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世界共同体通覧―未来世界地図―[補訂版]:解題後記

2024-08-01 | 〆世界共同体通覧―未来世界地図―[補訂版]

 本連載は現在の世界の標準モデルである排他的な主権国家に基づかない人類のグローバルな結集機構となる世界共同体に包摂される政治単位について通覧する未来地政学的な試みであるが、これは単独で世界地図を書き換えようというある意味で不遜な試みでもあるので、流動的・可変的なものでなければならない。
 そのため、初版公開後の個人的な再考や、最近の地政学的情勢変化への考慮を踏まえ、補訂版を作製した。個々の領域圏の構成や名称には変更点が少なからずあるものの、全体的な内容に大きな変更はないが、未来の地政学的情勢の流動性を踏まえ、初版では書き記さなかった「別の可能性」についても付言することが最も大きな変更点である。

 世界共同体についてはすでに『共産論』でも詳論しているが(拙稿参照)、ここで簡単に振り返れば、それは地球規模での共産主義革命が達成された後に現われる地球全域を統合する新たな政治システムであり、それを構成するのは、領域圏と呼ばれる政治的単位である。
 領域圏は、現行の主権国家にほぼ匹敵する領域で構成された政治単位であるが、主権は有さず、世界共同体の枠内で一定の内政自主権を留保された存在である。多くの領域圏が現行の主権国家を継承するが、世界共同体はその統合性を高めるため、構成単位となる領域圏の数が限定される。
 そのため、現時点で200か国近くが分立し、分離独立運動の結果次第ではさらなる増殖も見込まれる主権国家とは異なり、領域圏は逆に整理統合されていく傾向を持つ。他方で、巨大すぎる現超大国は複数の領域圏に分割される。ただ、整理統合といっても、単純に合併されるわけではなく、分割される場合も完全な分裂とはならない柔軟性が領域圏の特色である。
 
 
 こうした領域圏にも、いくつかの型がある。

統合領域圏
 これは、現行の非連邦国家に近い型の領域圏である。しかしその内部構制は中央集権的ではなく、高度の地方自治が保障され、領域圏と地方自治体の関係性は対等的である。

都市領域圏
 これは、一つの都市で一個の領域圏を成すもので、分類上は統合領域圏の一種である。一都市のため統合性は高いが、内部の地区に一定の自治権を与えることができる。

島嶼領域圏
 これは、大小複数の島々の集合体で一個の領域圏を成すもので、一体性を維持するため、その多くは統合領域圏であるが、一部の島に準領域圏の地位を与える場合は複合領域圏(後掲)となる。

連合領域圏
 これは、現行の連邦国家に近い型の領域圏であり、連邦国家の州に近い複数の準領域圏の連合体として構成される。準領域圏は、それが属する連合領域圏以外の連合領域圏に招聘準領域圏としてオブザーバー参加することもできる。

複合領域圏
 これは、統合的部分と単数または複数の準領域圏の複合によって成り立つ領域圏である。上掲の統合領域圏と連合領域圏の両要素を併せたような型の領域圏である。

合同領域圏
 これは、複数の領域圏(統合型が連合型かは問わない)が合同して結成する領域圏である。連合領域圏のように憲章(憲法)を共有する強いまとまりではなく、緩やかな合同にとどまるが、共通経済計画を含む共通政策を策定する。世界共同体総会(世界民衆会議)へは合同する各領域圏が会期ごとに輪番で合同代議員を送る。―ただし、一つの合同を形成する領域圏数は最大で12までとし、8以上の領域圏で形成する大合同領域圏の場合は2名の代議員を送ることができる(試案)。

招聘領域圏
 各領域圏は、単体でいずれかの合同領域圏に招聘参加することができる。これはオブザーバー参加にとどまるので、合同領域圏のメンバー領域圏とは異なり、招聘された合同領域圏においては代議員を世界共同体に送ることはできない。

 
 各領域圏は、それらを囲む周辺の大地域ごとに、汎西方アジア‐インド洋域圏汎東方アジア‐オセアニア域圏汎アメリカ‐カリブ域圏汎アフリカ‐南大西洋域圏汎ヨーロッパ‐シベリア域圏の五つの汎域圏に包摂される。
 すべての領域圏がいずれか一つの汎域圏に包摂されるが、複数の汎域圏の境界上に存する領域圏は自身が包摂されていない他の汎域圏に招聘領域圏としてオブザーバー参加することができる。
 
 また、歴史的に特定の主権国家による領有権が凍結されてきた南極大陸や大洋上の辺境的島嶼のいくつか、及び帰属が長く深刻に争われてきた一部の歴史的係争領域や少数民族迫害、内戦等による深刻な人道危機が長期にわたり生じてきた領域は、上掲いずれの汎域圏にも包摂されない世界共同体の直轄圏(永住者のいない領域の場合は直轄行政圏、いる領域の場合は直轄自治圏)として、世界共同体が直接に管轄する。なお、直轄自治圏は通常の領域圏に準じた内政自治権を保障される。
 
 一方、革命が未成立または不成功に終わり、世界共同体に包摂されず、世界共同体の外部で旧主権国家として残存する領域を革命化未成領域と呼ぶ。

 なお、本来、世界共同体の公用語は単一の世界共通語(暫定的にエスペラント語)が指定されるため、各領域圏や汎域圏の公式名称も当該共通語をもって表記されるところ、当連載では現時点でのわかりやすさを考慮し、各領域圏及び汎域圏の名称は、基本的に英語式で表記する。 

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世界共同体通覧―未来世界地図―[補訂版](連載最終回)

2024-07-30 | 〆世界共同体通覧―未来世界地図―[補訂版]

八 独立宗教自治市/域

世界共同体は、特定の宗教の聖地・聖域として特別の歴史的意義を持つ都市または地域を世界共同体の枠外で独立し、宗教組織または宗教的権威者によって自治的に統治される独立宗教自治市/域として保障する。これらは、当該の都市または地域と世界共同体の協約に基づき、個別的に設定される。独立宗教自治市/域は世界共同体憲章の適用を受けないが、それぞれの宗教上の教義と矛盾しない限りで憲章の各条項を尊重することが認証の条件となる。認証された独立宗教自治市/域は、世界共同体総会に各一名のオブザーバを送ることができる。また、近隣の領域圏と共通経済協定を締結して、共通経済計画の適用を受けることもできる。こうした独立宗教自治市/域として、さしあたり次の二つの自治市と二つの自治域が想定されるが、上記条件を満たせばさらに追加される可能性もある。

 

メッカ独立市
サウジアラビア領内のイスラーム教聖地メッカが、民衆会議制度による中央アラビア領域圏とは分離される形で設定される。市の運営は、サウジ王家であるサウド家の首長が世襲総督として行なう。中央アラビア領域圏と共通経済計画協定を締結する。

バチカン独立市
ローマ・カトリック総本山のバチカン市国を継承する独立市。市国時代と同様、バチカン市の運営はローマ教皇庁が行ない、民衆会議制度は導入されない。イタリア‐サンマリノ領域圏と共通経済計画協定を締結する。

