千の天使がバスケットボールする

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ファツィオーリという世界最高のピアノ「パリ左岸のピアノ工房」番外編

2009-10-21 22:31:16 | Classic
T.E.カーハート氏のよる2001年出版「パリ左岸のピアノ工房」には、現代の世界のピアノ・メーカーのベストスリーの入るイタリアのピアノが登場する。
ヴェニスの北東、サチーレにある工場で製造されるその完璧に素晴らしいピアノの名前は、「ファツィオーリ」。創業者のパオロ・ファツィオーリは、代々オフィス家具を製造してきた一族の六男。パオロはペーザロで音楽学校のピアノ科を卒業し、何度かコンサートを開くもピアニストになることを断念して、ローマ大学で機械工学の学位を取得して家業の家具製造の仕事をはじめる。70年代後半から、好きな音楽と仕事を結びつけることをライフサークにして、これまでのピアノに不満をもっていたことからもっと優れた最高のピアノ創りをめざすようになる。彼は音響学、和声学、木工技術などピアノに関係のある専門家を説得して協力をあおいでチームを結成し、80年に最初の試作品を製造する。

全長1.83メートルの最初のグランド・ピアノには小さな問題こそあったが、ピアノが奏でる最初の音を聴いた時、彼は成功を確信した。
現在このメーカーでは、6種類のモデルのピアノがあるが、一台ごとに手作りのため年間の生産台数は60台に満たない。世界にでまわっているのは、1000台。作業所では工具などはすべて整理整頓されていてなにひとつ散らかっていない。最も貴重な会社の財産は、温度がコントロールされた部屋に収められている。ピアノのサウンドボードに使用されるヴァル・ディ・フィエンメ産の貴重なレッド・スプルース材である。パオロは鮮やかで透明感のある、安定した音、大音量でもゆがみのない音をピアノづくりにめざしたそうだ。ピアニストも工場に見学にくることも少しずつ増えてきた。彼は、熟練のピアニストが自分の楽器をどのように演奏するのかを間近で見るのが大好きである。そして、今では彼らが椅子に座って鍵盤を眺めるだけでどんなアプローチの仕方をするかさえも気がつき、まだ音をひとつもださないうちに多くのことがわかるようになった。

ファツィオーリは世界で最も高価なピアノで、ふつうの黒いコンサート・グランドでも10万ドルをはるかにこえる。高い!と思うが、ヴァイオリンに比べたらそうでもないか。都内で唯一(一般ホールでは4館目)、このファツィオーリの音を聴けるのは仙川アヴェニュー・ホールである。「ぶらあぼ」11月号に写真が掲載されているが、ペダルが4本整備されていて、シンプルなモダンさで洗練された非常に美しいピアノである。吸い込まれるのように鍵盤に手がいきそうな、まさしく芸術品である。2010年ショパン国際ピアノ・コンクールの公式ピアノにも起用が決定しているが、これは是非、聴き比べてみたいものである。

■本編
T.E.カーハート著「パリ左岸のピアノ工房」