ダニエル書と言えば、日曜学校でも度々メッセージがされていて、日本人クリスチャンの間でも、比較的読まれている(理解しているかは別として(^_^;))預言書です。いつもだったら「この書巻はほとんど読んだことがなくて・・・」と、レポートを書き始める私でさえ、何度か読んでいる書巻です。
ダニエル書と言うと「ライオンの穴に落とされた話」や「炎の中で助けられた話」などの奇跡が有名ですが、今回はそちらの話しではなく、現在着々と近づきつつある「終わりの時」の預言について書かせて頂こうと思います。
まず、このダニエル書は数ある預言書の中でも一つ大きな山であり、新約聖書の黙示録とも密接に係っています。(でも、ユダヤ人に向けられた預言でないためか、ユダヤの教典では諸書に分類されています)この書巻には「終わりの日」、「終わりの時」という言葉が度々使われている様に、本書のテーマはズバリ!「この世の終わりには何が起こるのか?!」です。そして、ポイントとなるのは「バビロン」です。
実は、イスラエルの歴史において、バビロンは重要な節目になっています。バビロンはメソポタミア地方の古代都市で、バグダードの南方約90㎞の地点からユーフラテス川をまたいで広がっていました。その意味は「神の門」、ネブカドネザルが統治していたバビロンは「新バビロニア王国」と呼ばれ、そこにはかの有名な空中庭園があり、当時は貿易と商工業の中心地として栄えに栄えていました。
このバビロンが初めて聖書に登場するのは、創世記10章8節からで、ノアの子孫である世界最古の権力者ニムロドがシンアルの地に都市をつくりましたが、このシンアルの地とバベルがこのバビロンのことです。バベルと言えば、言葉の混乱が起きる原因となったあのバベルの塔ですよね。
聖書にはこのバビロンと言う言葉が何度も出てきますが、この「新バビロニア王国」を指す事もあれば、Ⅰペテロ5章13節のように当時の「ローマ帝国」を指す事もあり、黙示録のように終わりの時に建国される反キリスト帝国を指す事もあります。つまり、聖書に登場するバビロンという国は、この世における強大な権力を表しているのです。
また、マタイ福音書の冒頭を飾るイエス・キリストの系図にも、アブラハムからダビデまで14代、ダビデからバビロン捕囚前まで14代、バビロン捕囚後からイエスキリストまで14代と、区切られてますよね。この様にバビロンは、聖書においてかなり重要なキーワードであることが分かります。さて、ダニエル書は前半の1~6章と、後半の7~12章の大きく二つに分割出来ます。前半が約400年間にわたる世界の歴史で、後半は終末に関する預言です。本書の中には、様々な幻が登場して来ますが、これらの幻の繋がりがとても重要です。今回はその数ある幻の中から、特に重要な4つの幻をピックして確認して行きましょう!
先ず一つ目は、2章に登場する
巨大な像の幻です。これは、ダニエルがネブカドネザルが見た夢の解き明かしです。頭が純金、胸と腕が銀、腹と腿が青銅、すねが鉄、足は一部が鉄で一部が陶土で出来た大きな像が、人手によらず切り出された石によって破壊され、その石が大きな山となって全地に広がって行くと言う夢です。
純金の頭は、当時ネブカドネツァルが治めていた「新バビロニア王国」を表します。そして、この頭は当時新バビロニア王国で拝まれていた、「マルドゥク」の金でできた頭なのですが、この「マルドゥク」こそ、世界最古の権力者であるニムロドが神格化されたものでした。この大帝国「新バビロニア王国」はメディアとペルシャの連合国によって滅ぼされます。
そのメディアとペルシャの連合国を表すのが、銀の胸と腕です。この連合国を滅ぼしたのが、かのアレクサンダー大王で、彼の軍隊が武器として使用していたのが、当時もっとも堅い金属だった青銅でした。つまり、青銅の腹と腿がギリシャ帝国に当たります。
その後の4番目の国から、現在進行形になります。この国はローマ帝国を表していますが、この帝国には三つの編成があります。まず、軍事的にも経済的にも、支配地域においても最も優れていて、エルサレムを滅ぼしたローマ帝国が第一段階。青銅よりも強い鉄の脛がこれを表します。そしてローマはAD395年に東西に分裂します。脛は二本ありますが、それがこの東西の分裂を表しています。これが第二段階です。
