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世界共同体通覧―未来世界地図―[補訂版](連載第30回)

2024-05-27 | 世界共同体通覧―未来世界地図―[補訂版]

四 汎アフリカ‐南大西洋域圏

(11)スーダン

(ア)成立経緯
南スーダンが分離した後の主権国家スーダンを継承する連合領域圏。油田の存在をめぐり、南スーダンとの境界紛争が続いていたアビエイ地方は、世界共同体による石油管理体制の導入により南スーダンに包摂することで決着する。凄惨な内戦が続いたダルフール地方北部は世界共同体直轄自治圏に移行する。

(イ)社会経済状況
主権国家時代は内戦や民族紛争が打ち続き、遅れていた社会経済発展も、社会の安定化と持続可能的計画経済の導入により進む。領域の大半を砂漠が占める中、主軸となる農業はナイル河周辺に限定されていたが、持続可能的計画経済の下、耕作地の拡大や工場栽培の試行もなされる。エジプトとともにナイル流域評議会の主要メンバーとして、ナイル河の持続可能的な水利管理に取り組む。

(ウ)政治制度
ダルフール地方の北部を除き、主権国家時代の州を準領域圏とする連合民衆会議による統治となる。主権国家時代にはしばしばクーデターで政治介入し、長い軍事政権の歴史を形成した軍は、常備軍廃止を定める世界共同体憲章に基づき解体され、民衆会議制度による民主主義が定着する。

(エ)特記
アラブ系武装組織による非アラブ系民族浄化が起きていたダルフール地方でも特に非人道的な事態の中核となっていた同地方北部地域を分離して世界共同体直轄自治圏とし、世界共同体平和維持巡視隊が常駐する。

☆別の可能性
ダルフール問題が平和的に解決された場合、世共直轄自治圏は設定されず、ダルフール地方全体がスーダンに残留する可能性がある。

 

(12)環赤道‐中央アフリカ合同

(ア)成立経緯
アフリカ大陸の赤道周辺と内陸中部に位置する5つの領域圏と南大西洋上の離島領域圏サントメ・プリンシペが合同して成立する合同領域圏。ただし、カメルーンから南カメルーンが分立する。

(イ)構成領域圏
合同を構成する領域圏は、次の6圏である。いずれも統合領域圏である。

○中央アフリカ
主権国家中央アフリカを継承する領域圏。

○ガボン
旧主権国家ガボンを継承する領域圏。

○サントメ・プリンシペ
旧主権国家サントメ・プリンシペを継承する領域圏。

○赤道ギニア
旧主権国家赤道ギニアを継承する領域圏。

○カメルーン
主権国家カメルーンの仏語圏を継承する領域圏。

○南カメルーン
分離独立を求めていたカメルーンの英語圏地方が分立し成立する領域圏。

(ウ)社会経済状況
内戦による破綻を経験した中央アフリカを除けば、おおむね安定した主権国家時代の社会経済を基盤に、農業を軸とする合同共通の持続可能的計画経済が展開される。ガボンや赤道ギニア、カメルーンの経済基盤であった石油は世界共同体の管理下に移行する。

(エ)政治制度
合同領域圏は、各領域圏民衆会議から選出された同数の協議員から成る政策協議会を常設し、圏内重要課題を討議し、共通政策を協調して遂行する。多言語のため、合同公用語はエスペラント語。

(オ)特記
旧版では、サハラ砂漠周縁のサヘル地方の四領域圏を包摂した合同領域圏を想定していたが、サヘル地方は固有の特色と課題を持つため、サヘル合同領域圏(後述)として分立させた。

☆別の可能性
南カメルーンが分立せず、カメルーン内の準領域圏としてとどまり、カメルーンが複合領域圏となる可能性もある。

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弁証法の再生(連載第12回)