マルタ宮独立域
国際連合との関係において、領土なき主権実体としての地位を認証されてきた通称マルタ騎士団が拠点を置くイタリア‐サンマリノ領域圏ローマ市内のマルタ宮殿敷地内に限定された最小の独立域。騎士団による自治が認められる。イタリア‐サンマリノ領域圏と共通経済計画協定を締結する。

アトス山独立域
ギリシャ領内の正教聖地アトス自治修道士共和国を継承する独立域。その運営はアトス域内の主要修道院によって自治的に行なわれ、民衆会議制度は導入されない。ヘラス領域圏と共通経済計画協定を締結する。

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世界共同体通覧―未来世界地図―[補訂版](連載第43回)

2024-07-28 | 〆世界共同体通覧―未来世界地図―[補訂版]

六 世界共同体直轄圏

世界共同体は、前回まで個別に見てきた五つの汎域圏に包摂される領域圏のほかに、いくつかの地域を直轄圏として包摂する。直轄圏は、いずれの汎域圏にも包摂されないという限りで世界共同体の直轄であるが、それにも一般永住民が居住しない直轄行政圏と、一般永住民が居住する直轄自治圏とがある。前者には世界共同体の管理機関が存在するだけである。 後者の直轄自治圏では民衆会議を通じた自治が認められる点で、一般の領域圏と実質的な差はない。ただし、直轄自治圏は世界共同総会が任命する直轄自治圏特別代表が総代として世界共同体で議決権を行使するが、各直轄自治圏は一名のオブザーバーを送ることができる。


(1)直轄行政圏
直轄行政圏は、次の三つである。

南極大陸圏
南極大陸全体を包摂する直轄圏。旧南極条約を継承・発展させた世界共同体南極条約に基づき、南極大陸には人が恒久的に居住する領域圏を設定せず、世界共同体の直轄管理下に置くことが約される。地球環境全般の指標となる南極の環境観測のため、世界共同体南極観測センターが設置される。

サウスジョージア・サウスサンドウィッチ諸島
南大西洋の旧英領サウスジョージア・サウスサンドウィッチ諸島を継承する行政圏。世界共同体の海外領土禁止の原則により、英領から移行する。

北太平洋環礁群
北太平洋上のアメリカ合衆国領ウェーク、ジョンストン、ミッドウェーの各環礁をまとめて世界共同体直轄圏に移行する行政圏。主としてオセアニア全域の海洋環境保全を目的とした環境保全基地がウェーク島に設置される。

 

(2)直轄自治圏
直轄自治圏としては、以下のものがある。

ラカイン
現ミャンマーのラカイン州を分立した自治圏。迫害されてきたイスラーム教徒ロヒンギャの人道的保護を目的とする直轄自治圏である。汎西方アジア‐インド洋域圏の招聘自治圏。

サンピエール島‐ミクロン島
北米における旧フランス海外準県サンピエール島及びミクロン島を継承する自治圏。界共同体の海外領土禁止の原則により、英領から移行する。汎アメリカ‐カリブ域圏の招聘自治圏。

フォークランド諸島
南米の旧英領フォークランド諸島を継承する自治圏。世界共同体の海外領土禁止の原則により、英領から移行する。汎アメリカ‐カリブ域圏の招聘自治圏。

ジブチ
東アフリカの独立国家ジブチを継承する自治圏。小国ながら紅海の要衝に位置することや、世界共同体平和維持巡視隊海上部隊の基地を設置する関係から、直轄自治圏となる。汎アフリカ‐南大西洋域圏の招聘自治圏。

北部ダルフール
スーダンのダルフール地方のうち、民族紛争が激しい北部を分立させる自治圏。迫害されてきた非アラブ系住民の人道的保護を目的とする自治圏。汎アフリカ‐南大西洋域圏の招聘自治圏。

西サハラ
アフリカ北西の西サハラはモロッコ占領地と独立運動組織ポリサリオ戦線支配地に分断された長期の紛争地帯であったが、西サハラ全体を直轄自治圏とすることで合意される。汎アフリカ‐南大西洋域域圏の招聘自治圏。

○スヴァールバル諸島
北極圏の旧ノルウェー領スヴァールバル諸島を継承する自治圏。加盟国の自由な出入を保障していたスヴァ―ルバル条約を発展的に解消し、ノルウェー領から直轄圏に移行する。北極圏の環境観測を目的とする北極圏環境観測センターが設置される。また北極圏の海洋巡視のため、世界共同体平和維持巡視隊海上部隊の基地も設置される。汎ヨーロッパ‐シベリア域圏の招聘自治圏。

※オセアニア諸島
キリバス、ツバル、ナウル等、オセアニア地域で海面上昇による水没の危険の高い島嶼において、居住環境を維持するため、世界共同体の環境保護及び人道的目的から、直轄圏となる可能性がある。ただし、世界共同体の創設時に居住可能状態がなお維持されているが、危機に瀕しているという仮定上の直轄圏である。

 


七 信託代行統治域圏

世界共同体は、直轄自治圏を含めた構成主体の民衆会議の決議に基づき、一定期間代行統治を行なうことができる。これは、当該領域圏の自立的統治が紛争や災害その他の事変によって著しく困難になった場合、例外的に世界共同体が直接に行なう暫定統治の形態である。信託代行統治域圏に認定された領域では世界共同体が設置した暫定代行統治機構が統治を行ない、所定期間の満了後に、民衆会議に統治権を返還する。信託代行統治域圏は恒久的ではなく、そのつど個別的に設定されるため、具体例を予め示すことはできない。

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世界共同体通覧―未来世界地図―[補訂版](連載第42回)

2024-07-20 | 〆世界共同体通覧―未来世界地図―[補訂版]

五 汎ヨーロッパ‐シベリア域圏

(15)ルーシ

(ア)成立経緯
主権国家時代のロシア連邦から、「極東ユーラシア」として分離したシベリア最東部の極東連邦管区を除いたうえ、ロシアと国家連合を結成してきた主権国家ベラルーシが統合されて成立する連合領域圏。ウクライナとの間で係争地となっていたクリミア半島はウクライナとの協定に基づき正式にルーシに包摂される。また、ジョージア領内で分離独立状態となっていた南オセチアも、ロシア領内の北オセチアと統合されてルーシに包摂される。飛び地禁止原則により、旧ロシア飛び地のカリーニングラードとルーシを結ぶスバウキ回廊もルーシに帰属するが、回廊地域の行政管理は汎ヨーロッパ‐シベリア域圏が合同で行う。

(イ)社会経済状況
主権国家時代は、豊富な天然資源を活かした鉱業や旧ソ連時代を継承する軍需産業に強みがあったが、天然資源は世界共同体の下で世界共同体の管理下にあり、常備軍も世界共同体憲章に基づき廃止されるため、かつての二大産業部門は解体される。しかし、旧ソ連時代の計画経済の蓄積を再活用しつつ、環境持続的な計画経済に採り組み、成功を収める。ベラルーシ地域は麦類を中心とした農業生産に基盤を置く。

