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民衆会議/世界共同体論[改訂版]・総目次

2018-04-04 | 〆民衆会議/世界共同体論[改訂版]

本連載は終了致しました。下記目次各「ページ」(リンク)より全記事をご覧いただけます。


改訂版まえがき&序言
 ページ1

第1章 「真の民主主義」を求めて

(1)民主主義の深化 ページ2
(2)直接民主主義の不能性 
ページ3
(3)国家は民主的でない ページ4
(4)民主主義と共産主義 ページ5

第2章 民衆会議の理念

(1)民衆主権論 ページ6
(2)半直接的代議制 ページ7
(3)民衆会議と議会の異同 ページ8
(4)民衆会議とソヴィエトの異同 ページ9

第3章 民衆会議の組織各論①

(1)全土民衆会議と地方民衆会議 ページ10
(2)二つの類型:連合型と統合型 ページ11
(3)民衆会議の基本構制 ページ12
(4)全土民衆会議の組織構制 ページ13
(5)地方民衆会議の組織構制 ページ14

第4章 民衆会議の組織各論②

(1)総合的施政機関 ページ15
(2)民衆会議の立法機能 ページ16
(3)民衆会議の行政機能 ページ17
(4)民衆会議の司法機能 ページ18
(5)民衆会議と経済計画 ページ19

第5章 民衆会議代議員の地位

(1)代議員免許 ページ20
(2)代議員の抽選及び任期 ページ21
(3)代議員の諸権利及び義務 ページ22
(4)特別代議員 
ページ23
(5)民際代議員 ページ24

第6章 世界共同体の理念

(1)国家なき世界へ ページ25
(2)民族自決から人類共決へ ページ26
(3)恒久平和の機構 ページ27
(4)グローバル民主主義 ページ28

第7章 世界共同体の組織各論①

(1)世界共同体と領域圏  ページ29
(2)世界民衆会議 
ページ30
(3)世界共同体と汎域圏 ページ31
(4)汎域圏代表者会議 ページ32

第8章 世界共同体の組織各論②

(1)非官僚制的運営 ページ33
(2)主要機関と専門機関 ページ34(改訂中につき、非表示)
(3)紛争解決機関 ページ35
(4)民際共同武力 ページ36
(5)人権保障機関 ページ37(改訂中につき、非表示)
(6)世界共同体協商機関 ページ38

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民衆会議/世界共同体論(連載最終回)

2018-04-03 | 〆民衆会議/世界共同体論[改訂版]

第8章 世界共同体の組織各論②

(6)世界共同体協商機関
 世界共同体(世共)は、主権国家の連合体にすぎない国際連合や欧州連合などとは異なり、排他的な主権国家体制を止揚して成立する地球規模の統治機関である。従って、国益を第一に追求する排他的な主権国家間の駆け引きで成り立つ外交活動というものがそもそも存在しなくなる。
 より具体的には、主権国家が外交特権を保持する外交官を交換的に派遣し合って外交活動を行なう伝統的なやり方は廃される。また主権国家の外交事務を仕切り、外交官の派遣元となる外交官庁(外務省)も廃止される。
 それに代わり、世共を大きな枠として、その内部で世共と構成領域圏間、または世共をはさんで構成領域圏間での政治経済的な各種調整―協商―が行なわれるのである。ここに言う協商とは、歴史用語で「三国協商」などと言うときの「協商」とは意味が異なり、各種の調整的な協議活動そのものを指している。
 そうした協商活動を取り持つ機関として、各領域圏に世共の代表機関(世界共同体代表部)が設置される。世共代表部は一名の駐在代表及び二名の副代表と事務局で構成され、世共と構成領域圏間の協商業務に当たる。世共代表は派遣先領域圏の出身者の中から世共事務局長によって任命され、事務局長の代理者としての地位を有する。
 しかし、世共駐在代表は外交特権を有しないため、派遣先領域圏で犯罪を犯せば当該領域圏の法律により処理されるが、身柄を拘束するに際しては、次に述べる領域圏民衆会議協商委員会の同意を要する。
 領域圏民衆会議協商委員会は、世共の協商相手方窓口となる組織である。この委員会は民衆会議の常任委員会として設置され、議会の外交委員会に相当するような性格を持つが、その任務はまさに協商そのものであって、言わば議会外交委員会と外務省を併せたような複合的な任務を負う。民衆会議協商委員長は外務大臣に匹敵する地位を持つ。
 なお、以前の回で見たように、各領域圏は世共に対し大使代議員を派遣するが、世共に各領域圏の代表機関は設置されない。その点は、現行国連に加盟各国の代表部が設置されるのはちょうど逆向きの形になる。ただし、領域圏大使代議員の事務を所掌する小規模な事務所は設置される。