2024-05-24 | 弁証法の再生

Ⅳ 唯物弁証法の救出

(11)サルトルの実存的弁証法
 ルカーチが革命渦中の中東欧からソ連式の教条化された唯物弁証法を救出しようとしたのだとすれば、西欧から同じことを企図したのがジャン‐ポール・サルトルであったと言える。サルトルは、弁証法を実存主義の中に言わば投企するという大胆な試みに出た。というのも、人間の自覚存在を追求する唯心論的な実存主義と唯物弁証法は水と油のように感じられるからである。
 実際のところ、ルカーチも労働者階級が自らの社会的立場を自覚して階級意識に目覚め、主体性を取り戻すため団結して革命を導くべきことを説いたことで、弁証法に唯心論的な要素を取り込んでいたが、サルトルはより意識的にあえて唯心論を注入しようとしたとも言える。
 サルトルが主著のタイトルにも使用した「弁証法的理性」は、歴史を客観的事象として外から眺める分析的理性に対して、実践的に歴史のうちに自己を参入させることによってその意味を了解しようとする理性であり、そこから、彼はアンガージュマンという実践を自らにも課していった。
 とはいえ、ルカーチはハンガリー革命への参加というまさしく革命行動を実践したのに対して、サルトルのアンガージュマンはより漠然とした社会状況への参加という形で拡散しており、機会主義的で、半端な印象はぬぐえない。もちろん、そこには実際に革命的状況にあったハンガリーと、革命の波動がすでに過去のものとなっていたフランスとの状況的な相違があったこともたしかである。
 サルトルの実存的弁証法の基本定式は、ヘーゲル弁証法を下敷きに、即自⇒対自⇒対他という三段階を経て人間が他者との関わりの中で実存し、そこから社会参加へと止揚的に導かれる諸相を想定したものであり、人間の本来的な自由を強調するものであった点、革命的なフランス人権宣言の精神を弁証法に注入したとも言える。
 それは自由を体系的に抑圧するソ連体制の道具となっていた唯物弁証法を救出する手がかりにはなるであろうが、他方で、サルトルにおいて対自存在として把握される人間の本来的自由なるものは観念にすぎないとも言える。社会状況というものも、個人の意思では如何ともし難い構造—彼の言う「実践的惰性態」—と化しているとすれば、それをどう克服できるのか。
 サルトルによれば、そうした反弁証法的な実践的惰性態を乗り越えるべく、共通目標を目指す集団を形成し、階級闘争を含む共同実践を行うということがその回答であり、それを「構成された弁証法」と呼んでいる。言い換えれば、実存的弁証法ということであろう。
 ただ、ソ連と対峙する西欧での革命可能性が遠のいた晩年のサルトルは、生誕以前の歴史と生誕以後の履歴とによって予め有限的に狭められた選択肢を選択せざるを得ない人間は、自己という資質を抱え、それに抗いながら自由を発見するよりほかないという自由の本来的制約性を認めるようになった。これを実存的弁証法の敗北宣言とみるかどうかは、解釈の問題である。

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世界共同体通覧―未来世界地図―[補訂版](連載第29回)

2024-05-19 | 世界共同体通覧―未来世界地図―[補訂版]

四 汎アフリカ‐南大西洋域圏

(8)ソマリ合同

(ア)成立経緯
1990年代より内戦により分裂状態にあった旧主権国家ソマリアから分岐したソマリア、プントランド、ソマリランドの三つの分国がそれぞれ単独の領域圏として成立したうえ、合同して形成される合同領域圏

(イ)構成領域圏
合同を構成する領域圏は、次の3圏である。いずれも統合領域圏である。

○ソマリア
合同全体の南部に位置する領域圏。

プントランド
ソマリアから事実上分立していた北部プントランドを継承する領域圏。

○ソマリランド
合同全体の最北部に位置するソマリランドを継承する領域圏。合同全体の北部に位置する。

(ウ)社会経済状況
長期内戦で壊滅状態にあった経済が回復される。合同共通経済計画に基づく持続可能的農業畜産業が主軸となる。遠距離通信システムの発達基盤を継承し、アフリカにおける通信産業の中心ともなる。紅海での海賊活動も根絶される。