(ウ)政治制度
連合民衆会議は、旧ロシア時代の連邦構成主体を統廃合して引き継いだ準領域圏に、ベラルーシを加えた準領域圏から抽選された代議員で構成される。ただし、連合協約により、ベラルーシは他の準領域圏より高度の自治権が与えられており、代議員定数も多く配分される。連合の政治代表都市はサンクトペテルブルグだが、ベラルーシのミンスクも副代表都市と位置づけられる。

(エ)特記
ルーシ(英語:Rus')とはロシアの原型を成す古民族名ないし古地名に由来する。ベラルーシが包摂されることに伴う名称変更である。

☆別の可能性
ベラルーシが統合されず、単立の領域圏となる可能性、または単立の領域圏としてロシアと合同領域圏を形成する可能性もある。

 

(16)南コーカサス合同

(ア)成立経緯
アルメニア、ジョージアに、ジョージアから分立するアブハジアが合同して成立する合同領域圏。西アジアに近接した地理的条件から、汎西方アジア域圏の招聘領域圏でもある。一方、南コーカサスに位置しつつも汎西方アジア‐インド洋域圏に属するアゼルバイジャンが招聘領域圏となる。

(イ)構成領域圏
合同を構成する領域圏は、次の3圏である。いずれも統合領域圏である。

○ジョージア
主権国家ジョージアから、南オセチアとアブハジアを除いた領域圏。

アブハジア
ジョージア領内で分離独立状態となっていたアブハジアが正式に分立して成立する領域圏。

○アルメニア
主権国家アルメニアを継承する領域圏。

(ウ)社会経済状況
農業、工業ともに発達したジョージアを軸とする合同共通経済計画が施行される。同じ南コーカサス圏内のアゼルバイジャンとは経済協力協定を締結し、共通経済圏を形成する。

(エ)政治制度
合同領域圏は、各領域圏民衆会議から選出された同数の協議員から成る政策協議会を常設し、圏内重要課題を討議し、共通政策を協調して遂行する。政策協議会は、三つの領域圏の都市で輪番開催される、構成領域圏により使用言語が異なるため、合同共通語はエスペラント語。

(オ)特記
アブハジアについて、旧版では他の旧ソ連諸国内の分離独立地域とともに世界共同体直轄自治圏(それぞれの頭文字を取ったアブサップ直轄自治圏)に包摂していたが、改訂版では同自治圏を廃したため、アブハジアを単立の領域圏とした。

☆別の可能性
アルメニアとの関係改善が進展すれば、アゼルバイジャンが当合同に正式に参加する可能性もある。また、可能性は乏しいものの、アブハジアが分立せず、ジョージア領域圏内で高度な自治権を保持する準領域圏として留まる可能性もある。

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世界共同体通覧―未来世界地図―[補訂版](連載第41回)

2024-07-18 | 〆世界共同体通覧―未来世界地図―[補訂版]

五 汎ヨーロッパ‐シベリア域圏

(13)北部ヨーロッパ合同

(ア)成立経緯
北欧諸国及びバルト三国がまとまって成立する合同領域圏

(イ)構成領域圏
合同を構成する領域圏は、次の6圏である。

○デンマーク
主権国家デンマークを継承する統合領域圏。ただし、エスキモー系主体のデンマーク領グリーンランド(カラーリットヌナート)は汎アメリカ‐カリブ域圏内の極北領域圏に統合され、同じくデンマーク領フェロー諸島は言語的に近いアイスランドと統合される。

○スウェーデン
主権国家スウェーデンを継承する統合領域圏

○ノルウェー
主権国家ノルウェーを継承する統合領域圏。世界共同体平和構築センターが所在し、平和学と平和工作の戦略的な拠点となる。世界共同体の飛地禁止原則により、北極圏のスヴァールバル諸島領土は、世界共同体直轄圏に移行する。

○アイスフェロー
主権国家アイスランドとデンマーク領フェロー諸島が統合されて成立する。フェロー諸島は高度の自治権を持つ準領域圏のため、複合領域圏

○フィンランド
主権国家フィンランドを継承する領域圏。スウェーデン系住民の多いオーランド諸島は高度の自治権を持つ準領域圏のため、複合領域圏である。

○バルト
エストニア・ラトビア・リトアニアのバルト三国が統合され、それぞれが準領域圏として高度の自治権を維持しつつ結成される連合領域圏。連合公用語はエスペラント語。

(ウ)社会経済状況
元来、資本主義時代から北欧を中心に持続可能性を重視する社会経済体制を構築してきた経験を活かし、持続可能的計画経済への移行は円滑に運び、ジャーマニーと並ぶモデル領域圏の一つとなる。アイスフェローは水素利用の先進地として、水素のエネルギー利用に関する先端研究が行なわれる。

(エ)政治制度
合同領域圏は、各領域圏民衆会議から選出された同数の評議員から成る政策協議会を常設し、圏内重要課題を討議し、共通政策を協調して遂行する。政策協議会は、デンマークのコペンハーゲンに置かれる。合同全体の共通語は、エスペラント語。なお、デンマーク、スウェーデン、ノルウェーの各君主制は廃されるが、王室は一般公民化されたうえ、王は称号のみの存在して存続する。

(オ)特記
スカンジナビア半島北部ラップランドに居住する先住トナカイ遊牧民サーミ人は主権国家時代には複数の国に分断されて居住し、少数民族として差別されることもあったが、当合同成立後は、地域横断的なサーミ民族自治体を結成し、合同の政策協議会に代表者を派遣する。

☆別の可能性
バルト三国のエストニア・ラトビア・リトアニアが統合されず、それぞれ単立の領域圏として当合同に参加する可能性もある。他方、北欧諸国及びバルト三国が合同することなく、それぞれが別立ての合同領域圏として並立する可能性もある。

 

(14)ポーランド‐ウクライナ合同

(ア)成立経緯
国境を接する主権国家ポーランド及びウクライナが合同して成立する合同領域圏

(イ)構成領域圏
合同を構成する領域圏は、次の2圏である。

○ポーランド
主権国家ポーランドを継承する統合領域圏

○ウクライナ
旧ソ連から独立した当時のウクライナ共和国領のうち、後述のルーシ(ロシア)に編入されるクリミア半島を除いた残余を領域とする統合領域圏

(ウ)社会経済状況
工業化が進んでいたポーランドの産業基盤と農業地帯であったウクライナ農業基盤をベースとする共通経済計画が導入される。ウクライナの産業基盤は旧ソ連からの独立後の混乱やとロシアとの戦争で疲弊していたが、持続可能的計画経済の下で復興的発展を遂げる。

(エ)政治制度
合同領域圏は、各領域圏民衆会議から選出された同数の協議員から成る政策協議会を常設し、圏内重要課題を討議し、共通政策を協調して遂行する。政策協議会は、ポーランドのワルシャワとウクライナのキエフで交互に開催される。両領域圏で使用言語が異なるため、合同共通語はエスペラント語。

(エ)特記
ロシア系が多く、分離独立運動やロシアの占領にもさらされてきた東部ドンバス地域のロシア系またはロシア語話者住民は、ロシア文化自治共同体を形成して、ウクライナ領域圏民衆会議に一定数の代議員を送ることができる。

☆別の可能性
ポーランド及びウクライナが合同することなく、各々が単立の領域圏となる可能性もある。

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世界共同体通覧―未来世界地図―[補訂版](連載第40回)

