『憧憬☆カトマンズ』宮木あや子（日本経済新聞出版社）

おバカで有名なユーラシア大学を卒業し、派遣社員として外資系IT企業・シマカンドのコールセンターで働く後藤は29歳。
出入りの多い職場だが、気にせず受け流す能力に長けている彼女は、いつの間にかベテランの域に。
親友の中尾ちゃんといつまでもバカ話で盛り上がったり、職場では妻子持ちの上司・佐野と不倫したり、会社からは正社員にならないかと誘われたり。
そんな後藤の前に現れたのは、自分も好きなミュージシャンのレアなTシャツを着ている新人・山内。だんだん彼の存在が気になり始めるが……『憧憬☆カトマンズ』、
人材派遣会社で働く後藤の親友・中尾。派遣先を辞めたいという女の子・橋野を、契約期間までなんとかとかつなぎ止めようとするも、橋野は部屋のドアに、自分を見つめなおすためにハワイに行くという置き手紙を残して、姿を消してしまった。
中尾の後輩のオシャレ男子・村内君は、橋野が派遣されていた入木田興業のスタッフが、やたらと入れ替わっている事実を突き止めてきて……『脳膜☆サラマンダー』、
なかなか進まない中尾と村内の関係を進展させようと、後藤が山内を連れ、一緒ににスキー場に行こうと提案。
雪山に向け、走っている最中に事故に遭遇。おまけに中尾は体調を崩し倒れてしまう……『豪雪☆オシャマンベ』、
後藤の後輩、松田リカ26歳。後藤への“パリに留学してパティシエになりたい”との発言から、パティというあだ名で呼ばれることになった彼女は、イマドキな可愛い女子を気取りながらも、本心では自分探しには興味はなく、自分を磨くならまず、目の前にある仕事の技を磨け、と思ってる下町の鯛焼き屋の娘で、実は甘いものは大嫌い。
ある時事故に遭いそうなところを、店の常連の外国人力士・南国に助けられたのがきっかけで、相撲に興味を持って……『両国☆ポリネシアン』の4編収録。

アラサー女子のハッピーストーリー連作。底抜けに陽気な部類の宮木作品。
憧憬～の後藤ちゃんと脳膜～の中尾ちゃんは親友で、それぞれの視点でのお話で、豪雪～はその二組のカップルが一緒に旅行に行く話。両国～は、後藤ちゃんの後輩のパティの話（番外…という割には一番長い？）。
……最初読みながら、何かデジャブ…と思いましたが『29歳』（※アンソロジー）に収録されてましたね（笑）。
そして、これが『日本経済新聞社』から出てるのが妙におかしい…（笑）。

<11/8/4>