(エ)政治制度
合同領域圏は、各領域圏民衆会議から選出された同数の協議員から成る政策協議会を常設し、圏内重要課題を討議し、共通政策を協調して遂行する。政策協議会は、各領域圏の政治代表都市で交互に開催される。世界共同体と共同で、武装組織の武装解除・社会復帰の支援プログラムが運用される。

(オ)特記
旧版ではプントランドはソマリアと統一される形で2圏の合同としたが、プントランドの分立化状況に鑑み、別立てとした。

☆別の可能性
プントランドがソマリアと連合領域圏を形成する可能性もある。また、可能性としては極めて低いが、ソマリア全体が連合領域圏として再統一される可能性もなしとしない。

 

(9)エチオピア

(ア)成立経緯
主権国家エチオピアを継承して成立する連合領域圏

(イ)社会経済状況
豊富な水資源を利用しつつ、環境的持続可能性に配慮した計画的農業が成功し、アフリカにおけるモデル例となる。また水素自動車生産事業も軌道に乗り、汎アフリカ‐南大西洋領域圏全体での自動車生産の軸となる。

(ウ)政治制度
主権国家時代の州と自治区を基準とする準領域圏から成る連合領域圏で、連合民衆会議は共通に50人、さらに人口100万人ごとに10人を追加選出する独特の方式で抽選された代議員で構成される。

(エ)特記
1993年までは統一国家だった隣接のエリトリアとは個別に共通経済計画協定を締結し、合同経済計画会議が策定する共通経済計画の下に経済運営を行なう。

☆別の可能性
望ましくない可能性として、北部のティグライ州をはじめ、いくつかの州が分離独立し、連邦が内戦を経て事実上解体される可能性もある。その場合、ソマリと同様、改めて合同領域圏として再生することも想定できる。

(10)エリトリア

(ア)成立経緯
主権国家エリトリアを継承する統合領域圏

(イ)社会経済状況
小さな領域圏のため、自力経済に限界があり、上述のように、エチオピアとの共通経済計画が経済運営の柱となることから、経済的にはエチオピアと一体的となる。

(ウ)政治制度
主権国家時代の独裁政党は解体される。国外避難民を出す要因でもあった賦役的な国民皆兵制度も世界共同体憲章に基づく常備軍廃止に伴い、廃止される。

(エ)特記
南で隣接するジブチとの間で長年境界紛争を抱えていたが、ジブチが世界共同体直轄圏となることに伴い、係争地域をエリトリアとの共同管轄地域とすることで解決を見る。

☆別の可能性
可能性は低いが、エチオピアと再統一される可能性もなくはない。

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世界共同体通覧―未来世界地図―[補訂版](連載第28回)

2024-05-19 | 世界共同体通覧―未来世界地図―[補訂版]

四 汎アフリカ‐南大西洋域圏

(5)内陸南部アフリカ合同 

(ア)成立経緯
アフリカ南部の内陸諸国ボツワナ、ザンビア、ジンバブウェ、マラウィが合同して形成される合同領域圏南部アフリカ領域圏が招聘領域圏として参加する。

(イ)構成領域圏
合同を構成する領域圏は、次の4圏である。いずれも統合領域圏である。

○ザンビア
主権国家ザンビアを継承する領域圏。

○ボツワナ
主権国家ボツワナを継承する領域圏。

○ジンバブウェ
主権国家ジンバブウェを継承する領域圏。

○マラウィ
主権国家マラウィを継承する領域圏。

(ウ)社会経済状況
持続可能的農業を軸とした共通経済計画に基づいて経済協力がなされる。また野生動物保護に関する共通計画が実行される。ジンバブウェにおける白人所有土地の強制収用によって発生した農業危機も共産主義的な土地の無主物化と計画的な農地管理システムにより解消する。また、主権国家時代のジンバブウェにおけるハイパーインフレーションも、貨幣経済の廃止により終息する。

