「書物にも雄と雌がある」というのが持論だった母方の祖父・深井與次郎。
書物蒐集癖のあった與次郎の家には、たくさんの本があったが、本棚の本の位置を動かしてはいけない、本同士が勝手に交接して新たな子である本を生み出すという、與次郎。そうして生まれた本のことを幻書と呼んでいた。
九歳の夏、祖父の家に遊びに出かけた土井博は、うっかり違う棚に本を仕舞ってしまい、本が飛び回る光景に遭遇することに……それが祖父のいっていたことだったのだった。
與次郎にはライバルであった、鶴山釈苦利がいた。<幻想の書誌学>という幻書についての本を著した人物で、與次郎が妻である画家・米倉幹と知り合ったのもまた、彼がきっかけだった……
語り手である平凡な男・土井博が、自分の息子・恵太郎に、母方の祖父で、恵太郎には曾祖父にあたる深井與次郎の生い立ちやその人生、家族、妻とのエピソード、そしてに幻書について語るという形式で描かれたお話。あらすじにしにくいのですが、一言でいうなら、一族と本のファンタジー?
冗長な上、話があちこちに飛ぶので、前半はだいぶ掴みにくい内容でしたが、全体像がわかってきたら、俄然面白く読めました。
そして最後に表紙を見返した時に、ここに全部集約されていたのだなぁと、しみじみ思ったのでした(笑)。
<12/12/25~27>