黒猫書房書庫

スイーツ多めな日々です…。ブログはちょー停滞中(´-ω-`)

『江神二郎の洞察』有栖川有栖(東京創元社)

2012-12-03 | 読了本(小説、エッセイ等)
四月。英都大学に入学した有栖川有栖は、中井英夫の『虚無への供物』を拾ったのがきっかけで、四回生の江神二郎と知り合い、彼が所属する推理小説研究会(EMC)に入会した。メンバーは他に、二回生の望月周平と織田光次郎の二人。
ある日、望月が下宿・瑠璃荘で起こった盗難事件の嫌疑をかけられた。隣の部屋の住人・門倉恒二がサークルの先輩から借りた講義ノートが消えたという。
入居者はすべて同じ大学に通う四人だが、事件が発生した時、下宿にいたのは望月と門倉の二人だけ。切れかけだったトイレの電球の交換のタイミングにより犯行時間帯が特定され、それぞれのアリバイが存在していて……『瑠璃荘事件』、
交差点でみかけた顔見知りの女性に声をかけたアリスだったが、彼女に無視されてしまう。一緒にいた江神に、彼女のことを説明。三、四回会っただけだが、声はきいたことがない彼女。
五月の中頃、<マシン・ヘッド>というハードロックラバーズオンリーを謳っている音楽喫茶の店員で……『ハードロック・ラバーズ・オンリー』、
雑貨店を営む望月の母の勧めにより、一九八八年度第一次合宿と称して、望月の実家のある南部という町へやってきたEMCの面々。たまたまそこへ、鉄道事故があったと隣人である新聞記者・滝目が報せにやってきた。
被害者は運送会社を営む桑佐亮介という男性。線路の上に寝ころんでいた為、自殺かと思われたが、どうやら轢断される前に亡くなっていたらしい。
そんな彼の自宅には、遺書めいた文書が残されていて……『やけた線路の上の死体』、
秋。矢吹山での事件の後。部室に、推理小説研究会の創立メンバー・石黒操がやってきた。
二年前に卒業した彼は現在フリーランスのライターをしているという。そんな彼が江神のもとに持ってきた相談事は、九年前、自殺を遂げた宮野青葉という、今は亡き少女が、オフィーリアの如く川に浮かぶ写真。
石黒の同郷の友人・穂積が体を壊して入院。その世話の為、鍵を預かり部屋に出入りするようになった石黒は、ひょんなことからその写真を見つけたという。穂積は何故その写真を持っていたのか……『桜川のオフィーリア』、
十月。江神の部屋で無為の会を催すことになったのだが、うっかり頼まれていた家庭教師の話を忘れていたアリスは、詫びの電話を入れようと、公衆電話へ。
そこで「四分間しかないので急いで。靴も忘れずに」という謎の言葉を耳にする。その言葉について、あれこれ推理を繰り広げる面々……『四分間では短すぎる』、
十一月。織田が下宿している大家から聞いた怪談話。
大家の従兄弟・花沢伍一がやっていた花沢医院を、二年前のリタイアを機に売却。しかしいろいろ話がもめて、建物が放置されているのだが、そこに幽霊が出るという噂があるという。
<開かずの間>から出てくるという幽霊の実地調査に出かけた面々は……『開かずの間の怪』、
望月と織田が所属するゼミのコンパがあり、流れで酒巻駿教授の自宅へ行くことになった二人。
ところがその翌日、教授からあるFAXを見せられた……「絵は預かった。身代金として使い古しの札で千円用意しろ」と。どうやら盗まれたのは、教授の叔父である酒巻翔が描いた<白い横顔>という作品。
望月たちがいた時に、酒巻家に来ていた教授の弟・聡が犯人らしいのだがどうやって絵を持ち出したのか……『二十世紀的誘拐』、
天皇の病状が日々報道される年末。昭和最後になるであろう大晦日を、江神の下宿でともに過ごすことになったアリス。
あれこれ語る中で、かつて望月が書いたという駄作『仰天荘殺人事件』について話すふたり……『除夜を歩く』、
春。新学期を迎え、新たな学年になったアリスたち。
ひょんなことから、アリスと同じ学年で顔見知りの有馬麻里亜が、ミステリ好きだと判明。メンバーに加わるという話が持ち上がる。
そんな中、文誠堂という古書店の主人・溝口が、学生たちに奢ったり本をタダでくれたりと妙に気前が良く、おかしい行動をしているという……『蕩尽に関する一考察』の9編収録。

アリス<学生編>シリーズ短編集。アリスのEMC加入からマリアが入るまでの1年のエピソード。
雑誌等掲載時に読んでいるものもありますが、久々に江神さんを満喫~♪

<12/12/1~3>