(エ)政治制度
合同領域圏は、各領域圏民衆会議から選出された同数の協議員から成る政策協議会を常設し、圏内重要課題を討議し、共通政策を協調して遂行する。政策協議会は、ボツワナのハボローネに置かれる。全領域圏が旧英国植民地のため、英語を合同公用語とする。

(オ)特記
招聘領域圏の南部アフリカ領域圏との間では、経済、社会サービス分野での相互協力協定が締結され、密接な関係となる。

☆別の可能性
可能性は高くないが、全体が英語圏のため、合同を超えて連合領域圏にまとまる可能性もなくはない。

 

(6)モザンビーク

(ア)成立経緯
主権国家モザンビークを継承する統合領域圏

(イ)社会経済状況
主産業となっていた鉱業が世界共同体の管理下に移行し、潜在的なポテンシャルを秘めていた持続可能的農業が発展する。課題であった衛生的な水へのアクセスは世界水資源機関との連携による給水システムの確立により実現する。

(ウ)政治制度
統合型領域圏として、民衆会議制度が導入される。独立戦争の中心を担った主権国家時代の支配政党・モザンビーク解放戦線は会議外でなお影響力を持つ。東アフリカ合同領域圏の招聘領域圏ともなる。

(エ)特記
旧版ではモザンビークを東アフリカ合同領域圏に包摂していたが、ポルトガル語圏で独自色も強いモザンビークは単立の領域圏とした。

☆別の可能性
モザンビークが東アフリカ合同領域圏に加入する可能性もなおなくはない。

 

(7)東アフリカ合同

(ア)成立経緯
主権国家自体に東アフリカ共同体を構成していた諸国のうち6か国が合同して成立する合同領域圏。ただし、旧ブルンディと旧ルワンダは統合して、ブルワンディとなる。

(イ)構成領域圏
合同を構成する領域圏は、次の5圏である。

○タンザニア
主権国家タンザニアを継承する連合領域圏。大陸部タンガニーカと島嶼部ザンジバルから成る連合領域圏である。

○ブルワンディ
民族構成が近い主権国家ブルンディとルワンダが統合して成立する連合領域圏

○ウガンダ
主権国家ウガンダを継承する統合領域圏

○南スーダン
主権国家南スーダンを継承する統合領域圏

○ケニア
主権国家ケニアを継承する統合領域圏

(ウ)社会経済状況
資本主義的発展を見せていたケニアと、内戦終結後にIT産業などで成長を見せていた旧ブルンディ(ブルワンディ)を中心に工業化も進展するが、持続可能的農業を軸とした共通経済計画に基づいて経済協力がなされる。野生動物保護に関する共通計画が実行される。

(エ)政治制度
合同領域圏は、各領域圏民衆会議から選出された同数の協議員から成る政策協議会を常設し、圏内重要課題を討議し、共通政策を協調して遂行する。政策協議会は、ブルワンディのキガリに置かれる。多言語のため、合同公用語はエスペラント語。

(オ)特記
主権国家時代には激しい内戦や残酷な独裁を経験した領域圏が多いことから、世界共同体平和理事会と連携する合同紛争調停機関を常設し、紛争の未然防止と早期解決を図るほか、合同人権監視機関を常設し、人権侵害への迅速な対応を図る。

☆別の可能性
ブルンディとルワンダが連合せず、それぞれ単立の領域圏となる可能性もある。また、モザンビークが合同に参加する可能性もなくはない。

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世界共同体通覧―未来世界地図―[補訂版](連載第27回)

2024-05-14 | 世界共同体通覧―未来世界地図―[補訂版]

