年度末でいろいろ仕事が押していて、なかなかブログが書けない。先週末(3/2-3)の京都奈良旅行から。
■京都国立博物館 日中平和友好条約締結40周年記念・特別企画『中国近代絵画の巨匠 斉白石』(2019年1月30日~3月17日)ほか
京都に着いて、まず京博に寄った。『斉白石』展は東博でも見たのだが、もう一度。3階は閉室で、2階は全て斉白石。正確にいうと、展示室1~4が北京画院所蔵の斉白石展で、展示室5は館蔵「須磨コレクションにみる斉白石の名品」だった。私は、京博の中国絵画コレクションで斉白石という画家を覚えたので懐かしかった。しかし同じ展覧会でも、京博は東博と違って写真が撮れないんだな。
1階・彫刻室の特集『中国の仏像』(2018年12月18日~2019年3月17日)は1月にも見たはずだが、あらためてじっくり見る。仁和寺・南宋の観音菩薩坐像とか、京博所蔵・北宋の観音菩薩坐像など面白かった。京都・善願寺の、写実的で若々しい僧形坐像は唐代の作。平安時代に学僧によってもたらされ、布薩(ふさつ)という儀礼に用いられた可能性があるとのこと。
特集展示『初公開!天皇の即位図』(2019年1月30日~3月10日)は、寛文3年(1663)後西天皇が譲位し、霊元天皇が即位した際の儀式の様子を、狩野永納が描いた六曲一双の屏風。あわせて「固関木契」(天皇の譲位など国会の重大事に際して、三関を封鎖するための手形)や「礼冠」(公家の最礼装である礼服にあわせてかぶる。礼服は即位儀礼にのみ用いられる)などが出ていて面白かった。特集展示『雛まつりと人形』(2019年2月13日~3月17日)では、江戸時代の各種からくり人形を合わせて展示。「入江波光コレクション」という注記を見て驚いた。画家の入江だと思う。
■法相宗大本山 薬師寺(奈良市西ノ京町)
最近、展覧会や特別公開ばかり追いかけて、普通のお寺参りの機会が減っているので反省している。とはいえ、今回も目的があって、『国宝東塔 新旧水煙特別公開』(年3月1日~3月10日)をやっているというので寄った。2013年にも『水煙降臨展』を見ているが、また来てしまった。手前が本物、奥は復元品である。

久しぶりに伽藍もひとまわりした。大好きな聖観世音菩薩像は、むかしどおり東院堂にいらっしゃった。このところ、美術館や博物館でお会いする機会が多かったので、やっぱり自然光の下、自然な空気の流れを感じながら仏様に相対するのはいいものだと思った。東塔は相変わらず縞模様のテントの中だったが、今年のゴールデンウィークに修理作業現場の最後の一般公開があり、2020年4月22日~26日に落慶法要の予定だそうだ。
薬師寺の伽藍は、年々歳々面目を一新しており、記憶にない建物に行き当たった。2017年に再建された食堂である。ああ、そうだ、田淵俊夫先生の絵が飾られているんだったと思い出し、追加の拝観料500円を支払って中に入る。中央には田淵先生の「阿弥陀三尊浄土図」。この製作過程に取材したNHKのETV特集を見たのは2016年だった。本尊仏画の前には「各地被災物故者」「薬師寺伽藍復興結縁者」「万国戦没者」の3つのシンプルな位牌が置かれていた。本尊を囲む壁には、全長50メートルにわたる壁画「仏教伝来の道と薬師寺」が描かれている。お堂の息づかいのように照明がゆっくり変わるのも好ましかった。
■唐招提寺(奈良市五条町)
急に唐招提寺にも寄りたくなって行ってみた。ブログで探したら、2009年に拝観した記録があるので10年ぶりかもしれない。金堂の巨大な三尊、廬舎那仏、薬師如来、千手観音はむかしどおりだった。ただお堂の前面に鳥除け?の金網のようなものが張られて、中が見にくくなっていた。以前はなかったような気がする。細長い礼堂の濡れ縁に細長い竹串のようなものがびっしり大量に干してあった。何だかさっぱり分からなくて、経巻の軸?などと首をひねったが、あとで疑問が氷解した。5月の「うちわまき」(梵網会)に使われるハート型の「うちわ」の柄だった。

