【岩崎俊夫BLOG】社会統計学論文ARCHIVES

社会統計学分野の旧い論文の要約が日課です。

時々、読書、旅、散策、映画・音楽等の鑑賞、料理とお酒で一息つきます。

ダンサー(Dancers)ハーバート・ロス監督、アメリカ、1987年

2017-09-29 23:37:42 | 映画

                

 
一言でいえばこの映画は、バレエ映画の主役トニー・セルゲエフ(ミハイル・バリシニコフ)と彼を取巻く女性たちに焦点を絞り、練習段階から本番にいたる経過をモチーフに描いた作品である。バレエは「ジゼル」。ジゼルを踊るのは彼の恋人だったフランチェスカ。アルブレヒト役はトニーである。森の女王役はナディン。映画撮影はローマという設定で、映画出演のためにリサ・ストラッサー(ジュリー・ケント)が現地入りするシーンでこの映画は始まる。

 トニーはバレエに行き詰まり、情熱を失いかけていた。友人にそのことを指摘された、「踊りに情熱がない、空っぽだ、何年もたつのになぜか成長が感じられない、ただのプロだ」と。彼自身も「踊っていて火花を感じない、情熱を取り戻したいのに消えてしまった」と思っていた。撮影のために練習していたが、役に感情移入できないことを悩んでいた。トニーは女性関係がだらしなかった。ジゼル役のフランチェスカとは恋人関係であったが、最近はしっくりいっていなかった。ナディンとも関係があり、彼女はトニーを今ではよく思っていない。またスポンサーとしてついているパディオ伯爵夫人との噂も絶えなかった。

 そこに村娘役で来たのがリサであった。リサはローマ入りの日に迎えに来たパオロにつきまとわられ、適当に相手をしていたが、内心そのしつこさに閉口していた。トニーはリサに近づき、しだいに好感をもち「一緒にいると心が落ち着く」と思うようになる。散歩しながらトニーは心を打ち明けた「子どもの頃、夏を田舎で過ごした。家の側に白樺の林があった。どこまでも高く、よりそうようであり、真っ白で色白の美しい女たちを見るようだった。…君を見てぼくは思いだした。すらりと伸びた白い木を」と。リサはトニーが偉大な芸術家なので、最初は遠くから憧れて見ていたが、トニーに散歩やドライブに誘われ、自分を「ただの男だと思ってくれ」と言う言葉に安堵感を覚えた。しかし、リサはナディンと楽屋で一緒になったとき、トニーが誰にでも「君と一緒にいると心が休まる」「君は白い木に似ている」と言っていたことを聞かされ、ショックを受けた。

 撮影本番の舞台。「ジゼル」のバレエが演じられた。村娘役で出演したリサは先のショックで心の動揺を抑えきれず、自分の出番が終わると撮影場所から逃げ去ってしまった。気がついたトニーは捜しに後を追ったが見つからない。トニーは「ジゼル」を最後まで踊り、楽屋に戻って来たリサは舞台を最後まで見た。撮影終了後、「今の舞台、すばらしかった。自分が何か特別に思えた。あなたにはそういう力がある」とトニーに話しかけるリサ。トニーは「急にいなくなって死ぬほど心配した、一体どこへ行ってたんだ」と応えた。

 この映画のストーリーは起伏がなく、物足りないが、終盤、アルブレヒト役のミハイル・バリシニコフ、ジゼル役のアレッサンドラ・フェリ、女王役のレエスリー・ブラウンが踊りをたっぷりと披露しているので、バレエ映画として楽しめば好いのではないだろうか。また、練習風景で登場人物の解釈や演技の仕方などで役者たちが意見をぶつけ合うシーンが何箇所か出てくる(ジゼルの母親役を演じるムリエルがトニーと、母親が狂っているかどうかで、意見を交わす場面など)が、役者たちがしのぎを削って作品を完成させていく過程がみえて興味深かった。


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