2024-07-16 | 〆世界共同体通覧―未来世界地図―[補訂版]

五 汎ヨーロッパ‐シベリア域圏

(11)ベネルクス

(ア)成立経緯
主権国家のベルギー、ネザーランド(オランダ)、ルクセンブルクの三国が合併して成立する連合領域圏。三国は従来から強い同盟関係を形成してきたが、これをさらに発展させ、一つの連合にまとめるものである。ただし、三国の単純な合併ではなく、旧オランダの州が各々自治権を持つ準領域圏となり、旧ベルギー領域はフランデレン地域(オランダ語使用地域)とワロン地域(フランス語使用地域)、ブリュッセル大都市圏が準領域圏として分立され、ルクセンブルクはそのまま準領域圏に移行する。なお、旧オランダの海外領土はすべて分立する。

(イ)社会経済状況
主権国家時代から、三国は高い生活水準と先進的な社会政策を共有してきたが、こうした蓄積は共産主義体制の連合形成後も継承される。ただし、小国ゆえに金融立国だったルクセンブルクは貨幣経済の廃止に伴い、主要産業を失うこととなるが、連合を構成する準領域圏として、計画経済により維持される。

(ウ)政治制度
連合民衆会議は、各準領域圏から人口規模で比例した定数抽選された代議員で構成される。連合の政治代表都市は、ハーグに置かれる。多言語のため、連合全体の公用語はエスペラント語。

(エ)特記
連合形成前のベネルクス三国は、いずれも立憲君主制(ルクセンブルクは君主制に準じた大公制)を採用してきたが、連合形成を機に君主制は廃止される。ただし、いずれの王室・公室も一般公民化されたうえ、称号のみの存在として残される。

☆別の可能性
三国が完全に連合せず、各単立の領域圏としてベネルクス合同領域圏を形成する可能性もある。また、旧ベルギーでは、フランデレンとワロン両地域内の各州が準領域圏として再編される可能性もある。

 

(12)ジャーマニー

(ア)成立経緯
主権国家ジャーマニー(ドイツ)を継承する連合領域圏。旧連邦を構成する各州及び都市州(州相当の大都市)が、連合を構成する準領域圏にそのまま移行する。

(イ)社会経済状況
ドイツでは革命前から環境政党・緑の党が強かったこと、東西ドイツ分断時代の旧東ドイツでは計画経済が実施されていた歴史があることなどから、持続可能的計画経済への移行が最もスムーズに運ぶモデル領域圏となる。旧欧州連合内最大の経済大国であった時代を継承し、計画経済下でも汎ヨーロッパ‐シベリア域圏を代表する存在である。20世紀末の東西ドイツ統一以来の懸案であった東西経済格差は、計画経済の導入により解消される。

(ウ)政治制度
連合民衆会議は、各準領域圏から人口規模に比例した定数抽選された代議員で構成される。

(エ)特記
資本主義時代から環境技術で屈指の存在であったジャーマニーには、世界共同体の環境技術開発機構が置かれる。

☆別の可能性
なし。

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世界共同体通覧―未来世界地図―[補訂版](連載第39回)

2024-07-09 | 〆世界共同体通覧―未来世界地図―[補訂版]

五 汎ヨーロッパ‐シベリア域圏

(9)フランス

(ア)成立経緯
主権国家時フランスを継承する統合領域圏。ただし、離島のコルシカは分立するほか、帝国主義時代の名残である海外領土もすべて分立するか、周辺領域圏と合併する。先述したように、フランス大統領が共同大公の一人を務めてきたスペイン国境の小国アンドラはスペインから分立するカタルーニャと統合されてカタランドラとなり、スペイン飛地領だった町リヴィアもフランスに編入される。

(イ)社会経済状況
資本主義時代に達成された高水準の多角的な工業化を継承するが、農業分野でも汎ヨーロッパ‐シベリア域圏内ではロシアに次ぐ生産力を擁する。資本主義時代に依存率がトップクラスだった原子力発電は、世界共同体の原発廃止政策に沿って、廃炉作業が長期進行していく。

(ウ)政治制度
中央集権制の強かった主権国家時代からの伝統を引き継ぎ、統合型領域圏であるが、民衆会議制度の下、広域地方行政体である地方圏の自治権が強化され、地方自治の拡大が実現する。スペインから編入のリヴィアは特別地方圏として、最も高度な自治権が保障される。

(エ)特記
旧版では、フランスに接する小国モナコをフランスに統合していたが、モナコの独自性を考慮し、単立の領域圏としたうえ、環西地中海合同領域圏に包摂した。

☆別の可能性
可能性は高くないが、分権化を一層進めて連合領域圏となる可能性がある。また、コルシカが分立せず、フランスに留まる可能性もある。

 

(10)ブリティッシュ‐チャンネル諸島合同

(ア)成立経緯
グレートブリテン・北アイルランド連合王国を構成した邦のうちイングランド、スコットランド、ウェールズに、主権国家アイルランドが加わって成立する合同領域圏。英王室属領のマン島とチャンネル諸島、連合王国構成主体の北アイルランドは合同直轄自治域となる。旧連合王国時代に保有していた海外領土はすべて分立し、もしくは他領域圏や世界共同体直轄圏に編入され、消滅する。なお、英国及びその旧植民地諸国を中心とする緩やかな国家連合であった英連邦も世界共同体の設立を機に解体される。

(イ)構成領域圏
合同を構成する領域圏は、次の4圏である。いずれも統合領域圏である。

アイルランド
主権国家アイルランドを継承する領域圏。

スコットランド
スコットランドを継承する領域圏

ウェールズ
ウェールズを継承する領域圏。

イングランド
イングランドを継承する領域圏。

(ウ)社会経済状況
旧連合王国の産業基盤をベースに、アイルランドの農業を加味した共通経済政策が施行される。連合王国の貴族制度は世襲か一代限りかを問わず全廃され、階級社会は消滅する。

(エ)政治制度
合同領域圏は、各領域圏及び合同直轄自治域の民衆会議から選出された同数の協議員から成る政策協議会を常設し、圏内重要課題を討議し、共通政策を協調して遂行する。政策協議会は、エディンバラに置かれる。旧連合王国時代の君主制は廃止されるが、英王室は革命後も全廃されず、称号のみの存在として残される。居城は連合民衆会議の所有管理下に置かれ、王や王族も一般公民として職に就く。カトリックとプロテスタントの宗教紛争が根強い北アイルランドには合同の紛争調停機関として北アイルランド高等評議会が常設される。

(オ)特記
旧版では、ケルト系のアイルランド、北アイルランド、スコットランドでケルティック合同領域圏を想定し、イングランドとウェールズ及びマンをサウスブリテン領域圏、チャンネル諸島を世界共同体直轄自治圏としたが、補訂版では連合王国の四つの構成主体をそれぞれ分立させたうえ、アイルランドを含むブリティッシュ諸島とチャンネル諸島を包摂する合同に整理した。

☆別の可能性
グレートブリテン・北アイルランド連合王国がそのままの構成で連合領域圏に移行する可能性もある。また、君主制廃止に伴い、英王室属領のマン島とチャンネル諸島が世界共同体直轄自治圏を選択する可能性もある。