その次が鉄と陶土で出来た10本の足の指。これが終末時代に登場する反キリスト率いる「大バビロン帝国」。第三段階のローマ帝国がこれに当たります。そして、この大バビロンは、永遠に滅びる事のない神の国によって滅ぼされます。この国は、人の手によらず切り出された石と表現されている通り、人間の力ではなく、神の力で興された国。この国こそ、黙示録21章2節に記載されている“天から下ってくる新しいエルサレム”のことです。そして、この国の王様が、黙示録19章11節に登場する白馬の騎手です。
と、ここまでが、今までの、そしてこれからの世界の流れについての預言です。最後のローマ帝国である大バビロンが、現在既に現れているのか、またどこの国なのかについては諸説あります。20年くらい前までは、EUではないかという説が有力でした。EUはローマ帝国の再来であり、連合国で編成されていたからです。しかし、現在EUは27ヶ国、未だ特に有力な人物が出ていない事から、現時点においては候補から外れつつあります。
さて、この第四の国である大バビロンの預言に繋がる幻が、本書7章の
四頭の獣の幻です。4頭の獣が現れ、それぞれが暴れるのですが、4頭目の獣はものすごく恐ろしく、非常に強く、10本の角が生えていたと書いてあります。この4頭の獣は、4人の王国を表しており、4番目の国は全てのものを踏みにじり、打ち砕く国で、10の角はこの国に立つ10人の王を表しています。それが、終末時代に登場する反キリスト国家です。
ネブカドネツァルが見た夢に出てきた像の10本の足の指が、この10本の角に相当します。その後に現れた1本の角は10人の王と異なって3人の王を滅ぼし、いと高き方に敵対して今までの世界の秩序を変えようとする。この1本の角が反キリスト、666の数字で表される人物です。この人物は、悪の権化の様な形ではなく、混乱した世界を救う救世主の様な存在として現れます。いと高き方は、イエス・キリストの事。いと高き方の聖者は、クリスチャンの事。一時期、二時期、半時期は足すと三年半になり、これはクリスチャンが受ける三年半の患難期を指します。
こうして大バビロン以前の国まで、ダニエルの預言通りになっていますから、後は第四の国である大バビロンが起って大患難時代が来るだけ。ここまで預言通りに来たわけですから、まぁ当然第四の国もこの預言通りになる!ということが明白に分かります。
そして、その大患難時代の預言が、本書9章にある「
定めの70週の預言」です。この預言が書かれたのは、バビロン捕囚の後期。まもなく、70年のバビロン捕囚が終わると言うときでした。その事に掛けられているため「定めの70週」という名前がついています。その内容を簡単に言うと、バビロン捕囚は70年で終わるけど、イスラエルがメシアを受け入れる迄、捕囚の70年の7倍かかるよ・・・という内容です。これは、ダニエルが罪を犯した自分の民と父祖たちの為に祈った後に、ガブリエルによって伝えられた御言葉です。
ここから、パズルのような預言が与えられているので、すこし計算しながら預言を確認して行きましょう。まず、イスラエルの民とエルサレムに与えられた70週。これは言うまでもなくバビロン捕囚の70年の事です。その後、エルサレム復興と再建についての御言葉が出されます。この勅令を出したのが、エズラとネヘミヤに登場するペルシャのアルタクセルクセスという王様です。勅令が出された年代については諸説あるのですが、一番有力なのが、城壁の修理が完了したBC445年3月14日。
ここから、油注がれた君の到来まで7週と62週。この2つを足すと「69週」。この69週を日に換算すると、「69×7=483日」。この483日を483年に変更して、更に日に換算すると、当時の太陰暦は1年=360日ですから、「483×360=173,880日」。アルタクセルクセスが勅令を出した、BC445年3月14日から173,880日後は、「AD32年4月6日」。この日、イスラエルは過ぎ越し祭で、イエス様がロバに乗ってエルサレム入城をしたのがこの日なのです!油注がれた君とは、イエス・キリストのこと。9章26節の「油注がれたものが不当に断たれる」とは、イエス様の十字架のことで、「都と聖所は次に来る指導者の民によって荒らされる」というのは、ローマ帝国によるエルサレム崩壊のことを指します。