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民衆会議/世界共同体論(連載第36回)

2018-03-20 | 〆民衆会議/世界共同体論[改訂版]

第8章 世界共同体の組織各論②

(4)民際共同武力
 世界共同体(世共)と国際連合(国連)の最大の相違は、世共が国家という政治単位によらない点にあるが、そのことはほぼイコール軍隊(国軍)を前提としないということを意味する。世共は国連のような軍隊を保持する「集団安全保障」ではなく、非軍事的な「恒久平和」の機構である。
 従って、世共の憲法に相当する世共憲章は軍備廃止条項を最重要条項とし、世共を構成する領域圏は独自の軍事組織を保有することが許されない。言わば、日本国憲法9条がグローバルに実現されることになるのである。
 そのため、ほとんどの紛争は前回見た二段階の非軍事的なプロセスを通じて解決がつき、世共に固有の武力は必要ないはずである。とはいえ、そうした非軍事的解決に限界がある場合、あるいは紛争解決後の平和監視のために一定の武力が必要となる場合を排除しない。そこで、世共も現実政策として、一定の武装組織―民際共同武力―を保有することは許されてよい。
 その場合でも、民際共同武力は本格的な軍隊組織である必要はなく、現行制度で言えば、フランスやフランス系諸国の憲兵隊のような武装警察組織で必要にして十分である。こうした世共直属の武装警察組織として、輸送目的限定の小規模な海上及び航空部隊も附属する一定規模の警察軍を常備する。
 ただし、この組織は完全な統合的組織ではなく、平和理事会の監督下に、実際の部隊は同理事会と協定を結んだ領域圏が世共の規定に従って隊員募集・訓練を受託管理したうえで、同理事会の派遣決議に基づき、理事会下部機関としての指揮運用委員会が統合運用する方式が現実的であろう。
 以上に対して、地球全体の防衛のための武力を持つべきかどうかという別問題もある。これは現時点ではいささかSF的ではあるが、地球外からの攻撃や、あるいはより現実的に想定され得る隕石衝突などの事態に対する備えである。
 この問題について確定的な結論は急がないが、仮にこうした全域防衛力を保持すべきだとするならば、ここでもそれは本格的な軍事組織である必要はなく、専守防衛型の防空警戒軍のような組織で必要にして十分であろう。
 いずれにせよ、世界共同体はその究極的な姿においては、一切の武力から解放された恒久平和機構であって、現実的な観点から保持される民際共同武力も必要最小限の補充的なものであるべきことが忘れられてはならない。

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民衆会議/世界共同体論(連載第35回)

2018-03-19 | 〆民衆会議/世界共同体論[改訂版]

第8章 世界共同体の組織各論②

(3)紛争解決機関
 世界が一つにまとまる世界共同体の下でも、構成領域圏間の境界紛争や特定地域の帰属問題、さらには領域圏内における分離問題などの紛争を完全にゼロにすることはできない。そうした場合に備えて、世共は二段構えの制度を用意する。
 一つは、司法的解決である。このような民際司法は、第一次的には領域圏の地域的なまとまりである汎域圏の民衆会議に設置された司法委員会がこれを担う。汎域圏民衆会議司法委員会(以下、単に司法委員会という)は、紛争当事領域圏以外の当該汎域圏内中立領域圏の出身者たる委員で構成された合議体として設けられた常設機関である。
 司法委員会は紛争当事領域圏の一つが司法委員会に適法に提訴すれば開始され、すべての当事領域圏の合意を必要としない。司法委員会の審決は全当事領域圏を拘束する強制力を持つ。
 ただし、不服の当事領域圏は上訴することができる。その上訴審を担うのは、世界共同体司法理事会である。司法理事会は上訴が行なわれたつど設置される非常設機関であり、理事は紛争当事領域圏以外の中立領域圏の出身者で構成される。上訴審決には終局性があり、三審は認められない。
 国家主権という観念を持たない世共の司法的解決には当事領域圏を拘束する強制力が認められるから、ほとんどの紛争は司法的に解決されることを期待できるだろう。しかし、それでも解決がつかない場合の備えとして、世共平和理事会による紛争調停と平和工作が用意される。すなわち―
 武力紛争の発生または発生の現実的危険を認知した平和理事会はまず、紛争当事領域圏以外の中立領域圏に属する専門家から成る「緊急調停団」を任命し、紛争の終結に努める。
 この「緊急調停団」による調停が功を奏した場合も、再発防止と調停履行の監視のため、平和理事会の下に専門的な訓練を受けた要員から成る「平和工作団」を常備し、同理事会の決議を受けて随時紛争地へ派遣することができるようにする。

