JF4CADの運用日誌2.5

アマチュア無線局JF4CADの活動内容紹介ブログです。

新石垣空港について

2012-11-29 | シャック便り

新石垣空港の開港まで100日を切りました。ご存知の方はあまり多くないようですので、今回の移転について少し掘り下げてご紹介したいと思います。

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[石垣空港]
現在の石垣空港は石垣市真栄里にあります。市内の中心部に位置する離島ターミナルからは車で10分前後と近いことから、島に空港のある与那国島を除く八重山諸島の玄関口として機能しています。

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沖縄県が管理する地方管理空港であり、地方管理空港としては岡山空港などとともにトップクラスの便数と乗降客を誇る空港です。しかしながら滑走路が1500mしかなく、しかも市内中心部近くに位置することから騒音問題を抱えるなど問題点が多いことも事実です。

 
[暫定ジェット化]
現在の石垣空港は戦時中に開設された海軍の飛行場が起源です。その後滑走路は何度か延長され、1968年にYS-11型機が発着できるよう現在の1,500mになりました。ところがこの長さは近くで言えばプロペラ機のみが発着する多良間空港と同じです。

伸び続ける需要に対応するため1979年に滑走路の舗装強化など「暫定ジェット化」が行われジェット機が発着できるようになりましたが、滑走路の延長ができなかったため以下の通り大変厳しい制約があります。

・離着陸できる飛行機は小型のボーイング737型以下に限られる。
・オーバーランを防ぐため着陸後は急制動が必要。
・離陸時は滑走路の端でブレーキをかけた状態でエンジン出力を十分に上げてから解除しダッシュさせる。
・離陸に必要な距離を短くする目的で機体を軽くするため乗客・貨物・搭載燃料が制限される。

737型機にはバリエーションがあり、ANAの使っている胴体の短い737-500型機なら少しは余裕があるのですが、JTAの使う標準サイズの737-400型機ではあまり余裕がありません。このような暫定ジェット化は宮古や与那国、北九州空港などでも行われましたが、いずれも移転や滑走路の延長が行われ石垣空港のみが暫定ジェット化のまま残されています。

ただし世界的に見ればこの程度の制約のある空港はザラで、もっと危険な空港がたくさんあります。極端に短い滑走路でしかも急勾配がついている空港、滑走路のすぐ先が断崖でオーバーラン=死という日本では考えられない空港もあります。

 
[現石垣空港の問題点]
ともあれ搭載燃料の制約により航続距離に制限を受けますから石垣島から直行することができるのは福岡空港が精一杯で、那覇空港もしくは宮古空港に給油のため立ち寄ることになります(逆の本土→石垣は燃料を使って機体が軽くなるため着陸可能)。

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画像の出発便のうち、JTA84便関西行きと78便羽田行きはそれぞれ「那覇/関西」「那覇/東京」と表示されています。この2便はそれぞれ最終目的地まで直接行けず那覇で給油を行います。このような便では保安上の理由から乗客は給油中の機内滞在が認められず一旦降機しなければいけませんから、乗り継ぎとたいして変わりません。

また、石垣発の便は座席定員一杯まで乗ることができません。本土行きならば給油地で新たな乗客を受け入れることができますが、主力の那覇行きですと途中で空席を埋めることができず無駄が生じます。輸送力を確保するためには便数を増やすしかなく、航空会社にとってかなり都合の悪い運用なのです。

最も簡単な解決策は今の滑走路の延長です。ところが片方は国指定の遺跡、もう片方は住宅地があって困難とされ、新空港が計画されたという次第です。しかしながら移転候補地が環境破壊につながるとして相次いでダメになり、ようやく島東部の白保地区北側に空港を移転することが決まりました。

移転を決めたが移転先がない状態が長く続き、石垣空港は近代化から取り残されてきました。ANA側のターミナルビルはのちに増設されたものですが、JTAの使う旧来のターミナルビルは古いまま使われ続けています。ボーディングブリッジも整備されていません。
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このように天気のよい日であれば八重山の明るい日差しが心地よいのですが、雨の日なんかはせっかくの楽しい旅気分がそがれてしまいますね。

 

[新空港のメリット]
新空港の滑走路は宮古空港と同じ2,000mになります。この長さですと737型機なら定員一杯に乗っても本土まで直接飛ぶことができますし、中型のボーイング767型や787型機でも離着陸できます。今の空港にはないボーディングブリッジも整備されます。現在は狭いスペースにギリギリまで商品を押し込んで陳列している売店も整備され、スペースや店舗数は今より増えるみたいです。

なお、新空港開業後に那覇-石垣線への参入を表明していたスカイマークは就航を延期することを既に発表しています。

 
[新空港で懸念される点]
一方で心配な点もあります。
現在の石垣空港は定員一杯まで乗せられないため、主力の那覇-石垣線は輸送力を確保する目的で多くの便数を飛ばしています。ところが新空港になれば同じ737型でも1機あたりの利用可能な座席数が増えますから、飛行機を集約・減便することもできます。便数が減りかえって不便になる可能性があります。

本土との直行便にしても確実に見込めるのは現在も直行便がある羽田や関西などくらいで、737の座席をフルに使えて実質増席になりますから機種は引き続き737が使われる予定です。それではLCCとなりそうですが、現時点での参入表明はないようです。

加えて新空港は石垣の市街地から離れ、利便性が低下します。市内中心部へは引き続き東運輸がバスを走らせる予定ですが、料金は高くなりますし時間もかかるようになります。このため観光客の足が遠のく可能性が指摘されています。特に竹富島をはじめとした離島への影響が大きいのではないかと言われています。

新空港から市内中心部までを直結する道路の建設も始まっています。しかしながら道路の開通は空港の開港に間に合わず、2016年頃になると言われています。他にも空港と中心部の間に鉄道を建設しては、という意見もありますが採算が取れるとは考えにくいのが正直なところです。

 
地元では観光客が年間80万人台から100万人台へ伸びるとの強気の予想を出してはいますが、足下の国内航空需要や中国人観光客の動向を見れば、たとえ本土との直行便が可能になったとしても新石垣空港の利用客が伸びるのかはっきり分からないのが現状です。

私は当面の不便が解消されるのを待ってから(直接飛行機で行ける与那国以外の)八重山への訪問を再開したいと思います。

コメント
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