ドイツ旅日記2009～エキスポ会場

　体内時計はまだ日本時間なのか、夜中の3時に目が覚めてトイレをすますと、外では電車がけたたましい音を立てて通過していく。
　「なんて遮音性の悪いホテルだっ」と寝ぼけた頭で悪態をつく。おまけにやたらと寒い。空調を調節するものは一切見当たらない。仕方がないから布団に包まって二度寝。あとでnikoに聞いたら窓が開いていた・・・・らしい。

2日目もそんなとこから始まった。

今日はエキスポ会場へゼッケンを引き換えに行く。マー君夫妻と朝は6時半から朝食だ。ドイツの朝は早いのだ。というよりこれも時差の影響か？

宿泊しているホテルはTULIP INN。街の中心から5km程離れているが、地下鉄のお陰で全く不自由がない。こじんまりとしていて過ごしやすい。スタッフも気さくだ。ドイツらしくというか、どうか分らないが、ハムにチーズ、数種類のパン、ゆで卵、シリアル、フルーツ、コーヒー、ジュース、たくさんのジャム類、カリカリに焼いたベーコン、茹でたソーセージ、スクランブルエッグ。ありきたりのバイキング形式ではあるけど、とっても豪華な朝食だ。
貧乏性は何処にいっても貧乏性だ。とりあえずひと通り食べないと気がすまない私はチーズとハムはすべて平らげた。
特にハムはうまかった。

腹も満たされたので、今日最初の目的地「エキスポ会場」を目指して、まだ涼しい朝のベルリンの街へ出た。
一応、前日路線図で確認したルートでいいかどうかスタッフに再確認した。慣れない異国の地での移動はそれなりに緊張感がある。耳から入ってくる情報はあてにはできないから、目で確かめていくしかない。
まずはSバーンという近郊電車に乗った。ひとつひとつ駅に停まるたびに路線図で駅名を確認する。きちんと確認できるとそれなりに安心できるものだ。

目的の乗り換え駅に到着すると、実はまだ少し時間が早いことに気がついた。乗換えからエキスポ会場の駅までは2駅。こんな時ランナーだと「あるいちゃうか！？」なーんて、意外と簡単に結論が出たりなんかする。

結論がでたところでnikoがトイレに行きたいと言い出した。駅にトイレはなかなか見当たらない。売店のお姉さんに「レストルームはどこですか」と聞いても伝わらない。じゃぁなんて言えばいいのだ？次に駅構内の洟やさんに聞いた。
多分中国人だろうか。やはりレストルームでは伝わらない。「えーいダイレクトに聞いてやれ！」。半分やけに「トイレはどこですか？」
おぉ～通じるじゃないか！

歩くこと約15分。エキスポ会場であるテンペル空港が見えてきた。詳しくは分らないが、今は使われていないらしい。
ターミナルビルと思われるまるで新千歳空港のような半円形のビルの外観はまるで監獄のようだ。
それでも正面入り口まで行って見ると、スポンサーであるアディダスの幟が何本も立ち、開場を待ちきれない人が一杯だ。
開場時間9時きっかりに入り口が係員によって開けられた。入ってすぐ大きなロビーにでる。キョロキョロしていると一人の男性に声を掛けられた。その人曰くジャーナリストだという。たまたま話をすることになった私がインタビューを受ける形となった。

記者（J）：「どこからきたの？」
Ken（K）： 「日本の札幌から」
J:　　　　「おおぉ！私もいつか日本に行きたいんだよ」
K:　　　　「ぜひ来てください。」
J:　　　　「ところで明日は走るの」
K:　　　　「もちろん走ります。」
J:　　　　「時間はどの位？」
K:　　　　「3時間くらいです（本当かよっ）」
J：　　　 「PBは？」
K:　　　　「3時間13分です。」
J:　　　　「いつだしたの？今年」
K:　　　　「つい先日です。」
J:　　　　「今年はフルマラソンは何回目？」
K:　　　　「3回目です。」
J:　　　　「どうしてベルリンマラソンにきたの？」
K:　　　　「物凄く大きな大会だと聞いたので、いつか来たいと思ってました。」
J:　　　　「ベルリンはどう？」
K:　　　　「とっても綺麗な街ですね。」
J:　　　　「ゼッケンNOを教えてくれないかな」
K:　　　　「いいですよ。27531．ほらっ！」
J:　　　　「OK。がんばってね。」
K:　　　　「ありがとう」