四 汎アフリカ‐南大西洋域圏

(3)アンゴラ

(ア)成立経緯
主権国家アンゴラを基本的に継承する統合領域圏。ただし、隣接するコンゴに囲まれた旧飛地カビンダは世界共同体の飛地禁止ルールに基づき、後掲のニューコンゴに編入される。

(イ)社会経済状況
20世紀の独立戦争と独立後内戦を経た主権国家時代は石油とダイヤモンドを基盤に経済発展を見せていたが、石油やダイヤモンドは世界共同体の管理下に移されるため、コーヒーを中心とした農業生産が中心となる。環境的持続可能性に配慮した農業生産の多角化も推進される。恒常的なインフレーションによる世界一とされた物価高問題は、貨幣経済の廃止により解消される。

(ウ)政治制度
統合型領域圏として、民衆会議制度が導入される。独立戦争の中心を担った主権国家時代の支配政党・アンゴラ解放人民運動は会議外でなお影響力を持つ。

(エ)特記
独立闘争を支援した歴史のある隣接のナミビアとは緊密な社会経済協力関係を構築する。

☆別の可能性
人口が少ないナミビアと合同領域圏を形成する可能性もある。

 

(4)ニューコンゴ

(ア)成立経緯
隣接する別々の主権国家であったコンゴ民主共和国とコンゴ共和国が統合されて成立する単独の連合領域圏。上述のとおり、アンゴラの飛地カビンダも編入される。

(イ)社会経済状況
旧コンゴ民主共和国領域は有数の資源国であり、このことが長期に及ぶ内戦の元であったが、天然資源の管理が世界共同体に一元化されるため、こうした紛争鉱物経済は終焉する。一方で、旧コンゴ共和国領域では遅れていた鉱物資源の持続可能な開発が世界共同体により進められる。紛争要因の除去と両コンゴの統合により、農業生産力が高まり、アフリカ大陸有数の農業地域としてアフリカの食を支える。石油を主産業としたカビンダの状況もほぼ同様である。

(ウ)政治制度
旧コンゴ民主共和国の州、旧コンゴ共和国の地方とカビンダを準領域圏とする連合領域圏のため、連合民衆会議は各準領域圏から人口に比例した数の代議員で構成される。政治代表都市は旧コンゴ民主共和国首都キンシャサとコンゴ河を隔てた旧コンゴ共和国首都ブラザヴィルが統合されたコンゴ大都市圏。連合公用語はフランス語だが、カビンダのみはポルトガル語。

(エ)特記
旧コンゴ民主共和国領域圏では長年の内戦による武装勢力の乱立が生じていたため、世界共同体の関与のもと、武装解除と少年を含む戦闘員の社会復帰プログラムが進められる。

☆別の可能性
長年の別国状態を考慮し、より緩やかな合同領域圏の形態が選択される可能性もある。

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世界共同体通覧―未来世界地図―[補訂版](連載第26回)

2024-05-11 | 世界共同体通覧―未来世界地図―[補訂版]

四 汎アフリカ‐南大西洋域圏

汎アフリカ‐南大西洋域圏は、アフリカ大陸全域と南大西洋上の島嶼を包摂する汎域圏である。アフリカ大陸が東側で面するインド洋上のマダガスカル、コモロ、セーシェル、モーリシャスは主権国家時代はアフリカ連合に所属したが、世界共同体の下では、地政学上の変化に伴い、西方アジア‐インド洋域圏の環インド洋合同領域圏に加入することとなる。汎域圏全体の政治代表都市はナミビア領域圏のウィントフックに置かれる。

包摂領域圏:
南部アフリカ、ナミビア、アンゴラ、統一コンゴ内陸南部アフリカ合同、モザンビーク、東アフリカ合同ソマリ合同、エチオピア、エリトリアスーダン、環赤道‐中央アフリカ合同ナイジェリア合同、西岸アフリカ合同サヘル合同マグレブ合同、エジプト

 

