黒猫書房書庫

スイーツ多めな日々です…。ブログはちょー停滞中(´-ω-`)

『ふがいない僕は空を見た』窪美澄(新潮社)

2011-05-09 | 読了本(小説、エッセイ等)
友人に連れて行かれたコミケで、声をかけられたことから知り合った主婦・あんずと関係を持つ、高校一年生・斉藤卓巳。彼女の用意したコスプレ衣装を身にまとい、彼女の書いた台本のまま行なう奇妙なセックスに興じる卓巳。
そんな中、ずっと好きだったクラスメイト・松永七菜に告白されたことから、あんずとの関係を終わらせることにしたのだが……『ミクマリ』、
学校でも職場でもいじめられていた里美は、その生活から抜け出すために、告白された男性・慶一郎と結婚する。互いに子供ができにくい体質で、ふたりとも子供が欲しいというわけでもないが、どうしても孫が欲しいらしい義母・マチコは不妊治療に熱心。だが結果が出ずに彼女からは、体外受精を勧められ、有無をいわせず、もっとがんばらなければと圧力をかけられる。
そんな中で、知り合った卓巳と関係を持ちはじめた里美だったが……『世界ヲ覆フ蜘蛛ノ糸』、
思いを寄せるクラスメイト・卓巳に告白した七菜。夏の間には深い仲になるはずだったのに、なかなか関係は進まない。
そんな中、友人のあくつからは、卓巳の動画や写真がばら撒かれていると聞かされる。
おまけに優秀だった兄・優介は、おかしな宗教にはまった末、ひきこもり中。母に反抗し叩かれた3日後、七菜は兄の同級生の日向とラブホテルに行くが……『2035年のオーガズム』、
卓巳の親友・福田良太は、認知症の祖母と二人暮し。恋人を作って出て行った母がときどき置いていく金と、自分のバイト代で細々と生活している。
そんな中、バイト先のコンビニの先輩である田岡から勉強を教わり、次第に勉強に打ち込むようになるが……『セイタカアワダチソウの空』、
自宅で助産院を営む卓巳の母。自由人であった夫との間に卓巳をもうけたが、父親であることを強要し、出て行ってしまってからは、女手ひとつで生活を支えている。
ある時から助産院に卓巳がらみのチェーンメールなどが頻繁に来るようになり、その中傷に傷ついているらしい卓巳は、不登校状態。そんな中でも、日々新たな生に向き合わざるを得ない……『花粉・受粉』の5編収録の連作短編集。

『ミクマリ』は、第8回「女による女のためのR-18文学賞」受賞作。他の短編は、同じ物語の中の他登場人物たちの視点での語り。
重苦しい閉塞感の中で、それぞれがままならない思いを抱えた人たちの群像が描かれています。
最初の1編だけだったらちょっと引きますが、他の視点を加えたことにより、作品に厚みが出ている感じ。
……でも、いろいろイタい;

<11/5/8,9>