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民衆会議/世界共同体論(連載第33回)

2018-03-05 | 〆民衆会議/世界共同体論[改訂版]

第8章 世界共同体の組織各論②

(1)非官僚制的運営
 国際連合や欧州連合といった現行国際機構に付きものの欠陥は、官僚主義である。これらの機構は固有の主権を持たないが、それゆえにかえって政治職が名誉職化し、実務を仕切る官僚制がはびこりやすい体質を蔵している。
 民際機構としての世界共同体(世共)は、このような官僚主義から自由な存在でなくてはならない。前回まで見てきたように、世共が世界民衆会議を軸に成り立つのも、官僚主義を抑制して民衆会議を核とする民衆統治を徹底する趣旨である。
 世界民衆会議は各領域圏民衆会議が選出した代議員で構成されるのであるが、それら代議員は官僚としての外交官ではなく、民主的な基盤を備えた政治職として世共運営の中心を担う。そのうえで、汎域圏民衆会議が選出した汎域圏常任全権代表で構成される汎域圏代表者会議が世共執行機関としての役割を担うことで、執行の側面でも政治職に実質的な権限を保障する。
 そればかりでなく、具体的な機関構成の点でも、非官僚制的な運営が目指される。世共事務局は独立した主要機関ではなく、世界民衆会議の下で文字通りに世共の事務処理を担う実務機関に純化され、その長たる事務局長も実務責任者以上の権限を持たない。
 また各分野ごとの主要機関についても、現行国連のように総会と並立する形で安全保障理事会や経済社会理事会等が置かれる縦割り主義的な構制ではなく、世共総会の位置づけを持つ世界民衆会議の常任委員会として置かれる。従って、これら主要機関の運営に当たる理事職は、世界民衆会議代議員が兼任することになる。
 実際のところ、世共事務局や各主要機関その他の世共帰属機関の一般職員は世共公務員としてある種の官僚ではあるが、これらの実務職員は必要最小限に抑え、世界民衆会議代議員が実質的な権限を発揮できるようにする。

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民衆会議/世界共同体論(連載第32回)

2018-02-20 | 〆民衆会議/世界共同体論[改訂版]

第6章 世界共同体の組織各論①

(4)汎域圏代表者会議
 現行の国際連合の組織構制にあっては執政機関に相当するものが存在しないことが、世界的な問題を国連主導で処理するうえで大きな弱点となっている。
 もっとも、事務総長が指揮する事務局は存在するが、その本質は官僚制であり、事務総長も五大国が仕切る安全保障理事会の推薦により総会が任命する五大国の総代理人的性格が強く、国連事務局の執政機関としての性格は弱い。 
 反面、国連の枠外で主要国首脳会議が一種の国際執政機関として代行的に機能している面もあるが、経済大国中心の偏った構成で国連の頭越しに国際的な問題を決するのは寡頭制的であり、民主的ではない。そこで、世共にあっては、より公平性が担保された民主的な執政機関を擁することが要請されるのである。
 領域圏レベルの民衆会議はそれ自身が議決機関であると同時に執政機関でもあるが、世共の議決機関となる世界民衆会議は世界中の領域圏で構成される関係上、このような一元的構成を採り難い。そこで、世共の執政機関は民衆会議とは別途立てる必要がある。
 その方策にもいろいろなものが想定できるが、前回述べた五つの汎域圏の代表者で構成する汎域圏代表者会議をもって世共の執政機関とするのがさしあたり最も簡明妥当と考えられる。 
 汎域圏代表者の地位や選出法もまた様々に考えられるが、領域圏レベルのように民衆会議議長をもって単純に代表者とするのは世界の問題を扱う役割の重要性に鑑み適切と思われないので、汎域圏民衆会議が選出する常任全権代表をもって汎域圏代表とする。よって、汎域圏代表者会議はこの汎域圏常任全権代表五人で構成されることになる。
 汎域圏代表者会議は、世界民衆会議に条約案を提出したり、成立した世界条約の履行を確保する任務を負うほか、大災害や感染症パンデミック、民際紛争などの緊急的な問題について討議し、対処方針を決定する権限も持つ。
 なお、世共には事務局も設置されるが、事務局は汎域圏代表者会議の下にあって、その任務を補佐し、他の主要機関、専門機関との調整を担う(詳細は次章で述べる)。