(1)南部アフリカ

(ア)成立経緯
南アフリカ共和国と南アフリカの囲繞内陸国レソト、エスワティニの両王国が統合されたうえ、連合領域圏として成立する。「南部アフリカ」(Southern Africa)の新名称はレソト、エスワティニが連合に包摂されることから、旧南アフリカ(South Africa)と区別するため採用される。英領セントヘレナ・アセンションおよびトリスタンダクーニャを分立・編入した南大西洋諸島自治域を含む。

(イ)社会経済状況
旧南アフリカ領域の豊富な天然資源は世界共同体の管理下に移行したが、旧南アフリカ共和国時代におけるアフリカ随一の工業生産力は維持される。特に自動車生産では、汎アフリカ‐南大西洋圏の中核を担う。農業生産でも、アフリカ随一のトーモロコシを中心に多角的な生産が行なわれる。白人支配人種隔離体制アパルトヘイトの廃止後、長く懸案となっていた白人による農地専有問題は、一元的な農業生産機構農場への転換により解決する。貨幣経済の廃止により、構造的な貧困問題は解消する。また、南ア経済に依存していたレソトとエスワティニは、南部アフリカへの完全な統合により、貧困な小国経済を脱する。

(ウ)政治制度
連合民衆会議は、旧南アフリカ共和国の各州を継承する準領域圏に包摂準領域圏となるレソト、エスワティニ、さらに準領域圏と同等の地域を持つ南大西洋諸島自治域を加えた準領域圏から同数選出された代議員から成る。アパルトヘイト廃止後の南アフリカで圧倒的な与党の座にあったアフリカ民族会議は政党をベースとしない民衆会議制下では支配権を持たないが、会議外での影響力は残る。レソトとエスワティニの王制は廃止されるが、各準領域圏の文化的象徴としての王室は存続する。多言語のため、連合公用語はエスペラント語。

(エ)特記
南部アフリカ最大都市のヨハネスブルグには世界共同体本部が置かれ、南部アフリカは世界共同体の中核的存在となる。

☆別の可能性
小国ながら独自色の強いレソトとエスワティニが南部アフリカに包摂されず、それぞれ単立領域圏として合同を形成する可能性もなくはない。

(2)ナミビア

(ア)成立経緯
主権国家ナミビアを継承する統合領域圏。

(イ)社会経済状況
主軸産業であった鉱業は世界共同体の管轄したに移行するため、牧畜が主産業となる。南部アフリカ経済への依存度が高く、南部アフリカとは経済協力協定を締結する。貨幣経済の廃止に伴い、人種間経済格差は解消される。

(ウ)政治制度
統合領域圏のため、一元的な民衆会議制による統治となる。独立闘争の中心組織で、独立後も優位政党であった南西アフリカ人民機構は政党をベースとしない民衆会議制下では支配権を持たないが、会議外での影響力は残る。なお、ナミビアの政治代表都市ウィントフックは汎アフリカ‐インド洋域圏全体の政治代表都市であると同時に、世界共同体の内部機関である世界天然資源計画と専門機関である世界野生生物保護機関の本部が置かれる。

(エ)特記
旧版では南部アフリカに包摂していたが、白人支配時代の南アフリカによる不法占領状態から闘争により独立した歴史に鑑み、単立の領域圏とした。

☆別の可能性
ナミビアが南部アフリカに包摂される可能性、または政治的な結びつきが強い隣接のアンゴラと合同を形成する可能性もなくはない。

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弁証法の再生(連載第11回)