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世界共同体通覧―未来世界地図―[補訂版](連載第38回)

2024-07-04 | 〆世界共同体通覧―未来世界地図―[補訂版]

五 汎ヨーロッパ‐シベリア域圏

(8)イベリア合同

(ア)成立経緯
主権国家スペインから独自性の強いカタルーニャ、バスク、ガリシアが分立し、残余はイスパニアとして再編されたうえ、英領から編入されるジブラルタル及びポルトガルが合同して成立する合同領域圏。カタルーニャは象徴的ながらフランス大統領及びカタルーニャのウルヘル司教が共同大公を務める隣接の主権国家アンドラと統合される。一方、北アフリカのスペイン領自治都市セウタとメリリャは汎アフリカ‐南大西洋域圏のモロッコに編入される。合同には現ポルトガル領アソーレス、マデイラと現スペイン領カナリアの大西洋諸島直轄自治域も含む。

(イ)構成領域圏
合同を構成する領域圏は、次の6圏である。

○カタランドラ
スペインのカタルーニャ州と隣接するカタルーニャ系小国アンドラが合併して成立する。アンドラの共同大公制は廃止される。アンドラは準領域圏として高度の自治権を保持するため、複合領域圏。カタルーニャ州飛地のリヴィアは飛び地禁止原則によりフランスに編入される。

○イスパニア
スペインからカタルーニャ、バスク、ガリシアを除いた領域で再編される統合領域圏。スペイン王室(ボルボン家)は称号のみの存在となる。

ジブラルタル
英領植民地から自立して成立する都市領域圏

ポルトガル
主権国家ポルトガルを継承する統合領域圏

○ガリシア
スペインのガリシア州が分立して成立する統合領域圏

○バスク
スペインのバスク州が分立して成立する統合領域圏

(ウ)社会経済状況
旧スペイン時代の経済基盤を維持するカタランドラとイスパニアを軸とする共通経済計画が施行される。資本主義時代は遅れがちであったポルトガルも合同に参加することで、共産主義的発展を享受する。

(エ)政治制度
合同領域圏は、各領域圏及び大西洋諸島直轄自治域の各民衆会議及びから選出された同数の協議員から成る政策協議会を常設し、圏内重要課題を討議し、共通政策を協調して遂行する。政策協議会はジブラルタルに置かれる。

(オ)特記
旧版ではジブラルタルをイスパニアに編入していたが、長年の英領化により英語圏に含まれているため、単立の都市領域圏とした。

☆別の可能性
スペインが解体されず、現行のまま連合領域圏となる可能性もある。その場合、アンドラが単独の準領域圏として、またはカタルーニャと統合されて連合に参加する可能性、あるいは世界共同体直轄自治圏を選択して合同に参加しない可能性もある。また、ジブラルタルが世界共同体直轄自治圏を選択して合同に参加しない可能性もなくはない。

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世界共同体通覧―未来世界地図―[補訂版](連載第37回)

2024-07-01 | 〆世界共同体通覧―未来世界地図―[補訂版]

五 汎ヨーロッパ‐シベリア域圏

(6)イタリア‐サンマリノ

(ア)成立経緯
主権国家イタリアとイタリア半島内陸の小国サン・マリノが合併して再編される複合領域圏。ただし、イタリア離島部のシチリアとサルデーニャは単立の領域圏として分立し、次項の環西地中海合同領域圏に加入する。またスイス領内の飛地カンピョーネ・ディターリアも前出スイシュタイン領域圏に編入される。 

(イ)社会経済状況
資本主義時代の工業化の成果が持続可能的計画経済に継承される。深刻だったイタリア半島の南北間格差は、貨幣経済を廃した共産主義計画経済の導入によって解消される。もっとも、南部は依然として農業が主軸であり、産業種別上の南北相違は残される。資本主義時代のイタリア経済の影の柱であった地下経済は貨幣経済の廃止に伴い消滅するが、もう一つの宿痾である汚職問題については、反汚職オンブズマンの設置により、防止と摘発体制が強化される。

(ウ)政治制度
複合領域圏のため、主権国家時代のイタリアの州を継承する地方圏と、イタリアの特別州にサン・マリノを加えた複数の準領域圏から混成される。準領域圏は特別州以上に高度な自治権を持つ。全土民衆会議は、各地方圏及び準領域圏から人口に比例した定数抽選された代議員で構成される。加えて、準領域圏には各一名ずつ追加議席が与えられる。

(エ)特記
19世紀のイタリア統一以来、イタリアの一部であったシチリアとサルデーニャの両離島の分離をめぐっては議論があり得る。特にサルデーニャはまさにイタリア統一運動の中心であったことから、島内でも議論は分かれるであろうが、両島ともイタリア本土とは異なる歴史文化と言語を持つ独自の地域であることから、世界共同体の創設に当たり、分立を果たす。

☆別の可能性
4世紀の建国と伝わり、独立気風の強いサン・マリノはイタリアに統合されず、世界共同体直轄自治圏の道を選択する可能性もある。

 

(7)環西地中海合同

(ア)成立経緯
西地中海に点在する離島領域圏であるマルタ、シチリア、サルデーニャ、コルシカに、加え、沿岸小国モナコが合同して成立する合同領域圏。このうちシチリア、サルデーニャは上記のとおりイタリアから、コルシカはフランスから分立する。イタリア‐サンマリノも招聘領域圏として参加する。

(イ)構成領域圏
合同を構成する領域圏は、次の5圏である。いずれも統合領域圏である。

○マルタ
主権国家マルタを継承する領域圏。

○シチリア
イタリアのシチリア自治州から分立する領域圏。

○サルデーニャ
イタリアのサルデーニャ自治州から分立する領域圏。

○コルシカ
フランスのコルシカ地域圏(コルス地方公共団体)から分立する領域圏。

モナコ
主権国家モナコを継承する領域圏。大公制(準君主制)は廃止され、大公は称号のみの存在となる。

(ウ)社会経済状況
イタリア時代から多角的産業化が進んだサルデーニャを主軸に、農業はシチリアを軸とする共通計画経済計画が施行される。また、モナコを軸に環境的に持続可能な観光計画も計画経済に取り込まれる。

(エ)政治制度
合同領域圏は、各領域圏民衆会議から選出された同数の協議員から成る政策協議会を常設し、圏内重要課題を討議し、共通政策を協調して遂行する。政策協議会は、マルタのバレッタに置かれる。5圏で言語が異なるため、合同の第一公用語はエスペラント語だが、域内で通じやすいイタリア語に加え、フランス語も準公用語に指定される。

(オ)特記
旧版では「環地中海合同領域圏」としていたが、当合同の地理的範囲は西地中海域に限局されるため、掲記の名称とした。

☆別の可能性
そもそも当合同が形成されず、マルタとモナコ以外は現行どおり、イタリアまたはフランスに留まる可能性もある。その場合、マルタとモナコは単立の領域圏か世界共同体直轄自治圏のいずれかとなる。

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世界共同体通覧―未来世界地図―[補訂版](連載第36回)

2024-06-25 | 〆世界共同体通覧―未来世界地図―[補訂版]