開山堂では「鑑真大和上御身代わり像」を拝することができた。年間数日しか開扉しない国宝の和上像に代わって、毎日参拝していただく目的で、2013年に製作されたものだという。ありがたや。新宝蔵は入口にスロープが設置され、バリアフリーになっていた。よいことである。唐招提寺のトルソー(如来形立像)は何度見てもよい。鑑真和上の御廟にも参拝。墳墓のまわりの壁に趙紫陽さんの文が刻まれているのを初めて知って、切なく思った。なお、ご朱印帖を預けたときの番号札が可愛かった。

■奈良国立博物館 特別陳列『お水取り』(2019年2月8日~3月14日)+特別陳列『覚盛上人770年御忌 鎌倉時代の唐招提寺と戒律復興』(2019年2月8日~3月14日)
いつもの『お水取り』に加えて、特別陳列がもうひとつ。覚盛(かくじょう)上人のことは全く知らなかったが、唐招提寺中興の祖で、上人の命日である中興忌梵網会で「うちわまき」が行われるのは、上人が肌にとまった蚊を殺生しなかったことに基づくという。唐招提寺でうちわの柄を見てきたばかりで親しみが湧いた。覚盛の前後に活躍した貞慶、證玄、忍性らもあわせて紹介。『東征伝絵巻』は忍性が唐招提寺に奉納したとされ、その忍性は、若い頃、覚盛に師事していたのだな。なるほど。
「珠玉の仏教美術」(名品展)の仏画はすばらしく見応えがあった。「明王」特集で、肝が縮まるくらい怖くて美しい。お気に入りの逸品は『烏樞沙摩明王像(うすさまみょうおうぞう)』(鎌倉時代)。笑いながら躍りかかる赤鬼のような姿で、ユーモラスで怖い。右隅に猪頭の人物がひざまづいている(※奈良博サイトに画像あり)。
■京都国立博物館 日中平和友好条約締結40周年記念・特別企画『中国近代絵画の巨匠 斉白石』(2019年1月30日~3月17日)ほか
京都に着いて、まず京博に寄った。『斉白石』展は東博でも見たのだが、もう一度。3階は閉室で、2階は全て斉白石。正確にいうと、展示室1~4が北京画院所蔵の斉白石展で、展示室5は館蔵「須磨コレクションにみる斉白石の名品」だった。私は、京博の中国絵画コレクションで斉白石という画家を覚えたので懐かしかった。しかし同じ展覧会でも、京博は東博と違って写真が撮れないんだな。
1階・彫刻室の特集『中国の仏像』(2018年12月18日~2019年3月17日)は1月にも見たはずだが、あらためてじっくり見る。仁和寺・南宋の観音菩薩坐像とか、京博所蔵・北宋の観音菩薩坐像など面白かった。京都・善願寺の、写実的で若々しい僧形坐像は唐代の作。平安時代に学僧によってもたらされ、布薩(ふさつ)という儀礼に用いられた可能性があるとのこと。
特集展示『初公開!天皇の即位図』(2019年1月30日~3月10日)は、寛文3年(1663)後西天皇が譲位し、霊元天皇が即位した際の儀式の様子を、狩野永納が描いた六曲一双の屏風。あわせて「固関木契」(天皇の譲位など国会の重大事に際して、三関を封鎖するための手形)や「礼冠」(公家の最礼装である礼服にあわせてかぶる。礼服は即位儀礼にのみ用いられる)などが出ていて面白かった。特集展示『雛まつりと人形』(2019年2月13日~3月17日)では、江戸時代の各種からくり人形を合わせて展示。「入江波光コレクション」という注記を見て驚いた。画家の入江だと思う。
■法相宗大本山 薬師寺(奈良市西ノ京町)
最近、展覧会や特別公開ばかり追いかけて、普通のお寺参りの機会が減っているので反省している。とはいえ、今回も目的があって、『国宝東塔 新旧水煙特別公開』(年3月1日~3月10日)をやっているというので寄った。2013年にも『水煙降臨展』を見ているが、また来てしまった。手前が本物、奥は復元品である。