2024-05-09 | 弁証法の再生

Ⅳ 唯物弁証法の救出

(10)ルカーチの物象化論
 マルクスの唯物弁証法がスターリン時代のソ連の公式教義の中ですっかり教条化していく中、唯物弁証法を救出しようとする試みが、ソ連の外部で行なわれる。その代表的な一つが、ハンガリー人ルカーチ・ジェルジの試みである。
 ルカーチは、弁証法の教条化の要因をマルクスの遺稿整理者エンゲルスに突き止めている。ルカーチによれば、エンゲルスは最も本質的な相互作用である歴史過程における主体と客体の弁証法的関係に目を向けず、これを自然の認識にまで不当に拡大適用しようとしたことに問題がある。
 弁証法の真骨頂は具体的かつ歴史的なものにこそあり、その意味で弁証法的方法論の適用範囲は歴史的・社会的な現実に限られる。そうした具体的・歴史的弁証法の任務は、社会の総体性を把握するための方法論であるというのが、ルカーチの趣意である。
 逆に、総体性の認識を欠落することが物象化である。すなわち、主体と客体の分裂、部分と全体の分離、理論と実践の乖離といった情況であり、現実の状況としては労働者階級が主体性を喪失し、自己を疎外して客体と化すことである。
 このような主体‐客体の分裂の止揚に力点を置くルカーチの理解は、唯物弁証法を再びヘーゲル弁証法に立ち戻って再構しようとする試みと言える。事実、ルカーチは『モーゼス・ヘスと観念弁証法の諸問題』という論文の中で、マルクス弁証法をヘーゲル弁証法の延長に位置づけ直そうとしている。
 しかし、こうしたルカーチの試みはモスクワの代弁者たちからは睨まれる結果となった。ハンガリー共産党員で、短命に終わったハンガリー革命政権で閣僚も務めた彼は党内で強い批判を受け、コミンテルンでも非難された。そのときルカーチが浴びた非難は、「観念論的逸脱」というものだった。
 しかし、この非難は的外れであった。彼が「観念論」と非難されたのは、資本主義社会で客体化という自己疎外状況に立たされている労働者階級が自らの社会的立場を自覚して階級意識に目覚め、主体性を取り戻すため団結して革命を導くべきことを説いたためである。
 たしかに、こうした労働者階級の階級意識を強調する仕方は、唯心論的な趣向を帯びてはいるが、ルカーチの力点は主体と客体の分裂の止揚という一点にあったのであり、意識の問題を特大強調したかったわけではない。実際、上掲論文は青年ヘーゲル派代表者ヘスの弁証法を観念弁証法として退けている。
 ただ、ルカーチの総体性は、資本主義社会という人類史的過程の全体の一部に集中しており、より広汎な「文明」という総体性には十分着目してしなかったように思われる。そうした文明総体の弁証法的把握は、革命が挫折した戦間期ドイツ哲学界から現れる。

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世界共同体通覧―未来世界地図―[補訂版](連載第25回)

2024-05-07 | 世界共同体通覧―未来世界地図―[補訂版]

三 汎アメリカ‐カリブ域圏

(15)チリ

(ア)成立経緯
チリ共和国を継承する統合領域圏。ただし、南太平洋上の離島領イースター島(ラパ・ヌイ)は分立し、遠ポリネシア領域圏に包摂される。アンデス合同領域圏の招聘領域圏でもある。

(イ)社会経済状況
主産業であった銅を中心とする鉱業は世界共同体の管轄下に移される一方、環境的に持続可能的な農業林水産業が発展し、南米における一つのモデルとなる。資本主義的経済成長下で拡大した経済格差は貨幣経済の廃止により解消される。

(ウ)政治制度
統合領域圏であるため、一元的な全土民衆会議による統治体制となる。マプチェ族を中心とした先住民族も先住民自治体を形成し、連合に代表を送る。20世紀に大量人権侵害の猛威を振るった軍事政権を形成した軍は、世界共同体の軍備廃絶規定によって廃止される。

(エ)特記
旧版ではアンデス合同領域圏に包摂していたが、アンデス合同領域圏の基礎でもあるアンデス共同体を脱退したチリは独自性が強く、単立の領域圏とした。

☆別の可能性
可能性としては高くないが、アンデス合同領域圏に加入する可能性もなくはない。

 

