黒猫書房書庫

スイーツ多めな日々です…。ブログはちょー停滞中(´-ω-`)

『生霊の如き重るもの』三津田信三(講談社)

2011-08-03 | 読了本(小説、エッセイ等)
大学の恩師・木村有美夫に紹介され、国立世界民族研究所で教授職を務めている、本宮武の元を訪れた大学生・刀城言耶は、大晦日から元旦にかけて、体験談や怪奇譚などを聞くべく泊り込んだ。
本宮の曽祖父・孟治郎が妾を囲うために造らせたという、本宮家の別邸である<四つ家>には、彼が支援する四人の研究者たち……パプアニューギニアの狩猟採集民スグショウ族の研究を専攻する城南大学の助教授・井坂敦則、バリ島神話専門の天谷大学の助教授・伊野田藤夫、アフリカの仮面結社専門の城南大学の助教授・上沢志郎、国立世界民族研究所の助手・都林成一郎……が住んでいた。
雪が降る中、下駄が独りで歩いているという不思議な光景を目にした言耶は、その後、雪の上の足跡が作り出した、一種の密室状態だった四阿で、井坂が毒殺されるという事件に遭遇する……『死霊の如き歩くもの』、
大学の先輩である阿武隈川烏から、<天魔>という奇妙な屋敷神を祀る家があるという話を聞いた言耶。
武蔵茶郷の箕作家という、代々庄屋を務めていた家があり、その裏庭の竹藪に天狗のようなものが棲んでおり、何人かが連れ去られているらしい。
数年前にも、そこに入り込んだ小作人の十歳の息子・田村穂が、祠に向かう途中の飛び石の先から足跡が消え、その後裏庭の崖の下で屍体となって発見されたという。
そんな家に、阿武隈川と共に出かけた言耶は、そこに住む気難しい老人・宗寿から話を聞いている最中、新たに子供が姿を消した事件に遭遇することに……『天魔の如き跳ぶもの』、
先般、本宮家で起きた事件を解決した言耶は、その御礼として再び招かれた。そこで、新進作家・伊乃木彌勒が、実は城南大学の教授・土淵庄司であることを聞いた言耶。
そんな土淵の家の庭には池があり、そこに彌勒島と呼ばれる小さな島があるという。庄司の父・庄三は、十六、七年前に天啓を受け、新興宗教の彌勒教を興したが、その後即身成仏を果たしていた。しかし、後に見つかったその屍体は、木乃伊化するのではなく、屍蝋化していたのだという。
土淵家を訪れ、庄司に自分の書いている怪奇譚を読んでもらえることになり、また彼からさまざまな話を聞いた言耶。
ところが、土淵家のお手伝い・寿乃久美江の甥…亡き妹の息子…である少年・高志が、木乃伊めいた姿を目撃した晩、事件は起きて……『屍蝋の如き滴るもの』、
恩師・木村に紹介され、先輩の谷生龍之介の話を聞くことになった言耶。
彼は、かつて大森に暮らしていたが、戦況が厳しい中、母に言われ、ひとり奥多摩の神戸地方の芦生という地に行くことに。そこは彼の実父・谷生猛が地主を務める地で、母は猛の妾だったという。
そこには亡き正妻・千鶴の子である長男・熊之介と、妾・智子の子である次男・虎之助がいた。智子は自分の子に家を継がせたいと願っていたが、身体の弱い熊之介には茜という乳母がおり、二人は事あるごとに反目していた。
やがて、虎之助は召集されて戦地に赴き、その間に熊之助は急死。さらに戦争が終わって後、虎之助が戦死したとの知らせが。しかしそれから一年後、虎之助が復員したという。しかしその後に、同じく虎之助を名乗る人物が現われた。戦時中の環境を物語るように、ふたりとも面変わりしており、谷生家の人たちにもどちらが虎之助か判別することはできないという。
探偵としての腕を見込まれ、どちらが虎之助なのか見極めるよう頼まれた言耶だったが……『生霊の如き重るもの』、
雨の日、散歩していた言耶は、ある建物の中を窓から覗き込む少年の姿を見かける。
近づいてみたところ、その部屋の中では大学生たちにより、怪談会が催されており、思わず飛び入り参加する言耶。
その中のひとりである、平山平太が少年時代に遭遇した不思議な体験を語る。
大阪の摂津の能生箕に生まれた彼は、その後鐘埼の釜浜町の長屋に引っ越した。そこは高級長屋と低賃長屋が向かい合わせに建っており、自ずと遊ぶ仲間は決まっていたが、平太は、ブルジョアを気取る花田家の少年・優輝と遊ぶようになった。
低賃長屋側には空き地があり、ある日そこで遊んでいると優輝の姿が消え……『顔無の如き攫うもの』の5編収録。

シリーズ番外編の連作短編集。
本編では作家になっている言耶の、大学時代のお話。
足跡トリックの多様性が面白いかも。
それにしても事件遭遇率が高いですね(笑)。

<11/8/2,3>