CLASS3103 三十三組

しがない個人ホームページ管理人の日記です。

【読書】雨上がり月霞む夜

2019-03-25 20:45:57 | 読書感想文とか読み物レビウー
雨上がり月霞む夜  作:西條 奈加

雨月物語の成立を描いた小説でした
和風ファンタジーでありまして、
妖怪が出てきて、それぞれに人間の情のもつれが関わる、
そういう暗めの物語なんだが
なかなか面白く読めたのでありました

物語を通して、大きくひとつの謎が横たわっていて、
それを匂わせつつ、まったく別の短編が繰り返されると
そんな構成になっておりまして、
恥ずかしながら、雨月物語自体をよく知らないので、
そのオマージュというか、筋を別解釈した話であると
知らずに読んで、ちょっともったいなかったと
自分では思ったりしたのであります
本歌を知ってると、より一層面白いというか、
なるほどと深くうなづける一本だったんでなかろうかしら

異形、妖怪、そういうジャンルのものを「あやかし」として、
鳥獣戯画に出てくる兎をお供にしながら、
あちらとこちら、なんていうハザマの存在を見せつつ
そこに取り付かれる怨念というか、存念のようなものを描いて
まぁ、なかなかに酷い話だけども、
人間らしい悩みと情のもつれであるなと
感心させられたりしたのでありました

世間体というか、通念にとらわれるあまり
自らを殺すような生き方しかできず
そこで自縄自縛となっていく様というのは
よくある題材ながら、日本的なそれと
とてもしっくりとくる題材なので
うなるほど、なるほどと思わされたのでありました

最終的には、雨月物語の成立がなるほどそういうことか
と、思うかどうか、読み手に預けられるわけだけども
こういった不可思議は、あるようでいて、
それと関わりなく、人間の営みにはより一層の不可思議があると
教訓めいたことを思いながら読み終えたのでありました