(16)ラプラタ

(ア)成立経緯
主権国家時のアルゼンチンとウルグアイが合併する形で結成される連合領域圏。ラプラタの名は、支流を含め、領域圏を貫流する大河であるラプラタ河にちなむ。

(イ)経済社会状況
アルゼンチンの工業力を継承しつつ、持続可能的な農牧業も統合される。社会的にはウルグアイの進歩性が領域全体に浸透する。アルゼンチンがたびたび経験したデフォルト経済破綻や資本主義的経済成長下での貧困問題は、貨幣経済の廃止により解消される。

(ウ)政治制度
連合民衆会議は元来から連邦制だったアルゼンチンの州と集権制のウルグアイの県が合併整理のうえ再編された準領域圏から同数選出された代議員で構成される。マプチェ族を中心とした先住民族も先住民自治体を形成し、連合に代表を送る。政治代表都市はブエノスアイレス。両国で20世紀に大量人権侵害の猛威を振るった軍事政権を形成した軍は、世界共同体憲章の軍備廃絶規定によって廃止される。

(エ)特記
ブエノスアイレスには世界共同体の人権司法機関である人権審査院が常設され、世界の人権保障の中心となる。

☆別の可能性
ウルグアイが連合せず、単立の領域圏となる可能性もなる。

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世界共同体通覧―未来世界地図―[補訂版](連載第24回)

2024-05-03 | 世界共同体通覧―未来世界地図―[補訂版]

三 汎アメリカ‐カリブ域圏

(13)パラグアイ

(ア)成立経緯
主権国家パラグアイを継承する統合領域圏

(イ)社会経済状況
南米の貧困国であったが、貨幣経済経済の廃止により貧困問題は解決する。計画経済により、持続可能的な農牧業が導入される。主産物の大豆は、代替肉の普及により、その原材料供給の中心地となる。

(ウ)政治制度
統合領域圏として一元的な民衆会議によって運営されるが、長く圧倒的な優位政党であったコロラド党の影響は民衆会議外で残る。

(エ)特記
旧版では、アルゼンチンやウルグアイとともにラプラタ連合領域圏(後述)に包摂していたが、パラグアイはラプラタ河流域から外れており、民族的にも先住民系グアラニ人の割合が高いなど独自性が強いため、単立の領域圏とした。

☆別の可能性
可能性としては高くないが、隣接するアンデス合同領域圏に加入する可能性もなくはない。

 

(14)アンデス

(ア)成立経緯
アンデス山脈を共有し合う旧アンデス共同体の加盟四か国を継承する形で結成される合同領域圏。ベネズエラとチリも招聘領域圏として参加する。

(イ)構成領域圏
合同を構成する領域圏は、次の4圏である。いずれも統合領域圏である。

○コロンビア
コロンビア共和国を継承する領域圏。

○エクアドル
エクアドル共和国を継承する領域圏。

○ボリビア
ボリビア多民族国を継承する領域圏。

○ペルー
ペルー共和国を継承する領域圏。

(ウ)社会経済状況
共和国時代の各領域圏に跋扈した強力な麻薬密輸組織は貨幣経済の廃止に伴い、自然消滅する。貧農が依存していたコカ栽培からも脱却し、持続可能的な健全農業が導入される。エクアドルやペルーの鉱業はいずれも世界共同体管理下へ移行する。

(エ)政治制度
合同領域圏は、各領域圏民衆会議から選出された同数の評議員から成る政策協議会を常設し、圏内重要課題を討議、共通政策を協調して遂行する。招聘領域圏のベネズエラも、オブザーバーを派遣する。合同を形成する4領域圏それぞれの先住民の利益を横断的に代表するアンデス先住民会議が設置され、政策協議会にも代表者を送る。

(オ)特記
旧インカ帝国の勢力圏と重なるため、遺跡保存の共同プログラムが策定され、合同のインカ考古センターが設置される。これにはチリも参加する。

☆別の可能性
かつてアンデス共同体加盟国であったチリが加入する可能性もある。

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