黒猫書房書庫

スイーツ多めな日々です…。ブログはちょー停滞中(´-ω-`)

『真夜中のパン屋さん 午前0時のレシピ』大沼紀子(ポプラ社)

2011-08-09 | 読了本(小説、エッセイ等)
都会の片隅に、真夜中…23時から29時…に営業しているパン屋がある。
<Boulangerie Kurebayashi(ブランジェリー・クレバヤシ)>というその店を営むのは、二人の男……人の良さそうなオーナー・暮林陽介と、愛想はないがイケメンのパン職人・柳弘基。
半月前に開店したばかりのその店に“暮林美和子”という女性を訪ねてやってきた、ひとりの女子高生・篠崎希実。
曰く、美和子は彼女の腹違いの姉であるという。美和子は暮林の妻だったが、半年前、台風で飛んできたトタン屋根にぶつかり亡くなっていて……“Open”、
昔から、他人に娘を託していなくなることの多かった、希実の母。希実の幼馴染の三木涼香曰く、カッコウの託卵のよう。そんな環境の中で、堅実でまともな人生を送ろうと日々努力する希実。
ところがエイプリールフールの朝。置き手紙を残して、母は荷物とともに姿を消した。おまけに部屋も解約されてしまい、手紙にあった腹違いの姉の元に向かったが、彼女は既に亡くなっていた。
やむを得ずパン屋に居候することになった希実だったが、学校では母のことが起因し、いじめの対象となっていた……“Fraisage 材料を混ぜ合わせる”、
二年生に進級して、一ヶ月弱。店の手伝いをするようになった希実。
そこへ、ひとりの少年が現われ、パンを抱えて逃走。追いかけた希実が、彼の母にその事実を告げると、彼女は謝り倒し、迷惑料も含めてパン代以上の1万円を手渡す。暮林にその旨を告げたが、彼はおつりを彼女に渡してくるようにという。
そこで、件の少年・水野こだまに再び会うが、家には鍵が掛かっており、雨の中、家には入れないとのことで、こだまを店に連れ帰った希実。それからたびたび店に顔を出すようになったこだまは、“織絵ちゃん”が好きなチョコクロワッサン作りに精を出す。
そんな中、こだまが転んで、骨にひびが……“Petrissage&Pointage 生地捏ね&第一次発酵”、
店では二週間ほど前からパンの配達を始めた。
脚本家・斑目裕也はお得意さんだが、たびたび視線を感じて悪寒がするため、気が乗らない希実。
そんな中、猫を追い、勝手に部屋に入り込んだこだまのせいで、部屋に置かれた望遠鏡を目撃、彼の趣味が覗きだと知ることになってしまう。その場では口止めされるが、結局自分で店にバラシにやってきた斑目。
彼が覗いているのは、ひとりの女性。以前ストーカーをして接近禁止令が出ているので、近づけないという。
そんな彼女が薬の摂取過剰で一大事に。しかし近づくことができない斑目から、部屋に様子を見に行って欲しいとSOSが……“Division&Detente 分割&ベンチタイム”、
かれこれ十五年もニューハーフを続けているソフィア。不景気な中、頑張っていたが、店の女の子に売上を持ち逃げされ、閉店を余儀なくされ、ホームレス生活中。猫のミケを自称する女性とダンボールハウスで同居中。
そんな中10%オフのパン屋のチラシもらって、出かけてみることにしたソフィア。
一方、斑目が水野家の事情を調べてきた。こだまの母もまた、いろいろな問題を抱えている様子。
そんな中、こだまの担任が家庭訪問にやってくることになり、希実に母親役をやって欲しいと頼んでくるが、年齢的に騙すのには無理が。そこへちょうどやってきたソフィアに頼むことになり……“Faconnage&Appret 成形&第二次発酵”、
中学時代、家庭教師だった久瀬美和子にパンで餌付けされた弘基。彼女を運命の相手だと思い込み、告白するも、勘違いされ(婉曲な意味をそのまま受け取られた)、おまけに学生時代から付き合っていたという暮林と結婚されてしまう。
それでも暮林は海外赴任中で、日本にいないことから、淡い期待を抱いていたが、彼女はあっけなく天に召されてしまい、何の因果か暮林と一緒に店をすることに。
こだまの母が、夢違観音にいたと斑目が知らせてきて……“Coupe クープ”、
陽介は、大学時代に知り合った美和子と結婚した。卒業後、シンクタンクに就職し、海外で仕事をしていた彼。結婚しながらも、美和子とはずっと別居生活。生前パン屋を始めようと思うと言っていた彼女の遺志を継ぎ、店を始めた。
美和子の父は二十年前に亡くなり、血の繋がりはないのだが、希実と美和子はどこか似ていた。
こだまが置き手紙を残して姿を消したと織江が知らせに……“Cuisson avec buee 焼成”を収録。

真夜中に営業しているパン屋さんを舞台にした、ほろ苦ながらもハートウォーミングなお話。
本屋さんで、表紙・タイトルを見て、気になっていたのですが、(1作目の『ゆくとしくるとし』を読んで、気になっていた)大沼さんでした(3作目ですが、いつの間にか2作目も出てた模様…/笑)。
壊れた親子関係を中心に、いろいろ心に屈託を抱えている人々の再生がメインテーマっぽい。
真夜中に営業している意味がちょっと、不明ですが…;

<11/8/9>