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民衆会議/世界共同体論(連載第31回)

2018-02-19 | 〆民衆会議/世界共同体論[改訂版]

第7章 世界共同体の組織各論①

(3)世界共同体と汎域圏
 世界共同体(世共)は領域圏を単位とする世界民衆会議を最高議決機関として成り立つが、それとは別に、領域圏よりも広い包括的な地域―汎域圏―を内包する二重構造を取る。
 この汎域圏は文化的な共通項を持つ周辺領域圏の緩やかな連合体として構成される。その区分法は唯一ではないが、一例として、筆者は次のような五つの区分を提唱している。

(Ⅰ)汎東方アジア‐オセアニア域圏:東アジア、東南アジア、オセアニア
(Ⅱ)汎西方アジア‐インド洋域圏:西アジア、中央アジア、南アジア、インド洋域
(Ⅲ)汎ヨーロッパ‐シベリア域圏:欧州、ロシア(シベリアを含む)
(Ⅳ)汎アフリカ‐南大西洋域圏:アフリカ、南大西洋域
(Ⅴ)汎アメリカ‐カリブ域圏:南北アメリカ、カリブ海域

※1 南極大陸は世共の直轄圏とする。
※2 現行の海外州/県のような「飛び地」は認めず、厳密に隣接的な地域として区画される(海外州/県は独立の領域圏となるか、近隣の領域圏と合併する)。

 一つの領域圏は一つの汎域圏にしか参加できないが、境界域にある領域圏は別の汎域圏にオブザーバー参加することができる。これら汎域圏は世共内部の地域分権機構として機能し、地域的に処理すべき事項については汎域圏のレベルで決定される。
 汎域圏は、今日の欧州連合やアフリカ連合等の地域統合体と重なる部分もあり、類似性も認められるが、各汎域圏は相互に自立競合する地域ブロックではなく、あくまでも世共内部の分権体であることに留意されなければならない。
 汎域圏は、それ自身も民衆会議を最高議決機関とする共同体である。しかし、地域ブロック化を避ける趣旨からも、汎域圏民衆会議の代議員の選出法は、構成領域圏内の広域圏(連合領域圏の場合は、連合を構成する準領域圏)の民衆会議で各一名の代議員を選出するものとする。
 その場合、領域圏内の広域圏の数は各領域圏によりまちまちであるので、公平を期するうえでも、汎域圏民衆会議に代議員を送ることのできる広域圏の数を、例えば20圏までとする。その20圏の選抜法については各領域圏の裁量に委ねられるが、これについても、二期連続での当選を排した抽選制とするのが最も公平かつ紛議を招かない方法と考えられる。
 さらに、地域ブロック化を避ける上述の趣旨からも、汎域圏民衆会議の議決では領域圏ごとにまとまって投票することは禁じられ、代議員を擁する広域圏ごと個別に投票しなければならない。

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民衆会議/世界共同体論(連載第30回)

2018-02-13 | 〆民衆会議/世界共同体論[改訂版]

第7章 世界共同体の組織各論①

(2)世界民衆会議
 前章で世共は、最終的に完成された形態においては、世界民衆会議をベースとして、それを構成する各領域圏の民衆会議が有機的に結びついた民際ネットワーク機構として機能すると説明した。つまり、世共の中核は世界民衆会議である。
 民衆会議の組織構成については、すでに第3章及び第4章で論じたところであるが、そこでは専ら世共を構成する各領域圏及びその内部の地方自治体における民衆会議の組織構成を扱った。本章及び次章で扱うのは、世共における世界民衆会議の組織構成についてである。
 世界民衆会議は世界共同体の総会を成す機関であり、その正式名称も「世界民衆会議‐世界共同体総会」であるが、これと現行の国連総会が決定的に違うのはその構制である。国連総会は国連加盟各国で構成されるが、それだけに総会は各国首脳らによる年末の「顔見世」儀式に終始しがちで、議案をめぐる実質的な審議はなされず、実務的な交渉は外交官(外務官僚)である国連大使レベルで行われている。
 しかも、国連総会はそれぞれ対等な主権を有する国連加盟各国代表の集まりであるから、当然にも各国の利害が入り乱れ、条約交渉は政治的駆け引きのゲームに終始し、国連条約の成否・内容はとりわけ五大国内部の利害対立に大きく左右されることになる。
 世界民衆会議の最大任務も条約の審議・議決にあるが、この世共条約は現行の国連条約が加盟各国によって批准されない限り加盟国を拘束しないのとは異なり、一個の「法律」(世界法)として、世共を構成する各領域圏を例外なく拘束する。従って、その審議・議決は各領域圏を代表する一定の民主的な基盤を持った代議員(大使代議員)によってなされる。
 ただし、その選出方法は直接選挙ではなく、各領域圏民衆会議による複選制により、選出後は出身領域圏民衆会議の特別代議員を兼職する(特別代議員は審議に参加できるが、表決には参加できない)。
 また複数の領域圏による合同領域圏の場合は、それを構成する各領域圏が半年会期ごとの輪番で合同を代表する1名の大使代議員(合同代議員)を送る。ただし、8領域圏以上の大合同の場合は、2名の合同代議員を送ることができる。
 合同代議員を出さない合同構成領域圏は、各1名の副代議員を送ることができる。副代議員は合同代議員を補佐しつつ、合同代議員が出身領域圏の利益に偏らず、合同全体の利益のために活動するよう方向付けする任務を有する。

