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9条安全保障論(連載第15回)

2016-09-01 | 〆9条安全保障論

Ⅳ 過渡的安保体制

九 自衛行動の許容範囲③

 前回は、過渡的安保体制という観点から、9条の枠内で可能な共同自衛行動のあり方について考察してきたが、それとは別に、本来の意味での集団的自衛行動がある。本来の意味での集団的自衛行動とは、多国間での協調的な自衛権の共同行使の謂いであって、現代世界では国際連合憲章(国連憲章)に基づいて実施されるのが本則である。
 同憲章第七章では、「平和に対する脅威、平和の破壊及び侵略行為に関する行動」と題して、そうした有事に際しての非軍事的措置と軍事的措置とが規定され、後者の一環として集団的自衛権の行使も認められている。

 その目的達成のために国連軍を組織することも予定されている。実際上は国連軍の給源となる兵力提供協定を締結している国が皆無であることから、これまで国連軍が正式に組織されたことはないが、仮に国連軍が組織されたら、自衛隊は「兵力」を提供することができるかという仮想問題がある。
 これについて、政府は「国連軍の目的・任務が武力行使を伴わないものであれば、自衛隊がこれに参加することは憲法上許されないわけではないが、現行自衛隊法上は自衛隊にそのような任務を与えていないので、これに参加することは許されない」という見解を表明している。
 しかし、国連軍の任務が武力行使を一切伴わないということは通常考えられず、武力行使の有無で参加を個別判断するという基準は観念論的である。兵力提供協定を締結するという形で、自衛隊が常備的な国連軍の一部となることは、全面的に9条に反するものとして認められないだろう。

 とはいえ、現実には国連軍の組織化はめどが立たず、実際上、国連による集団的安保体制は国連決議に基づく非公式な有志連合軍による武力行使という形で実施される慣行が形成されてきているのが現状である。
 その点、9条はこのような非公式な集団的自衛行動も認めておらず、日本の自衛隊がこのような行動に参加することは原則として認められないが、日本国への侵略に際して、個別的自衛や共同的自衛では対応し切れない場合に、日本防衛のためにこうした非公式な集団的自衛行動に参加することは、必ずしも禁止されるものではないと解してよいと思われる。

 その一方で、そうした自国防衛という目的を越えて、有志連合軍の海外における武力行使に参加することは、たとえ後方支援活動限定という間接的な形であっても認められるものではない。
 その際、紛争地域における日本船舶・航空機の保護などの名分を掲げることも許されない。公海・公空上の自国船舶・航空機が自国主権の管轄内に入るという原則は法令の適用範囲の問題ではあっても、それを安保問題に直接振り替えるべきではないからである。

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