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改憲―早期の国民投票を

2016-07-14 | 時評

先般の参議院選挙によって、戦後初めて与野党改憲勢力が衆参両院で三分の二に達した。これにより、数字上は憲法上の改憲発議の要件をクリアすることとなった。これは当面は数字問題だが、長い目で見れば日本の戦後史における画期点である。

選挙では改憲問題の争点化を極力避けた政権与党であるが、三分の二クリアという結果に内心色めき立っているのは間違いない。今後、政権与党がどのような政略に出るかは予断を許さないが、改憲本丸の9条をさしあたり避けて、緊急事態条項とか、プライバシー権・環境権条項の創設などを先行させる迂回戦術を採る可能性が高い。

改憲勢力が9条改憲に不自然なほど慎重なのは、世論調査を見る限り、国民の間に依然9条護持論が少なくないことを懸念しているせいだろう。また昨年新たな「解釈改憲」によって「限定的な」集団的自衛権を解禁したことで、それ以上の拡大につながる9条改憲を言い出しにくくなっているという皮肉な自縛もあるかもしれない。

そこで、迂回戦術によって時間稼ぎし、9条を除外した「お試し改憲」をする。その間に世論工作を展開して9条改憲論を高めたところで、最終的な本丸の国民投票に持ち込もうとの算段が透けて見える。

しかし、世論工作によって一定の結論が作られている問題を国民投票にかけるのは、民主的な国民投票ではなく、ある種の喝采政治、独裁の手段である。国民投票は国論が二分されるような争点について、あえて国民が直接に決断するときに初めて民主的な意義を発揮する。

他方、護憲勢力も、9条問題を国民投票で決着させることを臆するべきではないと思う。議論が煮詰まっていないという反論もあるが、煮詰まっていないのは、9条以外の条項に関する改憲議論のほうであって、9条に関しては論争の歴史は長く、まさに現行憲法制定時から半世紀以上論争が続いてきた。

通常、改憲問題と言えば9条問題を指すほど、9条改憲論/護憲論それぞれの議論のアウトラインはすでに出揃っており、あとは最終的な総括論議のみという段階に来ている。拙連載「9条安全保障論」も、そうした総括論議の材料の一つと認識している。

世論調査上は「安倍政権下での改憲に反対」という微妙な条件付き護憲論も根強いようだが、先送りすればするほど、先の迂回戦術に乗せられて、かえって国民投票結果が操作される危険もあることが懸念されるのである。そうならないためにも、あえて安倍政権下で9条問題に決着をつけたほうがよいと思われる。

決めるのは、有権者国民である。護憲派なら反対票を投ずればよいだけである。結果として、賛成多数でいよいよ改憲となったら、多数決に従って新憲法下で生きるか、あるいは信念を貫き、軍隊のない外国に移住・帰化するか自己決定しよう。

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