ベトナムの若者
スマホに保存されている写真
実家
それはブロックで積み上げた
粗末な家
それを笑う優しい同僚たち
わたしも後ろから
のぞき込み
ベトナムの若者の
故郷の写真を
何枚か見せてもらう
家屋が粗末であっても
森林の中にあっても
その人にとっては
どこよりも
大事な故郷には変わりない
揶揄されても
故郷の写真をスマホに撮って
日本に出稼ぎに来ている
他国で
言葉もちゃんとは通じなく
笑顔が唯一の
交感手段
その若者は
幸せだろうか
幸せだ
揶揄されても
その人はニコニコしている
親しみの揶揄であり
親愛の同僚たちの笑
そこに背後から
わたしも混ざり
笑の輪に入る
日本では考えつかないような
粗末な実家
それが判っただけでも
素晴らしい
わたしたちは
ベトナムの何を知っているというのか
何も知らぬ
せめて
枯葉作戦
それさえも
知らぬ時代に
貧しい家屋の写真の数々
わたしの心がわかったのだろうか
ベトナムの若者から
クリームパンを一個
もらった
ありがとう
うれしいよ
夕
雨
スーパー
八百屋
倉がある
野に
鹿が尾っぽを垂らして
食べ物をさがす
Japanは
花が咲いていますよ
ベトナムのおかあさん
おとうさん
兄弟姉妹のみんな
彼は笑っていたよ
元気ですよ
おかあさん
おとうさん
おばあちゃん
おじいちゃん
親類のおじさんおばさんたち
彼は
笑っていますよ
大丈夫ですよ