久しぶりに伽藍もひとまわりした。大好きな聖観世音菩薩像は、むかしどおり東院堂にいらっしゃった。このところ、美術館や博物館でお会いする機会が多かったので、やっぱり自然光の下、自然な空気の流れを感じながら仏様に相対するのはいいものだと思った。東塔は相変わらず縞模様のテントの中だったが、今年のゴールデンウィークに修理作業現場の最後の一般公開があり、2020年4月22日~26日に落慶法要の予定だそうだ。
薬師寺の伽藍は、年々歳々面目を一新しており、記憶にない建物に行き当たった。2017年に再建された食堂である。ああ、そうだ、田淵俊夫先生の絵が飾られているんだったと思い出し、追加の拝観料500円を支払って中に入る。中央には田淵先生の「阿弥陀三尊浄土図」。この製作過程に取材したNHKのETV特集を見たのは2016年だった。本尊仏画の前には「各地被災物故者」「薬師寺伽藍復興結縁者」「万国戦没者」の3つのシンプルな位牌が置かれていた。本尊を囲む壁には、全長50メートルにわたる壁画「仏教伝来の道と薬師寺」が描かれている。お堂の息づかいのように照明がゆっくり変わるのも好ましかった。
■唐招提寺(奈良市五条町)
急に唐招提寺にも寄りたくなって行ってみた。ブログで探したら、2009年に拝観した記録があるので10年ぶりかもしれない。金堂の巨大な三尊、廬舎那仏、薬師如来、千手観音はむかしどおりだった。ただお堂の前面に鳥除け?の金網のようなものが張られて、中が見にくくなっていた。以前はなかったような気がする。細長い礼堂の濡れ縁に細長い竹串のようなものがびっしり大量に干してあった。何だかさっぱり分からなくて、経巻の軸?などと首をひねったが、あとで疑問が氷解した。5月の「うちわまき」(梵網会)に使われるハート型の「うちわ」の柄だった。

開山堂では「鑑真大和上御身代わり像」を拝することができた。年間数日しか開扉しない国宝の和上像に代わって、毎日参拝していただく目的で、2013年に製作されたものだという。ありがたや。新宝蔵は入口にスロープが設置され、バリアフリーになっていた。よいことである。唐招提寺のトルソー(如来形立像)は何度見てもよい。鑑真和上の御廟にも参拝。墳墓のまわりの壁に趙紫陽さんの文が刻まれているのを初めて知って、切なく思った。なお、ご朱印帖を預けたときの番号札が可愛かった。

■奈良国立博物館 特別陳列『お水取り』(2019年2月8日~3月14日)+特別陳列『覚盛上人770年御忌 鎌倉時代の唐招提寺と戒律復興』(2019年2月8日~3月14日)
いつもの『お水取り』に加えて、特別陳列がもうひとつ。覚盛(かくじょう)上人のことは全く知らなかったが、唐招提寺中興の祖で、上人の命日である中興忌梵網会で「うちわまき」が行われるのは、上人が肌にとまった蚊を殺生しなかったことに基づくという。唐招提寺でうちわの柄を見てきたばかりで親しみが湧いた。覚盛の前後に活躍した貞慶、證玄、忍性らもあわせて紹介。『東征伝絵巻』は忍性が唐招提寺に奉納したとされ、その忍性は、若い頃、覚盛に師事していたのだな。なるほど。
「珠玉の仏教美術」(名品展)の仏画はすばらしく見応えがあった。「明王」特集で、肝が縮まるくらい怖くて美しい。お気に入りの逸品は『烏樞沙摩明王像(うすさまみょうおうぞう)』(鎌倉時代)。笑いながら躍りかかる赤鬼のような姿で、ユーモラスで怖い。右隅に猪頭の人物がひざまづいている(※奈良博サイトに画像あり)。