【岩崎俊夫BLOG】社会統計学論文ARCHIVES

社会統計学分野の旧い論文の要約が日課です。

時々、読書、旅、散策、映画・音楽等の鑑賞、料理とお酒で一息つきます。

内田康夫『小樽殺人事件』光文社、1989年

2013-12-26 20:10:50 | 小説

              

 ある広告代理店の依頼で小樽に取材旅行に行くことになった浅見光彦。運の悪いことに、薄明の小樽港に船が入ったところで女性の漂流死体に遭遇する。


 女性は勝子という小山内家の人間だった。幕末の頃、蝦夷の開拓のために渡った豪族の末裔である小山内家は小樽では有数の旧家で、かつては大尽といわれたほどの素封家だった。いまではかつての威容はなく、長男章一が跡をついで何とかしのでいるありさまだった。この長男の姉が高島勝子でなかなかのヤリ手で、忍路にクラブをもっていた。章一の妻淑江はわけあって(落ちぶれた津田家を救うために)、本州からここに嫁いできた(勝子は淑江の義理の姉にあたる)。

 その淑江は、事情があってかなり年齢の離れたOLの麻衣子を小樽に誘う。息抜きの休暇とおもって飛んできた麻衣子だったが、この殺人事件に巻き込まれ、足止めをくう。さらに勝子の妹俊子が自分の部屋で不審な縊死。勝子、俊子二人の死亡現場には、謎の黒アゲハチョウがそえられていた。

 蝶の謎を究明するために光彦と麻衣子は信州・安曇野へ赴く。そこで二人は、淑江のかつての恋人の写真を手にし、彼が自殺していたことを知る。いったい何があったのだろうか。淑江のいまは行方不明の夫、勝子の愛人が絡んで、真相はなかなか見えてこない。地元警察の捜査も暗礁にのりあげ、手をこまねいていたが、光彦は独自の推理を働かせ、聞き取り調査で裏付けをとっていく。その結末は。殺人犯は意外な人物だった。