五 汎ヨーロッパ‐シベリア域圏

(5)中央ヨーロッパ合同

(ア)成立経緯
いわゆる中欧に属する主権国家のうち、ドイツとポーランドを除く諸国を引き継ぎ、一部領土が中欧にかかるクロアチアを加えた領域圏が合同して成立する合同領域圏。そのうちの最小国家リヒテンシュタインはスイスと合併して単一の連合領域圏となる。

(イ)構成領域圏
合同を構成する領域圏は、次の7圏である。

○ハンガリー
主権国家ハンガリーを継承する統合領域圏

クロアチア
主権国家クロアチアを継承する統合領域圏。飛び地禁止原則により、ボスニア・ヘルツェゴヴィナ領に属していたバルカン半島部の都市ネウムが編入される。

○スロベニア
主権国家スロベニアを継承する統合領域圏

○チェコ
主権国家チェコを継承する統合領域圏

○スロバキア
主権国家スロバキアを継承する統合領域圏

○オーストリア
主権国家オーストリアを継承する連合領域圏

○スイシュタイン
主権国家スイスのカントン(州)とリヒテンシュタインが合併されたうえ、イタリアから編入される飛び地のカンピョーネ・ディターリアを準領域圏とする連合領域圏。準領域圏の中には、直接民主制の伝統を継承して、民衆会議に加え、全住民参加型の民衆総会を併置するものもある。リヒテンシュタインはリヒテンシュタイン侯を君主とする侯国であったが、君主制は廃され、侯家は旧宗主のオーストリアへ転居する。

(ウ)社会経済状況
スイスの金融業は貨幣経済廃止に伴い消滅するが、精密機械工業や製薬に基盤のあるスイスを継承するスウィシュタイン、工業化の進んだチェコやハンガリーとする共通経済計画に基づく計画経済が行われる。また中欧地域全体での食糧生産力の高さを生かし、持続可能的農業が発達する。

(エ)政治制度
合同領域圏は、各領域圏民衆会議から選出された同数の協議員から成る政策協議会を常設し、圏内重要課題を討議し、チェコ領域圏の政治代表都市プラハは、汎ヨーロッパ‐シベリア域圏全体の政治代表都市でもある。

(オ)特記
スイスとオーストリアは共に永世中立国を標榜してきたが、世界を一つにまとめる世界共同体の設立に伴い、永世中立の理念は役割を終え、合同参加に道が開かれる。

☆別の可能性
スイスは歴史的な独自性を重視し、合同に包摂されない単立の領域圏となる可能性もある。その場合、リヒテンシュタインが合併される場合とされない場合とが想定される。また、主権国家スイス時代の永世中立政策を維持し、スイシュタインが汎ヨーロッパ‐シベリア域圏に加入せず、世界共同体直轄自治圏を選択する可能性もなくはない。

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世界共同体通覧―未来世界地図―[補訂版](連載第35回)

2024-06-21 | 〆世界共同体通覧―未来世界地図―[補訂版]

五 汎ヨーロッパ‐シベリア域圏

(3)バルカン合同

(ア)成立経緯
旧ユーゴスラビアから独立した主権国家セルビア、ボスニア‐ヘルツェゴビナ、モンテネグロ、北マケドニアに加え、ブルガリアが合同して成立する合同領域圏。アルバニア‐コソヴォも招聘領域圏として参加する。

(イ)構成領域圏
合同を構成する領域圏は、次の5圏である。

○モンテネグロ
主権国家モンテネグロを継承する統合領域圏

○セルビア
主権国家セルビアを継承する統合領域圏。事実上の独立国となっていたアルバニア系のコソヴォはアルバニア‐コソヴォに包摂される。

○ボスニア‐ヘルツェゴビナ
主権国家ボスニア‐ヘルツェゴビナを継承する連合領域圏。クロアチアの飛地ドゥブロヴニクを隔てていたネウムは飛び地禁止原則により、クロアチアに編入される。

○新マケドニア
北マケドニアに改称していた主権国家マケドニアが再改称して成立する統合領域圏。ギリシャ系古代国家に由来するマケドニア名称をスラブ人による冒用と主張する旧ギリシャ(ヘラス)との紛議に一定の妥協が成立。

○ブルガリア
主権国家ブルガリアを継承する統合領域圏

(ウ)社会経済状況
農業に加え、自動車工業なども発達したセルビアを軸とする合同共通経済計画に基づく持続可能的計画経済が施行される。陸地の三分の一を森林が占めるブルガリアは持続可能的林業のモデルとなる。

(エ)政治制度
合同領域圏は、各領域圏民衆会議から選出された同数の協議員から成る政策協議会を常設し、圏内重要課題を討議し、共通政策を協調して遂行する。政策協議会は、ボスニア‐ヘルツェゴビナのサラエボに置かれる。民族紛争の再発防止のための調停機関として、民族関係高等評議会を常設する。合同の共通語はエスペラント語。

(オ)特記
バルカン半島は歴史的に世界でも最も熾烈な民族紛争が起きた場所として記憶されるが、民族紛争を社会主義連邦という形で一定止揚していた旧ユーゴスラビア連邦を構成した共和国中、クロアチアとスロベニアを除く領域に、ブルガリアが新たに加わって成立したバルカン合同の成立は、地域紛争の歴史に新たな解決をもたらし、同種事例に対する範例となる。

☆別の可能性
かつて民族紛争の中心であり、内戦終結後も民族分断的な状況が続くボスニア‐ヘルツェゴビナ全体が合同直轄圏となる可能性もある。


(4)ダキア

(ア)成立経緯
言語的・文化的な共通性の高かった主権国家時代のルーマニアとモルドバが統合して成立する領域圏。ただし、ロシア系・ウクライナ系住民の多い旧モルドバ東部の沿ドニエストル地方は準領域圏として高度の自治権を保持するため、複合領域圏となる。

(イ)社会経済状況
ルーマニア、モルドバともに農業を土台産業としつつ、旧ルーマニア地域は社会主義時代の計画経済経験を活かし、環境持続的な工業生産も活発化する。旧モルドバ地域では工業生産の拠点がある沿ドニエストルが経済的な軸となる。

(ウ)政治制度
全土民衆会議には沿ドニエストルに人口割合に応じた優先議席枠が配分される。また少数民族ロマも民族自治体を構成し、民衆会議に代表者を送る。

(エ)特記
ルーマニアの旧称に由来するダキアは、モルドバを包摂することに伴う名称変更である。なお、沿ドニエストルはモルドバから事実上分離し、ロシアへの帰属を要望していたが、世界共同体の飛び地禁止原則によりロシア帰属は断念し、ダキアに包摂されつつ、高度の自治権を保持する。

☆別の可能性
ルーマニアとモルドバ、沿ドニエストルがそれぞれ単立の領域圏としてダキア合同領域圏に包摂される可能性もある。

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世界共同体通覧―未来世界地図―[補訂版](連載第34回)

2024-06-17 | 〆世界共同体通覧―未来世界地図―[補訂版]

