聖徳太子研究の最前線

聖徳太子・法隆寺などに関する学界の最新の説や関連情報、私見を紹介します

原寸大の壁画複製による法隆寺金堂内部の臨場感:女子美アートミュージアム展覧会

2011年04月26日 | 聖徳太子・法隆寺研究の関連情報
 女子美術大学が昨年の創立110周年に当たって入手したコレクションの一部である法隆寺金堂壁画のモノトーン原寸大コロタイプ複製が、学内の美術館で展示されています。複製といっても、昭和10年に、京都の便利堂が75日かけて最新の方法で撮影し、最高の技術を駆使して原寸大のコロタイプ版を作成したのですから、それ自体、技術史に残る力作です。

 会場では、そのコロタイプ複製12幅を一堂に並べることにより、金堂の中にいるかのような臨場感を味わうことができるとのことです。また、そのコロタイプなどに基づいて描かれ、他の美術館に所蔵されている安田靫彦・吉岡堅二・橋本明治による着色模写図も、あわせて展示されている由。

法隆寺金堂をうつす コロタイプと画家による模写制作展
女子美術大学相模原キャンパス、女子美アートミュージアム
4月22日(金)~5月15日(日) *火曜休館
[※5月3日(火)・4日(水)・5日(木)は開館]

 企画監修に携わられた女子美の稲木吉一先生から、この展覧会の「図録」を送って頂きました。「法隆寺金堂壁画をめぐる営み」と題して、6頁にわたる稲木先生の解説が掲載されています。写真撮影とコロタイプ複製の作成、日本画家たちによる模写が続けられていたさなかの昭和24年1月に火災で損なわれた金堂の壁画とその模写画、そしてその後でコロタイプを活用して新たになされた模写の制作経緯について、今回の大震災の後になって書かれたものだけに、「大切なものを遺したい」という多くの人々の営みの重さに思いを寄せた文章になっています。

 なお、稲木先生には、「天寿国繍帳」の「天寿国」は兜率天だとする論文、

稲木「聖徳太子と弥勒信仰: 聖徳太子ゆかりの弥勒像と天寿国繍帳を中心に」
(『東洋美術史論叢:吉村怜博士古稀記念』雄山閣出版、1999年)

があります。

 展覧期間中には以下の催しがある由。いずれも参加無料・申込不要です。

(1)女子美 コロタイプ・フォーラム
 日時:5月7日(土)13:00~16:20 
 会場:相模原キャンパス10号館1階1011教室
 ・講演「法隆寺金堂壁画の魅力」:女子美術大学名誉教授 永井信一(美術史家)
 ・講演「壁画模写制作の回想」: 女子美術大学名誉教授 松本俊喬(日本画家)
 ・ワークショップ「コロタイプ印刷を体験しよう」:便利堂コロタイプ工房 山本修
 
(2)ギャラリートーク:稲木吉一(女子美術大学教授)
 日時:4月30日(土)・5月14日(土)13:30~14:00
 会場:女子美アートミュージアム

この記事についてブログを書く
« 有力な皇子は国政参与したの... | トップ | 建立は金堂が先だが設計概念... »

聖徳太子・法隆寺研究の関連情報」カテゴリの最新記事