黒猫書房書庫

スイーツ多めな日々です…。ブログはちょー停滞中(´-ω-`)

『尾崎翠集成 上』中野翠・編(筑摩書房)

2006-08-15 | 読了本(小説、エッセイ等)
祖母と暮らしていた少女・小野町子は、二人の兄…分裂心理病院に勤める医師・一助と植物の研究に励む学生・二助、そして従兄・佐田三五郎のいる東京で、彼らの炊事の手伝いをしながら暮らすことに。そこで過ごした秋から冬にかけての短い間、人間の第七官に響く何かを探し求める彼女は……『第七官界彷徨』、
自作品『第七官界彷徨』の意図、計画などについて語る……『「第七官界彷徨」の構図その他』、
祖母に頼まれ、松木家へお萩を届けることになった町子。しかしその途中、兄・一助の同僚である幸田当八のことが思い出され……『歩行』、
ある種の粉薬の服用により神経を病んでしまった“こおろぎ嬢”。彼女は詩人、うぃりあむ・しゃあぷについて調べる為図書館通いをはじめ……『こおろぎ嬢』、
詩人・土田九作が恋する相手・町子は誰かに失恋しているらしい。“地上苦がければ地下に愉しき夢を追う”……どこかの国の黄昏期に住んでいて、しかし何時も微笑していたという医師の表情に似ていて欲しいという願いを込め、地下室アントンと名付け……『地下室アントンの一夜』、
牡丹のように美しい女給・お洋は、煙草の煙と煮立てた牛乳の香りで幻覚を見ることが出来るという……『香りから呼ぶ幻覚』、
ドイツ人、ヘヤバート・シュミット氏が結婚に至るまでの女性遍歴について語る…『或る伯林児の話』、
盆踊りで出会った女性に恋をした“僕”。しかしそれは3時間に満たない間の果敢ない恋だった……『初恋』、
偉大な嗅覚の持ち主である新進技師・山村氏。彼の暮らす渋谷の下宿の女中のお兼は、山村氏についてばかり語る、彼女の従姉妹であり下宿の女主人の娘である珠から、彼の接吻を盗みたいという願望をもち…『山村氏の鼻』、
外出嫌いな詩人・津田三郎は、ある日「水曜。間違えないで下さい、今日です。午後七時。この森」と書かれた手紙を拾い……『詩人の靴』、
ゲーテ、チェホフ、シュテルンハイム、シュニッツレル…各作家たちへ語る言葉……『匂い 嗜好帳の二三ペエジ』、
カイゼル、佐藤春夫へ捧げる言葉……『捧ぐる言葉 嗜好帳の二三ペエジ』、
10年ぶりに出会ったN氏。北の牧場で牛と共に暮らしているという彼は、私に……『木犀』、
靄に包まれた舟に乗っていた私は、突然聞こえたくしゃみから他の乗客の存在を知る……『漫漕』、
女優ジョセフィン・ベーカーを見る為に毎晩映画を見に行くという女性と、そんなベーカーに嫉妬する男……『新嫉妬価値』、
2年ぶりに再会した中世紀氏。婚約者の女性と結婚する為に、私たちから去った彼だったのだが……『途上にて』、
チャーリィ・チャップリンとウィリアム・シャープについて書かれた詩『詩二編 神々に捧ぐる詩』、他、書簡や、他作家たちとの座談会を収録した集成の上巻。

昭和初期のわずかな時期のみ執筆活動をされたした尾崎さんの作品集の上巻。
あまりわかりやすくはないですが、ちょっと不思議な感覚の作品を書かれる方で、ハマる方はとてもハマるというのはわかる気がします。
ちなみに『歩行』『こおろぎ嬢』『地下室アントンの一夜』は『第七官界彷徨』と同じ登場人物たちの出てくるお話。

<06/8/14,15>