そして、9章27節の預言から、少し時代が飛びます。この預言は、終末時代の大バビロンと大きく係っており、ここに出てくる「彼」とは、一本の角である反キリストのこと。一週の間というのは、7年間の大患難時代の事です。「彼(反キリスト)」は、多くの者と同盟を結ぶとありますが、これは偽の平和条約を多くの国と結ぶと言う意味だと思われます。
おそらく中東において、とんでもない争いが起き、それを収める為にこの平和条約が結ばれるのですが、それが3年半で何らかの問題によって失効し、事態は更に深刻な局面を迎える。この平和条約が結ばれる三年半が患難時代の前半で、平和条約が失効し、大問題が起こるのが患難時代の後半に当たります。
「憎むべきものの翼の上に荒廃をもたらすものが座す」彼は自分を神格化して神殿に座し、人々に自分を拝ませることを強要します。まるで、マルドゥクとなったニムロドのように・・・。こうして、定められた破滅(世界の滅亡)がおとずれる。この預言が「定めの70週の預言」です。イエス様が来られるまでの69週はもう既に成就していますが、上記の70週には1週足りませんよね。これが、反キリストによって行われる大患難時代の7年を指します。
神様は何時いかなる時でも、いきなり何かをなさる方ではありません。ノアの洪水の時だって、メトシェラ(彼の死がもたらすの意)の名前から、いつ洪水が起こるのかを、教えて下さっていました。これと同じように、反キリストにも、その予兆となる人物がいました。それが、8章の
雄羊と雄山羊の幻です。
8章5節と8節に登場する、勢いよくやってきてメッチャ尊大で、尊大な余り角が折れた雄山羊・・・これは、アレキサンダー大王の事です。彼は、僅か10年足らずで世界を征服しましたが、若干32歳という年齢でこの世を去ってしまいます。角が四つに分裂したと書いてありますが、これはアレキサンダー大王のギリシャ帝国が四つに分裂したことを表しています。
ここで、小さな一本の角が現れ、それは強大になり、南へ東へ、そしてあの「麗しの地」へと力を伸ばしたとあります。分裂したギリシャの後に、小さな角強大な力が現れ、それは「麗しの地」エルサレムへと力を伸ばしたのです。四つに分裂した内の一つ「セレウコス王朝」がこの小さな角です。このセレウコス王朝の王が、アンティオコス4世エピファネスという人物で、この王はエジプト遠征に失敗した腹いせに、エルサレムに大きすぎるちょっかいを出して来ました。この時の戦争が「マカベヤ戦争」と言います。
これは、マラキ書~イエス様到来までの空白の400年の間に起こった出来事なので、多くのクリスチャンはあまりこの事件の事を知りませんが、その戦争に勝った記念日が、ユダヤ人が現在でもクリスマス時期にお祝いしている「ハッピーハヌーカ」です。(このマカベヤ戦争については、「マカバイ書」という外典に書いてあるらしいのですが・・・)この戦争の悪役である、アンティオコス4世エピファネスが反キリストの予表となる人物で、彼がエルサレムを占領していたのが三年半です。
このマカベヤ戦争から230年後にユダヤ戦争が起こりますが、マタイ24章15節のイエス様の言葉を信じていたクリスチャン達は、この戦争をマカベヤ戦争の再来と悟り、外はローマ軍、内は熱心党(バリバリの右翼みたいなの)に固められている中を逃げ延びて、ぺトラと言う山にまで行って生き残りました。このユダヤ戦争が起きていたのも、三年半。そして、大バビロンの反キリストは、42か月=三年半権威が与えられて活動します。(黙示録13章5節)
さて、今回はダニエル書の預言を通して、今着々と近づいて来ているであろう、大患難時代の事を学びました。日々のニュースを見ていても、ここ数年で時代の流れ方が激流に変わったことが、手に取るようにわかります。何かに向かって世の中が流れて行っている・・・。そんな気がします。私達クリスチャンは、それらのニュースを他人事と受け取るのではなく、緊張感をもって受け取り、正しい情報を取捨選択して生きていく必要があります。
ユダヤ戦争の時に勇気ある一歩と信仰によって生かされたクリスチャンのように、私達も目を覚まして冷静に正しい行動が出来るよう、今からの祈りが必要です。どんな無理難題が目の前に有ったとしても、信じて一歩踏み出せば神様は必ず道を開いてくれます。その事を覚えて、緊張感をもって日々の生活を送って行きたいものですね。(Report by Yuka
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