黒猫書房書庫

スイーツ多めな日々です…。ブログはちょー停滞中(´-ω-`)

『べろなし』渡辺球(講談社)

2007-08-18 | 読了本(小説、エッセイ等)
核爆弾は落とされず、今もなお諸外国との戦争が終わらない日本。
国民中学校に通う少年・白河啓太郎の祖父・洋次郎は、かつては外交省に勤めていたが、好ましからざる情報を広めようとしていたという疑いをかけられ、思想矯正の施設送りになっていた。その後、舌を焼かれ、歯を抜かれた“べろなし”となった彼は、発狂しているものと見なされ、近所の八幡さまのお堂に幽閉されていた。
ある日、啓太郎の幼なじみで、役場の雑役夫をしている正吉から、祖父が筆記用具を欲しがっていることを知った啓太郎たちは、木炭と落とし紙を密かに差し入れる。
そんな中、正吉の姉・涼子がメイドとして働く軍需工場の場長・堂上の息子・智人が、兵役落ちして戻ってきた。配属先でヘロイン中毒になった為らしい。
やがて祖父から“ペンは剣よりも強し”を意味する絵が届いたのを皮切りに、その伝達手段により、政府を揶揄する外国の寓話や、政府が隠している真の歴史などを知ることになった啓太郎たち。智人と共にその話を世間に広めるべく手製の冊子をつくるが……

未だ戦時下にあるという、パラレルワールドの現代日本が舞台のお話。
戦時下の暗澹たる雰囲気が漂っていて、大局的にはその状況は変わらないのですが、それでもそんな状況を打破しようとする前向きな少年たちの姿と、一筋の光のようなラストが印象的。

<07/8/18>