五 汎ヨーロッパ‐シベリア域圏

汎ヨーロッパ‐シベリア域圏は、現在の欧州連合領域を超えて、欧州大陸及び大西洋上の島嶼域(現スペイン及びポルトガル領)に、シベリアにまたがる現ロシア連邦の領域も包摂する汎域圏である。ただし、ロシア連邦の東端に当たる極東地方はロシアから分立した極東ユーラシア領域圏として汎東方アジア‐オセアニア域圏に包摂される。また、欧州諸国が南太平洋及びカリブ海域に保持する海外領土はすべて分立し、当汎域圏には包摂されない。汎域圏全体の政治代表都市はチェコ領域圏のプラハに置かれる。

包摂領域圏:
ヘラス、アルバニア‐コソヴォ、バルカン合同、ダキア中央ヨーロッパ合同イタリア‐サンマリノ、西地中海合同イベリア合同フランス、ブリティッシュ‐チャンネル諸島合同ベネルクス、ジャーマニー北部ヨーロッパ合同、ポーランド‐ウクライナ合同ルーシ、南コーカサス合同

 

(1)ヘラス

(ア)成立経緯
主権国家ギリシャを基本的に継承する領域圏。ただし、トルコとの協定に基づき北部の北キプロスから分割された南キプロスが編入される。南キプロスは準領域圏として高度の自治権が保障されるため、複合領域圏となる。また、現在のギリシャ領内の特殊な宗教自治体であるアトス自治修道士共和国はヘラスから分離され、世界共同体との協定に基づく独立宗教自治域となる(後述)。

(イ)社会経済状況
資本主義時代のギリシャは、債務危機に陥るなど財政面での問題国家であったが、共産化により貨幣経済が廃されると、財政問題からも解放され、ギリシャは一転、バルカン地域での模範領域圏となる。農業が主産業であるが、資本主義時代に盛んだった海運業も、環境的持続可能性に配慮したグローバルな共産化に伴い、新たな形で中枢産業となる。豊富な遺跡を資源とする観光は、共産化による商業活動の廃止に伴い、「産業」ではなくなるが、欧州方面の文化的観光地としてイタリアと並ぶ中心地であり続ける。

(ウ)政治制度
全土民衆会議にはコソボに人口割合に応じた優先議席枠が配分される。

(エ)特記
ヘラスとはヘレニズムという用語にも残るギリシャの古代名称に由来する。ギリシャ系ながら現在は独立国家である南キプロスが包摂されることに伴う名称変更である。

☆別の可能性
南キプロスが完全に統合され、全体として統合領域圏となる可能性もなくはない。また、可能性は高くないが、南北キプロスが統合され、汎ヨーロッパ‐シベリア域圏に包摂される可能性もなくはない。

 

(2)アルバニア‐コソヴォ

(ア)成立経緯
主権国家アルバニアと、セルビアから分離して事実上の独立国家となっていたアルバニア系のコソヴォが合併して成立する領域圏。コソヴォは準領域圏として高度の自治権が保障されるため、複合領域圏となる。バルカン合同領域圏の招聘領域圏でもある。

(イ)社会経済状況
統合されたコソヴォ地域を含め、農業が主産業である。しかし、旧社会主義体制時代のアルバニアで試みられた集団農場制の経験を活用しつつ、計画的な持続可能的農業が発達する。市場経済化の時代に蔓延した汚職やマフィアは、貨幣経済の廃止により撲滅される。

(ウ)政治制度
全土民衆会議にはコソヴォに人口割合に応じた優先議席枠が配分される。

(エ)特記
旧版ではコソヴォを完全に統合した統一アルバニアを想定していたが、コソヴォの独自性とアルバニアの膨張を志向する「大アルバニア主義」への懸念に配慮し、複合名称を持つ複合領域圏とした。

☆別の可能性
旧版どおり、統一アルバニアとして統合領域圏となる可能性もなくはない。また、コソヴォが単立の統合領域圏となったうえ、バルカン合同領域圏に加入する可能性もなくはない。

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世界共同体通覧―未来世界地図―[補訂版](連載第33回)

2024-06-09 | 〆世界共同体通覧―未来世界地図―[補訂版]

四 汎アフリカ‐南大西洋域圏

(16)マグレブ合同

(ア)成立経緯
マグレブ合同領域圏は、北アフリカマグレブ地域のモロッコ、アルジェリア、チュニジア、リビアが合同して成立する合同領域圏。モーリタニアも招聘領域圏として参加する。

(イ)構成領域圏
合同を構成する領域圏は、次の4圏である。

○モロッコ
主権国家モロッコ王国を継承する領域圏。スペイン領のセウタとメリリャの両都市が編入される。両都市は高度の自治が保障される準領域圏となるため、モロッコ全体は複合領域圏である。独立運動勢力との係争地西サハラは、世界共同体直轄自治圏となる。

○アルジェリア
主権国家アルジェリアを継承する統合領域圏

○チュニジア
主権国家チュニジアを継承する統合領域圏

○リビア
主権国家リビアを継承する統合領域圏

(ウ)社会経済状況
モロッコやアルジェリア、チュニジアで限定的に試行されながら、市場経済原理に押されて発展していなかった脱資本主義的な社会連帯経済を土台に、持続可能的な共通経済計画が施行される。モロッコはこの地域の自動車生産の中心となる。リビアでは、内戦からの復興計画が導入される。

(エ)政治制度
合同領域圏は、各領域圏民衆会議から選出された同数の協議員から成る政策協議会を常設し、圏内重要課題を討議し、共通政策を協調して遂行する。政策協議会は、モロッコのラバトに置かれる。モロッコの王制は廃止されるが、王は世襲の宗教面での精神的指導者となる。 

(オ)特記
旧版では、2010年代のリビア内戦と分裂を想定して、リビア領域圏と東部のキレナイカ領域圏に分立させていたが、2020年代の再統一を受け、リビア領域園に統一した。

☆別の可能性
リビアが再分裂し、旧版どおり、西部と東部が分立する可能性、最悪可能性として内戦が再発継続する可能性もある。また、可能性は乏しいものの、西サハラがモロッコから分立し、単立の領域圏として当合同に参加する可能性もなくはない。

 

(17)エジプト

(ア)成立経緯
主権国家エジプトを継承する統合領域圏。シナイ半島部が西アジアにもまたがることから、汎西方アジア‐インド洋域圏の招聘領域圏でもある。

(イ)社会経済状況
農業を主軸とするが、北アフリカ随一の工業力をも土台に、持続可能的計画経済が施行される。ナイル流域評議会の中心的なメンバーとして、流域の希少な共同水源となるナイル河の持続可能的な水利管理を主導する。また、主権国家時代からアフリカ随一の鉄道網を活かし、アレクサンドリアから南部アフリカ合同領域圏のケープタウンまでを結ぶ新設のアフリカ縦貫高速鉄道の起点として、運営の中心を担う。

(ウ)政治制度
主権国家時代は高度な中央集権国家だったが、民衆会議制度の下、地方自治が進展する。アフリカ最強にして、中東戦争で数々の戦歴を持つとともに、20世紀のエジプト革命以来、政治的な実力も保持した軍は常備軍廃止を定める世界共同体憲章に基づき解体される。

