千の天使がバスケットボールする

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『ワン・ディ 23年のラブストーリー』

2012-06-28 22:43:13 | Movie
賢い女は、意外とダメ男に弱いのか。

1988年7月15日のスコットランド。めでたく留年せずに大学を卒業した日だ。夜通しパーティやら楽しみまくり、まもなく夜が明けようとする街を走っていく若者達。不図、気がつけば、残っているのは、同級生とはいえ、それまで交流のなかったエマ(アン・ハサウェイ)とデクスター(ジム・スタージェス)のふたりだけ。成り行きで、エマの下宿先のベットにころがりこむデクスターは、一応の礼儀としてエマに”お誘い”の声をかけたのだが、気が変わる。心中の落胆をかくすエマに、デクスターは、1年に1日、聖スィジンの祝日の7月15日に会うことを約束して別れる。

7月15日のエマとデクスター。歳月は、ふたりに不都合ではない友情という絆を結びながら、いつしか20年のワン・デイが流れていくのだったが・・・。

本作は、同名のベストセラーとなった原作を作者自らが映画の脚本も書いているのだが、エマとデクスターの対照的なキャラクターが物語でいきている。
エマは、労働者階級から名門大学に進学したように、地味で努力家の女性。チープなメキシコ料理店で働きながら、作家になる夢を忘れずに詩をかいている。そんな真面目なエマを励ますデクスターは、裕福な家庭出身にふさわしい顔立ちもよく、当然、女にはもてまくる。しかし、彼にとっては、所詮、シゴトも含めて世界はこどもの遊び場のようなもの。定職にも就かずバラエティ番組の司会者という知名度をいかして次々と女を抱き、遊びまくり、世の春を謳歌しながらも、あっというまに大衆にあきられていく。

デクスターは、母親に溺愛された金持ちのおぼっちゃま君にありがちな、、、チャラ男!
きれいな女に声をかけられれば、ためらいなく”交流”するのがチャラ男のルール。その一方で、賢い頭脳をもちながらいかすことをせずに流されていき、仕事が下降線をたどるとエマに愚痴り、すぐに泣きつく・・・男のくせにというのは性的差別だが。おまけに、わがままで寂しがりやで自己中心的。エマの気持ちに最初から気がついているくせに、余裕たっぷりに彼女の都合のよい部分しか見ようとしない、だめんず。

そんなだめだめのチャラ男でも、情にほだされてしまうのが、地味な眼鏡女子のエマ。彼女のような賢い女には、チャラ男のデクスターはやっぱりあいかわらず魅力的なのだ。映画『ジェーン・エア』でロチェスター卿が失明したときに、上野千鶴子さんが「男が失明するって、女にとって、最後の解決、この人はもはや私なしには生きていけない。最終的な女の勝利ですよ」と、実に大胆な発言をされていたが、自分を親友として頼り、弱みをみせてぼろぼろになっていくデクスターを前に、ジェーンのように「この人はもはや私なしには生きていけない」という思いがエマの心にうかんだのではないだろうか。映画『プラダを着た悪魔』での役柄と同様、やぼったい女子役も似合って、きっちりメイクしてドレスアップをすると驚くほど美しくなるアン・ハサウエイが好演している。

大学生の頃からずっと好き、今でも愛している。

エマの感情のゆれに共感した私は、デクスターのキャラクターを含めて、誰がなんと言おうとこんな映画も好きだ。

監督:ロネ・シェルフィグ
原作:One Day