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民衆会議/世界共同体論(連載第29回)

2018-02-12 | 〆民衆会議/世界共同体論[改訂版]

第7章 世界共同体の組織各論①

(1)世界共同体と領域圏
 前章で、世界共同体は一定の地理的範囲内で自主的統治権を留保された領域体である「領域圏」で構成されるグローバルな共同体であると定義づけた。つまり、世界共同体(以下、世共と略す)は、領域圏の集まりである。
 この領域圏は、既存の主権国家とは異なり、もはや「国」ではない。ただし、一定の領域内で民衆会議を主体とした自主的統治が認められる一つの領域公共団体である。それらが世共の構成要素となるわけであるが、領域圏にも大別して二つのタイプがある。
 第一は単独領域圏である。これは、その名のとおり、単独で領域圏を形成するもので、中央民衆会議を中心に統一的な統治が行われる最も標準的な領域圏である。
 この単独領域圏はさらに、統合領域圏と連合領域圏とに分かれる。この違いは、現行国家制度では中央集権制と連邦制の違いに近く、統合領域圏は集権型、連合領域圏は連邦型である。連合領域圏は領域圏に準じた高度な自治権を留保された複数の準領域圏の連合で構成されるが、全体としては単独領域圏を形成し、準領域圏は独立して世共を構成しない。
 以上に対して、第二の合同領域圏は複数の領域圏(最大で12)が協定を締結して一つの合同体を形成するタイプのものである。先の連合領域圏とやや紛らわしいが、あくまでも全体としては単一の連合領域圏とは異なり、複数領域圏の緩やかな合同にすぎない。
 ただし、単なる友好善隣グループではなく、合同領域圏は共通的な経済計画を策定するほか、常設の政策協調機関を設けて重要政策を協調的に執行する。さらに世共には会期ごとの輪番制で単一の代表代議員を送り込むため、一体性は強い。よって、通常は民族的・文化的な一体性の強い近隣領域圏間で形成されるであろう。
 現行国連は年々加盟国が増大し、現時点では200か国近くに上るが、それによって国連が大所帯となり、大小各国の利害が入り乱れ、円滑な国際的意思決定に困難を来たしている。その結果、国連は実効性を失い、儀礼的な存在と化す危険の中に置かれている。
 これに対し、世共は実質的な世界民衆の意思決定機関たり得るため、総会‐世界民衆会議の議決に参加する領域圏の数を最大で100前後まで絞り込む必要がある。その際には、上記の合同領域圏の活用が期待される。

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民衆会議/世界共同体論(連載第28回)

2018-01-29 | 〆民衆会議/世界共同体論[改訂版]