(エ)特記
ナイル流域評議会は、ナイル河流域の生態学的な持続可能性を保障するため、ナイル河流域のエジプト、スーダン、エチオピア、ケニア、南スーダン、コンゴ、ウガンダ、ブルワンディ、タンザニアの9領域圏で構成される領域間協調機関であり、本部はエジプトのルクソールに置かれる。世界共同体世界水資源調整機関とも連携するこの機関の存在により、主権国家時代ナイル河水利をめぐる流域の紛争や環境的に有害なダム開発などが抑止される。 

☆別の可能性
軍部の実権支配が継続し、民衆革命が不発に終わる可能性もある。

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世界共同体通覧―未来世界地図―[補訂版](連最第32回)

2024-06-06 | 〆世界共同体通覧―未来世界地図―[補訂版]

四 汎アフリカ‐南大西洋域圏

(15)サヘル合同

(ア)成立経緯
サハラ砂漠南淵のサヘル地域を共有するモーリタニア、マリ、ブルキナファソ、ニジェール、チャドの5つの領域圏が合同して成立する合同領域圏。サヘル地域の東部を共有するスーダンも招聘領域圏として参加する。

(イ)構成領域圏
合同を構成する領域圏は、次の5圏である。いずれも統合領域圏である。

モーリタニア
主権国家モーリタニアを継承する領域圏。

マリ
主権国家マリを継承する領域圏。

ブルキナファソ
主権国家ブルキナファソを継承する領域圏。

ニジェール
主権国家ニジェールを継承する領域圏。

チャド
主権国家チャドを継承する領域圏。

(ウ)社会経済状況
主権国家時代におけるこの地域の政情不安と武力紛争の解決、さらに持続可能的な共通経済計画によって構造的な貧困や人口爆発が解消されるとともに、世界共同体再生可能エネルギー機関との協働での再生可能エネルギーの開発・利用も進展する。この地域特有の干ばつも、世界共同体の砂漠化抑止計画により改善され、食糧難も解消される。

(エ)政治制度
合同領域圏は、各領域圏民衆会議から選出された同数の協議員から成る政策協議会を常設し、圏内重要課題を討議し、共通政策を協調して遂行する。政策協議会は、各領域圏の政治代表都市で持ち回る。サヘル地域に領域圏をまたいで居住する自立的な遊牧民トゥアレグ民族も独自の民族自治体を結成し、政策協議会に代表者を送る。紛争防止のため、世界共同体平和維持巡視隊と協働しつつ、サヘル平和維持隊を共同運用する。

(オ)特記
旧版ではモーリタニアを除く4圏を環赤道‐中央アフリカ合同領域圏の各領域圏とともに、一つの合同領域圏に包括していたが、サヘル地域には固有の特色と課題があるため、分割した。また、旧版ではモーリタニアをマグレブ合同領域圏に包摂していたが、地政学的にはサヘル地域にかかるため、当合同に包摂した。

☆別の可能性
モーリタニアがマグレブ合同領域圏に加入する可能性もなくはない。

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世界共同体通覧―未来世界地図―[補訂版](連載第31回)

2024-06-02 | 〆世界共同体通覧―未来世界地図―[補訂版]

四 汎アフリカ‐南大西洋域圏

(13)ナイジェリア合同

(ア)成立経緯
主権国家ナイジェリア連邦が南北に分割されたうえで、改めて南北合同して形成された領域圏である。

(イ)構成領域圏
合同を構成する領域圏は、次の2圏である。いずれも連合領域圏である。

○南ナイジェリア
ナイジェリア連邦のうち、キリスト教が優勢な南部諸州を継承する領域圏。政治代表都市はラゴス。

○北ナイジェリア
ナイジェリア連邦のうち、イスラーム教が優勢な北部諸州を継承する領域圏。政治代表都市はカドゥナ。

(ウ)社会経済状況
資本主義時代に発達した経済を基盤にしつつ、持続可能的な南北共通経済計画が運営される。自動車製造や製薬が軸となる。持続可能的農業も発達する。石油は世界共同体の管理下に移行する。

(エ)政治制度
合同領域圏は、各領域圏民衆会議から選出された同数の協議員から成る政策協議会を常設し、圏内重要課題を討議し、共通政策を協調して遂行する。政策協議会が置かれる旧ナイジェリア首都アブジャは、南北両ナイジェリア領域圏による合同管理下の中立都市という位置づけになる。

(オ)特記
主権国家時代はイスラーム優勢の南部とキリスト教優勢の北部という分裂構造から、宗教紛争が絶えず、暴力主義的なイスラーム武装組織が跋扈してきたが、あえて分割‐合同という方式に踏み切ることで、宗教紛争を止揚することに成功する。そのうえで、南北両領域圏それぞれに宗教評議院が設置され、宗教紛争の調停や少数宗派の権利保護を行なう。

☆別の可能性
南北が分割されず、統一性を保ちつつ、連合領域圏として成立する可能性もある。

 

(14)西岸アフリカ合同

(ア)成立経緯
アフリカ大陸北西岸に密集する10の領域圏に、南大西洋上の離島国家カーボヴェルデを加えた計11の領域圏が合同して成立する合同領域圏。11の構成領域圏はいずれも主権国家時代の領土区分をそのまま継承する。

(イ)構成領域圏
合同を構成する領域圏は、次の11圏である。いずれも統合領域圏である。

○ベナン
主権国家ベニンを継承する領域圏。

○トーゴ
主権国家トーゴを継承する領域圏。

○ガーナ
主権国家ガーナを継承する領域圏。

○コートジボワール
主権国家コートジボワールを継承する領域圏。

○ライベリア
主権国家ライベリアを継承する領域圏。なお、旧和表記は「リベリア」であったが、誤記のため公式に訂正。

○シエラレオーネ
主権国家シエラレオーネを継承する領域圏

○ギニア
主権国家ギニアを継承する領域圏。

○ギニア‐ビサウ
主権国家ギニア‐ビサウを継承する領域圏。

○ガンビア
主権国家ガンビアを継承する領域圏

○カーボヴェルデ
主権国家カーボヴェルデを継承する領域圏。

○セネガル
主権国家セネガルを継承する領域圏。

(ウ)社会経済状況
西アフリカ経済共同体時代の経済統合を基盤に、共通経済計画が運用される。ダイヤモンドなど内戦の経済要因となった天然資源管理は世界共同体の管理下に移行することで、社会的な紛争も激減する。

(エ)政治制度
合同領域圏は、各領域圏民衆会議から選出された同数の協議員から成る政策協議会を常設し、圏内重要課題を討議し、共通政策を協調して遂行する。政策協議会は、セネガルのダカールに置かれる。多言語のため、合同公用語はエスペラント語に統一。

(オ)特記
合同を構成する各領域圏はいずれも中小国ながら、それぞれにアフリカ特有の多部族を抱え、主権国家時代には内戦や独裁の絶えない不安定地域であった。そうした反省から、合同領域圏には世界共同体平和理事会と連携する合同紛争調停機関を常設し、紛争の未然防止と早期解決を図る。

☆別の可能性
可能性は高いと言えないが、緩やかな合同にとどまらず、11の準領域圏から成る連合領域圏として成立する可能性もある。

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