黒猫書房書庫

スイーツ多めな日々です…。ブログはちょー停滞中(´-ω-`)

『寒中の花 こらしめ屋お蝶 花暦』浮穴みみ(双葉社)

2011-05-02 | 読了本(小説、エッセイ等)
江戸日本橋で御茶漬屋・夢見鳥を営む女主人・お蝶。
二年前まで深川芸者だった彼女は、花屋の伊三郎と恋仲になり、夫婦約束をした。店の準備も整い、後は祝言を挙げて夫婦暮らし始めようという矢先、旅に出てしまった伊三郎。訳は言えないが、お役目が終わったらきっと帰ると約束。姿を見せることはできないが、戸口に花が置いてあったら、無事の知らせだと思って欲しい、と言い置いて。
そんな彼女は、生来の性格から、道理の通らないことには声を上げ、困っているものを助けを惜しまないことから、周囲の人々からは親しみを込めて、“こらしめ屋お蝶”と呼ばれ、よろず相談を持ちかける常連客がひきもきらない。
そんなある日、幼なじみのお初が、大柄な娘・おちまを連れてきた。
前の奉公先である駿河屋が店を畳み、一度田舎に帰った後、以前世話になった口入屋を訪ねたら、火事で焼けてしまっており、途方に暮れていたところだったという。その話を聞いている途中、持病の癪に見舞われたお蝶は、おちまの指圧に救われ、彼女を自分の店で雇うことにする。
夢見鳥の常連客で、戯作者の一介乃沙鴎は、おちまには何か江戸を離れたくない訳があるのでは、というが……“寒中の花”、
お初と一緒に、谷中の感応寺に浅葱桜の初花に、願掛けに出かけたお蝶は、ごろつき二人に絡まれている若い男を見かける。そのごろつきが昔から知ってる安次郎だったことから仲裁に入ったお蝶。絡まれていたのは、お初が昔、弟のように可愛がっていた幸吉だが、なぜか若旦那と呼ばれていた。
頭がいいので評判だった彼は、薬種問屋の福嶋屋の主人に見込まれ、奉公にあがったのだが、福嶋屋の娘が亡くなったことから、後に養子になったのだという。
安次郎に訊くと、松太郎という男にに頼まれて、彼を脅していたのだというが……“初花の色”、
五月。老舗の料理屋・あさひ屋で働いていた板前の鯛造にきてもらってから、店の評判はあがっている。
鯛造には、周囲の反対を押し切って所帯を持った老舗の菓子舗加賀屋の娘・おふじとの間に、弥太郎という男の子も授かり、幸せいっぱい。
ところが、その鯛造が突然店に来なくなった。何と、鯛造がおふじに暴力を振るった末、三行半をつきつけて離縁したというのだが……“皐月の紅葉”、
夏のある日。小男に盗まれたものを追いかける振袖姿の娘を見かけたお蝶。取り返してやったその風呂敷包みには、朝顔の鉢植えがひとつ。お蝶は、そんな娘の顔をどこかで見たような気がしていたが、思い出せずにいた。するとその娘は男の子だったというおちま。
持病があるらしい彼が飲んだ薬の包みが、浅草万年堂のものであったことから、話を聞きにいったお蝶。そこで働く忠吉曰く、それは高田屋の息子・兎一郎だという。そこには昔深川芸者だったお嶌が後添えとして入っていた店だった。
兎一郎は病本復のまじないとして、拝み屋にそのような格好をさせられているらしいのだが、沙鴎が知り合いの薬屋に件の薬について訊くと、心の臓を弱らせる薬であるという。継子とはいえ、お嶌は兎一郎を可愛がっていたはずなのだが……“六花の涼”、
糸屋の富士屋の跡取息子・玄兵衛がお茶漬けを食べにやってきた。お初曰く、算学の塾に通うために家を出て、長屋住まいをしているらしいのだが、どうやらそれは建前で、親子仲が険悪になったためらしい。
そんな富士屋には、昨年、玄兵衛の七つ下の妹・お琴…おかみの遠縁の娘を養女にもらった…が、男と駆け落ちするという騒動があったばかりだった。
親子仲が悪くなったのは、玄兵衛が縁談話を断ったからなのだが、それが初めてではなく、既に何度も同様に断っているらしい。
玄兵衛に訊くと、自分が嫁をもらうとお琴が戻りづらくなってしまうから…というのが、理由であるらしい。彼女がどこにいるのかわかれば、あきらめがつくだろうと、行方を探すことにしたお蝶。
ふたりが上方に行ったという噂もあったのだが、どうやらその相方の男・市助は江戸にいるという。彼を問い詰めたお蝶は、お琴とはとっくに別れたという話を聞き……“花嫁”の5編収録の連作短編集。

祝言を前に姿を消した男を待ちつつ、お茶漬け屋を営む元芸者のお蝶が、あちこちにお節介を焼いて、騒動に首をつっこんでいく人情モノ。
それぞれのキャラは良い感じですが、だいぶあっさりめな展開で、ちょっと最後がバタバタしてもったいないかも;

<11/5/2>