CLASS3103 三十三組

しがない個人ホームページ管理人の日記です。

あるキング

2010-06-11 23:47:20 | 読書感想文とか読み物レビウー
あるキング  作:伊坂幸太郎

久しぶりに読みました、伊坂幸太郎の小説であります
方々で物議を醸しているというか、
伊坂ファンからすると、賛否両論になっているらしい本作
私も、ああ、いつものと違うと感じつつも
それなりに楽しく読んだのでありました
賛否云々になるという部分については、
伊坂幸太郎に何を求めているかというところなんじゃないかしらなんて
偉そうなことを思った次第
今回のこれについては、いつもの、伏線を回収する
そのすべてが封じられていて、それを期待していると
すごくもの足らない、そういうものでありました

内容としては、私もシェイクスピアなんざたしなまないので
全然わからなかったんですが、いつだったか
NHK教育でやっていたマクベスを思い出すような展開というか
内容がいくつもちりばめられておりまして、
そういう元ネタを知っていると、ひょっとすると
もっと楽しめたのかもしれない
ある意味古典落語みたいなものだったのかもしれないとか
またまた、偉そうな感想を抱いたのでありました

それが、じゃぁ面白かったかというと
なかなか判断の難しいところで、
読後感のよさみたいなのは無く、何を言いたかったかも正直よくわからない
ただ、つらつらと描かれている文章の形が
面白いというか、次のページを読まざるをえないような
語りかけ調というか、謎の語り手による調子になっているのが
また、嫌らしいというべきでありましょう
何かあるのかしらと、思わせぶりが続いたあと
結局なんもないじゃないかと、そういう感想が近いと
個人的に思ったのであります

とはいえ、面白かったようにも思える部分はいくつかありまして
野球を題材にしていて、それでいて、野球がどうしたというよりは、
ある種の天才というものが現れると、どんなことになるのか
それを描いた作品とも思えたのでありました
陳腐というと聞こえが悪いのですが、はしばしから
物語的すぎるというか、突然ファンタジーになったり
設定自体がファンタジー以外のなにものでもないところもあるんだけども
その荒唐無稽さは、よく考えてみれば
いつもの調子とかわらないじゃないかと、モダンタイムスを思い出したりして
その不可解なことが当然であるという世界を
いつもは描いていたのに
今回のこれは、不可解なのは主人公のずば抜けた野球センスだけで
そのほかは、わりと現実に近いというところで
そのギャップをなんとか描こうとしたのではないかなんて
勘ぐってしまうのでありました

短いし、さらっと読める
それは間違いが無く、しかも、飽きるとかつまらないと投げる前に
読み切れてしまうという読みやすさは
やっぱりすごいことだなと感心して
その後、惹かれるところは、さほどなかったものの
こういう本も面白いなぁと感じたので
よい話として、メモっておくのでありましたとさ