CLASS3103 三十三組

しがない個人ホームページ管理人の日記です。

【読書】天下一統 始皇帝の永遠

2017-09-28 21:25:54 | 読書感想文とか読み物レビウー
天下一統 始皇帝の永遠  作:小前 亮

久しぶりに歴史モノ小説を読みました
始皇帝を題材にした秦の栄華といえばいいか、始皇帝趙正の生涯を描いた
大変わかりやすくまとまった一冊でありました
おおよその概要しか知らない身分には、
入門書よろしくわかりやすくて面白い小説であります

生い立ちから、その歩みが丁寧に描かれていまして、
小説、というひとつの物語としては、
その歴史をなぞっただけのようにも思えるけども、
これだけ雑味がないというか、違和感なく始皇帝がどうであったか
飽きることなく読めるというのがステキな本だったと思うのであります
ともかく、大変わかりやすいのであります
そして、さほどに脚色しなくても、この歴史は面白いのだと
改めて認識させられたのでありました

出てくる将軍たちも厳選されているようで、
敵味方ともに、活躍と結末が描かれていて、
なるほどなと史記で見かける内容も盛り込まれて
この時代の歴史についての復習ができるかのようで
楽しめて読めたのでありますけども、
小説として強く出ていたのは、始皇帝の人間味というか、
何か欠落してしまっているところの描き方が
素晴らしいといっていいのでありましょうか、
主役なのに、ほとんどその人となりが、物語が進むにつれて、
皇帝に近づくにつれて希薄になっていくようなところが印象的で、
実際そういう感じだったんじゃないかと
思わされるようで楽しいのであります
少しずつ、過去を清算するかのように侵略が進むにつれて、
どこか透明化していくようで面白い

また、始皇帝が主役には違いないのでありますが
もう一人、丞相の李斯も素晴らしくて、
彼の功績もまた、控えめながらも野心家として、それでいて実務もできるという
優秀な人物として描かれていて面白かったのでありました
この二人があってこそという物語なんだが、
ここにいたるまでの、呂不韋もステキで、こことの政争も含めて
あっさりなので小説としては物足りなくもあるけど
これくらいが、むしろ歴史物語としてはさくさく読めて面白いと
そう感じたのでありましたとさ

歴史をただなぞるだけなら、史書を読めという話になるところ
これを物語にして、妙な脚色がないと思えるような読め方ができたので
大変満足な一冊でありました
素晴らしい、別の歴史ものも読んでみたい作者であります