徒が取り組み、現代文への解読を終えた。

 「かめや板壁」は、同町印南の本郷地区あった吉田家の藏の板壁に津波の被害などが記されていたもので、昭和26年に蔵を取り壊す際に、貴重な資料だと郷土史家の小谷緑草、中田宇南両氏が書かれた板を取り外し保存するとともに解読して紙に記した。その後、地元の人達の目に触れることなく、存在を知る人がほとんどいなくなっていた。2年前に内閣府の調査団が同町を訪れた際に同町文化協会長の坂下緋美さんが「かめや板壁」を見せたところ「貴重なものだ」と調査団のメンバーも興味を示したという。随行していた町学習支援員で印南中に勤務する(当時は印南中教諭)阪本尚生さん(60)も板壁を初めて見て「すごくインパクトがあった」と言う。
 同校3年生有志が継続して取り組んでいる津波研究で今年のメンバーが「かめや板壁」の調べ学習を行うことになり、阪本さんの指導で書かれた文字を読み取る作業などに取り組み、県立文書館の協力を得てこのほど解読を完了。板壁には「以下のように書き残しておきます」とし「十一月四日には、城(要害山)に大津波が押し寄せてきて、川口より(印南橋の)橋詰めまですべてが流れ、家は八幡様(宇杉八幡社)の前まで流されました。坂本や本郷の家はすべて流れ、その時私たちは東宮の上へ逃げましたがまことに苦労しました」と当時の状況のほか「さて、津波は百八十年ごとに来るといわれ、また前兆もあります。その時には何もかも出して高いところへ上がりなさい」と高台へ避難するよう呼びかけ、最後に「以上のことはなにぶん大事なことなので、こうして書き残しておきます」と記している。
 阪本さんは「とても貴重なもの。先人が体験を伝えようとして残してくれたもの。自分たちがそれを災害時に生かすとともにしっかり受け止め次の世代に伝える必要がある。災害情報として共有するためにも目に触れることが大事。新庁舎に展示するなどすれば防災意識も高まるのではないか」と貴重な資料の有効活用を呼びかけている。


その他の主なニュース

 紀の国わかやま国体・大会の弁当献立決まる

 日高町の岬旅館に1メートル超の大型クエ初入荷

 11月1日 みなとフェスタ、徳島県阿南市の阿波踊り連「奴連」招待

 県高校弓道選手権で紀央館男女そろって優勝