ザ・コミュニスト

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年頭雑感1990

1990-01-01 | 年頭雑感

昨年は戦後史上の激動の年だった。何と言っても、東欧での民主化革命が進行する中、11月に冷戦を象徴するベルリンの壁が撤去され、年末の締めくくりに、米ソ両首脳によって冷戦の終結が正式に宣言されたことは、1945年の第二次世界大戦の終結に匹敵する時代の画期点であった。

奇しくも、日本でも昭和天皇の死去により、最長の元号・昭和の時代が終幕した。大戦とその後の冷戦の時代を通して臨在してきた長命の天皇の死は、戦後日本の時代的な転換点を示すものである。

ついでに言えば、冷戦晩期の1979年のイラン革命を指導したイランの最高指導者ホメイニ氏も、昨年死去した。革命後、新たなイスラーム反米主義の砦を築き、冷戦に風穴を開けたホメイニ師の死去も、冷戦終結と軌を一にしたのは興味深い。

他方、中国では東欧の民主改革に呼応する学生らの運動の高揚に対して、軍が出動してこれを武力鎮圧する強硬措置が取られた。冷戦時代、第三極を形成してきた中国も長命の指導者・鄧小平氏が率いるが、彼は改革開放を掲げつつ、政治的には共産党支配体制を護持する姿勢を示したと言える。

今年以降はポスト冷戦時代という新時代を迎えることになるが、これからどんな世界になるのか。予断は許さないし、それを明確に構想できるほどには知的に成熟してもいない。

ただ、戦争を知らず、生まれた時は冷戦時代真っ只中だった一世代の民草としては、流血の戦争も一触即発の冷戦もない、カントが構想したような恒久平和の理想が実現されることを願う。「平成」という新元号に、そのような願望を込めるのは読み込み過ぎであろうか。

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