第6章 世界共同体の理念

(4)グローバル民主主義
 世界共同体は世界民衆のネットワーク機構であり、グローバル民主主義の実践の場である。しかし、グローバル民主主義という理念は、現状では恒久平和と同じくらい観念的な夢想にすぎない。
 現行の国家体制にあっては、「民主主義は工場の門前で終わる」とともに、「民主主義は国境線の内側で終わる」。すなわち資本制企業の内部に民主主義は届かず、なおかつ国境を越えて民主主義は展開されない。民主主義は、政治という狭い場で―それも「議会制限定民主主義」の限度で―、かつそれを標榜する国内でしか適用されず、国際社会は主権国家間の談合か戦争の場でしかないのだ。
 もっとも、しばしば米欧に主導された国際社会が独裁国家と名指された諸国に「民主主義」を軍事的に強制しようとするが、このように横槍的に強制される「民主主義」は侵略的軍事介入の口実でしかなく、ここで言うところのグローバル民主主義とは無関係のしろものである。
 世界共同体は、このような民主主義の狭い限界を乗り超え、かつ「民主主義」の口実的な標榜を排し、民衆主権の理念に基づき、地球規模で民主主義を展開することを目指すグローバル民主主義の実践体でもある。そのためにも、世界共同体はそれ自体が民衆会議―世界民衆会議―によって運営されなければならないのである。
 最終的に完成された形態においては、世界共同体はその総会を兼ねた世界民衆会議をベースとして、それを構成する各領域圏の民衆会議が有機的に結びついた民際ネットワーク機構として機能することになる。そのため、本連載のタイトルも当初は『世界共同体/民衆会議論』を予定していたのであるが、世界共同体の核心も民衆会議にあり、民衆会議が起点となることから、タイトルを『民衆会議/世界共同体論』へと中途変更した次第である。
 このようなグローバル民主主義は恒久平和の必須条件でもあり、恒久平和の機構化である世界共同体はグローバル民主主義の実践体でもあるという意味において、グローバル民主主義と恒久平和とは等価的である。

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民衆会議/世界共同体論(連載第27回)

2018-01-29 | 〆民衆会議/世界共同体論[改訂版]

第6章 世界共同体の理念

(3)恒久平和の機構化
 およそ200年前にカントが提唱したような常備軍の存在しない恒久平和は理念としてはなお尊重されているが、それが実現された試しはない。特に現在のように200近くにも及ぶ主権国家が地球上に林立・競合する状況では、かえって恒久平和の実現からは遠ざかっていると言わざるを得ない。
 20世紀の二つの世界大戦は、第一次大戦後の不完全な成果であった国際連盟を経て、現在の国際連合(国連)という地球規模の安全保障機構を生み出したが、この機構は元来、恒久平和ではなく、当面の大戦抑止を目的とした暫定的な国際安全保障の枠組みにすぎない。
 カントは恒久平和の条件として国際的な共和制の樹立と常備軍の廃止を思念したが、排他的な領土の保持を存立条件とする主権国家群が並立する限り、主権国家が常備軍を手放すことは原則としてなく、国連も、各国の常備軍保持を前提とした連合体であるにすぎない。
 国連自身が国連軍を組織する可能性は認められているが、加盟国の常備軍を没収して国連に集中する“刀狩”のような体制ではなく、加盟国の常備軍保持の権利は留保されている。しかも、核保有の特権を公認された五つの大国中心の非対称な運営機構でもあるため、核兵器の廃絶という国際平和の初歩的必要条件すら満たされる見込みはない状況である。
 それでも、国連はここまで何とか第三次世界大戦の危機を冷戦のレベルに抑止し、風雪に耐えてきたが、冷戦終結後は対テロ戦争や五大国に対抗しようとする野心的な国家による核開発という新たな危機に見舞われている。
 特に対テロ戦争は、世界大戦とは異なり、もはや国家間の戦争ではないため、主権国家の連合体にすぎない国連の枠組みでは根本的な解決がつかない。また対抗国家による核開発は、五大国にのみ公認の核保有特権を認めるという国連の不平等な構造のツケである。
 そうした国連の本質的な限界を乗り超え、恒久平和を真に実現させるためにも、主権国家という観念を揚棄して、よりグローバルな統治機構を構想する必要があるのである。
 歴史的にやや図式化して俯瞰すれば、世界共同体とは、第一次大戦後の不安定な休戦的平和の機構であった国際連盟、第二次大戦後の核兵器付きの矛盾した安全保障の機構である国際連合に続き、冷戦及び対テロ戦後に現れるべきはずの恒久平和の機構である。

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民衆会議/世界共同体論(連載第26回)

2018-01-16 | 〆民衆会議/世界共同体論[改訂版]

