CLASS3103 三十三組

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【読書】おはようおかえり

2024-06-17 21:05:43 | 読書感想文とか読み物レビウー
おはようおかえり  作:近藤史恵

ちょっと不思議な物語だった
なんてことのない姉妹の話しなんだが、
妹があるとき、ひいばあちゃんに憑依されるようになったという感じで、
そのひいばあちゃんがある目的を果たしたいがために
あの世から戻ってきたと解釈したくなる感じだが
実際は、何がどうであるか、語られることもなく
さりとて、その思念のようなものに導かれて
自分たちの不思議なルーツにたどり着いてしまう
なんて感じに読んだんだが、まぁ、それはそれとして、
時代を超えるという面白さと、人間の不可解さというのが混然となってて
かなり面白かったのであります

快活に見える妹にどこか嫉妬でもないが、
ちょっと思うところがある姉が主人公なんだが、その心のとげみたいなものが
若さゆえであったり、時代であったり、自身の内面であったりによって
あれこれ思い悩まされることになっているわけだが、
このあたりの機微はとても理解できるというか、
大半の人はこういう感じだよなとも思ってしまう
だからといって、妹が見えるままに快活かといえば
そういうわけでもなく、それはそれでやはり、どこか悩んでいるというか
人間らしさというものがとてもふんだんにあって、
その差異みたいなものをどう飲み込むか、その過程で成長とまではいわないけども
考えや、思い至る何かが変化する様が、はっきりと描かれることなく
緩やかに変わっていっているのが見事でとても面白かった

憑依して唐突にあらわれるひいばあちゃんも、
別に人生訓を語ったりするわけでもなく、正直迷惑というか戸惑いだけを置いていくんだが
それにかかわることで、その変化のきっかけとなっているのも確かだが、
そうとはまったく書かれていないし、終わってみると、成長の物語だったようなと
思い至る感じのさりげなさで、また、ひいばあちゃんの人生観みたいなものが
時代でもありそうだが、その人そのものの深みと悩みであったと
読んでいて、なんとなく思い至らせる力があってよかった

タイトル回収も見事で、
ああなるほどと思わず膝を打って読み終えたんだが、
最初「おはよう、おかえり」という挨拶二連続だと思って読んでたんだが、
「お早やくおかえりなさい」という意味の音だったと気づいて
なんというか、とてもほっこりしたのであった


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