もしかしたら、地元の新聞に載っちゃう？なんて少し期待したした。

開場は元飛行場だけあってめちゃめちゃ広い。ホノルルマラソンでもこれほどではない。
さすが4万人が参加する大会は違う。数多くのメーカーやスポンサーがブースをつくり
様々なサービスをしている。とりあえず一番奥まで行ってゼッケンと記録計測用のチャンピオンチップを受取った。
開場を見てまわるとスポンサーの一つであるアディダスが記念Tシャツを出していた。
マラソンの申し込みをした時、フィニッシャーズTシャツの類は買わなかったのだが
実物をみてつい買ってしまった。なかなかかっこいいじゃないか。

ひと通り開場を見て歩き、飛行場でいう駐機場あたりに出ると出店が。ビールの幟も目に入る。
みんなで前日の禁酒を約束していたから、ここはピザとペンネとジュースで我慢。
完走後の乾杯までお預けだ。

エキスポ開場を後にして地下鉄に乗り込み、明日のスタート・ゴールであるティーア・ガルテンへ。
そう、あのブランデンブルク門があるところだ。
ウンターデンリンデン通りから次第に門に近づいて行く。つい先日の世界陸上の場面を思い出す。
今回のコースは世界陸上のように10kmの周回コースではなく、街の中を一方向にまわる。北海道マラソンのように往復部分がない。一緒に走る仲間とエールを交換出来ないが、常に景色が変わり、きらいな長い直線もない。

ベルリンの壁が崩壊して20周年。二十歳の時（あっ！歳が・・）にテレビで見たあのブランデンブルク門が目の前にある。ドイツの人の思いはどうなのだろう？自分がひとつの大きな歴史の変革期に存在していることに感動した。

公園の中にはゴールゲートが見えた。コースの中では子供たちのインラインスケートの大会が開催されていた。
ベルリンではインラインスケートが盛んなようだ。たぶん街に坂が多くないのもその理由の一つじゃないのかなぁなんて勝手に想像するのだが・・・

門を後にしてすぐ隣の議事堂見学に行った。ヨーロッパでは歴史的建築物を改修して、その中に現在のデザインをとっても上手く取り込んでいる。もちろんその道の専門家、批評家にしてみれば賛否両論はあるかもしれないが、そのことを実行できる、またするところが凄いと思う。
この議事堂の屋上にもガラスのドームが作られており、スロープで登り降りすることが出来る。一番上はパンテオンを思わせる円形の穴が開いている。この建物の隣には近代的な首相府がある。ポツダム地区もそうだが、ドイツの大都会にある近代的な建築物にはガラスをふんだんに用いたものが多い。その透明性が歴史的建築物と上手く調和し、その存在感を生かしている感じもする。

疲れが残らない程度に観光をしてホテルに帰る。さぁて晩御飯は・・・？
ホテル近くの駅に中華風のファーストフード店があったので行ってみた。明日のマラソンのことを考えるとドイツ料理は重すぎる。それにビールは飲めない。ということで、そんなに当たり外れがない、と思われる中華となった。

ちょうど店に入った時に、現地の若者が3人注文をしていた。出来てきた品物は焼きそば？うまそうだ。
メニューは全てドイツ語。4人で一瞬途方にくれる。しかし、生きる為には食わねばならない。
間違えたってサルの脳みそやでっかいゴキブリが出てくるわけじゃない。かといって先に注文したお兄ちゃんと同じじゃ芸がない。ということでお兄ちゃんが頼んだ品のメニュー表の次のやつにした。たいした差はないが、お店のおじちゃんに英語通じないのだ。それも数字が・・・・。どうみてもおじさんは中国人だ。ドイツ語の数字は聞けるが、英語のそれはわからないのか？

むむむっ、手ごわい。おじさんが紙にメニュー番号の8と×1と
書いてくれた。筆談だ。どうやら理解してくれたらしく、自分の分は調理が始まった。
他の3人もあとに続く。無事に全員食事にありつけた。

さぁ、明日はベルリンマラソンだっ！

※写真はエキスポ会場でのインタビュー風景。人気者はつらい。