第6章 世界共同体の理念

(2)民族自決から人類共決へ
 国家なき世界の構想に対して正当な不安が喚起されるとすれば、それは主権国家が否定されることで、民族自決権が損なわれるのではないか、ということであろう。たしかに、民族自決思想は帝国主義への抵抗理念としては有効であり、歴史的な意義を担ってきた。しかし本来、「民族」という概念は曖昧かつ無数に細分化されていくため、「一民族一国家」という算術的定式は成り立たない。
 従って、世界中のすべての国が内部に複数の民族を抱え、すべての国で民族間対立や少数民族差別、分離独立問題などが噴出し、少なからぬ国で内戦やテロリズムの要因ともなってきた。現今、緊急的な国際課題となっている対テロ戦争の要因にも、民族自決運動の暴走という一面が見られる。
 ここでも、発想の転換が必要である。すなわち民族自決から人類共決へ。人類は複数の人種と多数の民族に分岐しているが、生物学上の種としては一つである。そして現時点での知見による限り、人類は地球上にしか生息していない。とすれば、人類が共有する地球上での類的な共同決定は可能であり、必要でもある。そうした人類共決の場が、世界共同体である。
 ただし、世界共同体は文字どおりに世界を一つにまとめ上げてしまうものではない。その点では、「世界連邦」の構想とは異なる。世界連邦という構想は、つとに世界連邦運動という国際運動において提唱されている
 そこでは、主権国家の存在を前提に、「世界連邦政府」なる国際機構を観念したうえ、国家主権の一部を世界連邦に委譲するという構制を採る点で、世界を一つの「国」として観念しようとする思考法がなお残存している。
 これに対して、世界共同体は世界民衆のネットワーク機構である。ただ、ネットワークといってもいわゆる「地球村」構想のように、発達した交通・通信手段を通じて世界民衆が単にコミュニケートするだけの仮想空間を意味するのではなく、地球規模での政治的な意思決定も行う施政機構としての実体を備えたネットワークである。
 その具体的な組織については次章以下で扱うが、とりあえずの一般的なイメージとしては、現行国際連合の機構をより統合的かつ民主的に仕立て直したものを想定すればよいであろう。
 ただし、世共は現行主権国家よりも広い地理的範囲で自治的施政権を認められた領域圏で構成され、各領域圏は互いに排他的な領土を持たない。しかも各領域圏は民族単位ではなく、施政上の便宜を考慮した地理的一体性のみを基準に設定された領域統治体にすぎない。従って、一つの領域圏の一部の編入や組み換えなども、主権国家より柔軟に行なうことが可能となる。

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民衆会議/世界共同体論(連載第25回)

2018-01-15 | 〆民衆会議/世界共同体論[改訂版]

第6章 世界共同体の理念

(1)国家なき世界へ
 
前章まで論じてきた民衆会議は国家なき統治を前提とする代議制度の構想であったが、国家なき統治はそうした対内的な関係においてのみならず、対外的な関係においても国家なき世界の構想に結びつく。つまり、主権国家という観念の廃棄である。
 対照的に、現在の世界は主権国家の林立状態で成り立っている。帝国主義の時代には主権国家は植民地支配を行なう諸国プラスアルファ程度の数にどとまっていたが、二つの世界大戦を経て、民族自決の思想が浸透すると、民族単位の国民国家の独立が相次ぎ、現時点ではおよそ200に及ぶ主権国家が林立し、現代世界は主権国家の広大な森林のような様相を呈している。
 その結果、林立する各主権国家の利害がまさに枝の絡み合う深い森林のように複雑に入り組み、しばしば深刻な対立・衝突を引き起こしている。第二次世界大戦後の国際社会を規律してきた国際連合も、加盟国の増加に伴い、統一的な意思決定がますます困難になり、その存在意義も揺らいでいる。
 一方で地球環境問題のようにまさにグローバルな意思決定を必要とする重要課題が浮上する中、主権国家体制は限界をさらけ出している。この状況を根本的に転換するためには、主権国家という永きにわたる観念を放棄する必要があるのである。それが、本連載のもう一つの主題である世界共同体(以下、世共と略す)という構想である。
 世共は、現行国連のような主権国家の連合体を超え、世界を一つの共同体として把握する視野に基づく新たな機構である。それは一定の地理的範囲内で自主的施政権を留保された「領域圏」で構成されるグローバルな共同体である。
 従って、この共同体の内には鉄条網や国境警備隊によって管理される国境の概念はない。まさに世界は一つであるから、原則として人は自由に世界中を移動して回ることができるのである。国家なき世界は、当然に国境なき世界である。
 なお、世共の英語名としてはWorld Commonwealthを用いる。commonwealthには「連邦」という含意もあるが、本来的にはcommon:共同の+wealth:富であり、富の世界的な共同管理という経済的な含意も持ち得る語義となる。世共は地球規模での計画経済を担う経済中核機関でもあるので、政治的‐経済的な二義性を持つcommonwealthという用語には含蓄がある。
 もっとも、世共の公用語は英語ではなく、何らかの世界公用語が指定される。従って、世共の正式名称も世界公用語で示されることになるが、ここでは当面、エスペラント語を指定するとして、Monda Komunumoを仮称として示しておきたい。

*この場合、monda:世界の+Komunumo:共同体で、文字どおりの世界共同体を含意し、上記英語名のような含蓄はなくなる。

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民衆会議/世界共同体論(連載第24回)

2017-12-30 | 〆民衆会議/世界共同体論[改訂版]

第5章 民衆会議代議員の地位

(5)民際代議員
 前回まで見てきたのは、各領域圏内の民衆会議代議員の地位をめぐる問題であったが、民衆会議は世界共同体及びその内部の地域的なまとまりである汎域圏にもそれぞれ設置される。これら世界民衆会議及び汎域圏民衆会議の代議員は、領域圏を超えて活動する言わば民際代議員である。
 こうした民際代議員も所属する民衆会議において審議・議決に当たる点では領域圏内代議員と変わらない。一方で領域圏を越えた協商という外交官的な任務が加わる点に特殊性がある。ことに世界民衆会議代議員は、現行制度で言えば国連大使に近い任務も負うことになる。
 こうした民際代議員の特殊な性格に照らすと、その資格条件として、共通代議員免許は必ずしも必須のものではない一方、民際代議員としての任務遂行に必要な語学や協商(外交)に関する素養を備えていなければならない。その点、民際代議員固有の認定試験を別途創設することも検討に値するが、免許という形で義務的な資格要件とすべきではないかもしれない。
 従って、その選出も抽選によるのではなく、世界民衆会議代議員は各領域圏民衆会議が、汎域圏民衆会議代議員は各領域圏内の広域自治体(地方圏または準領域圏)民衆会議が、適任者の中からそれぞれ選出する。適任者の人選は、選出権を持つ民衆会議の常任委員会である協商委員会がこれを行なう。
 民際代議員の所属民衆会議における活動の中心は、民際施策の立案、民際法(条約)の制定や民際諸機関の管理運営であり、この面では領域圏内代議員と相似的であるが、異なるのは、それぞれ自身が選出された圏域の政治代表者として行動することである。その点が、まさに協商的な活動である。
 とはいえ、民際代議員は大使・公使のような単なる外交使節ではないから、選出された出身圏域の指令に拘束される命令委任の制度は採るべきでない。ただし、出身圏域に対して明白に背信的な行為を行なったと認める場合、選出した民衆会議は当該代議員をリコールすることができる。

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民衆会議/世界共同体論(連載第23回)

2017-12-29 | 〆民衆会議/世界共同体論[改訂版]

 第5章 民衆会議代議員の地位

(4)特別代議員
 前回まで見た民衆会議代議員とは、民衆会議で審議・討議・議決を行なう中心的なメンバーである一般代議員を指していたが、民衆会議には別途、特別代議員が存在する。特別代議員とは、民衆会議にあって司法権を行使する代議員である。
 民衆会議は総合的施政機関として、司法機能も保持するため、司法業務に従事する特別な代議員を擁するのである。民衆会議の司法機能は多岐に及ぶが、そのうち民衆会議が直担するのは憲章解釈と一般法令の解釈という広い意味での法解釈である。
 前者の憲章解釈は、憲章を有する領域圏及び領域圏内の各圏域民衆会議で憲章問題を所管する憲章委員会が専有する権限である。そのため、憲章委員会の委員は一般代議員と憲章解釈を専門とする法律家から成る判事委員に分かれるが、後者の判事委員が特別代議員となる。
 一方、一般法令解釈は領域圏及び領域圏内の各圏域民衆会議に設置される法理委員会が専有する権限である。法理委員会はまさに法令解釈だけに専従する専門的な常任委員会であるため、その委員は全員が法曹資格を有する判事委員たる特別代議員で占められる。
 これらの特別代議員は、一般代議員とは異なり、抽選ではなく、公式の法曹団体が作成した推薦名簿の中から所属すべき民衆会議によって選任される。そのようなまさに特別な地位にある関係上、権限の点でも、一般代議員とは大きく異なる。
 特別代議員は民衆会議における議決権は持たない。ただし、本会議に参加し、意見を述べることはできる。ことに、憲章委員会の特別代議員・判事委員が憲章改正問題に関する委員会審議で意見を述べる権利は重視されなければならない。
 また、特別代議員は司法機能を担う特殊性から、任務遂行に当たっては独立性を保障されなければならず、その罷免に関しては弾劾法廷の罷免判決を民衆会議が承認して初めて罷免の効力を発するという形で一般代議員よりも厚い身分保障がなされる。
 なお、民衆会議の司法機能を担う公務員としては、他に衡平委員や真実委員、護民監等があるが、これらの者は民衆会議によって任命される特別公務員ではあっても、代議員ではないから、民衆会議の審議に参加する権利を持たない。

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