桃園空港と台北市内を結ぶMRT(2017年3月開通)には初めて乗る。昨年、購入した「EasyCard」を持っていたので、スムーズに乗車。ここまで何も問題なしと思っていたら、スマホに着信。職場の電話番号である。一度は無視したのだが、繰り返しかかってくる。え~い、あきらめて、空港から2つ目の駅(山鼻)で、電話に出ながらホームに下りる。高架のホームは緑の山林に囲まれ、全く人家の見えない駅で、一瞬、不安を感じたが、次の電車が来るはずと信じて下りる。電話は職場の会計課長からの問い合わせで、「いや私、今日は休暇で東京にいないんですよ~」とごにょごにょ答えて、なんとか解決。次の電車で台北に向かった。
中山駅近くのホテルにチェックイン。この日は25度を超す夏日。コートを脱いだのはもちろん、薄手の衣類に着替え、セーターも手に持って、観光に出かける。まず、故宮博物院へ。入館は4時近くになってしまうが、この日は金曜日で、夜9時まで延長開館しているのをリサーチ済みだったので、焦らない。士林駅前から「紅30」のバスに乗ると、故宮博物院の構内に入って、本館の下まで連れていってくれることを初めて知った。
前回、私が2016年5月に参観したときは撮影禁止だったが、その後、2016年9月から撮影解禁の試行が行われ、2016年12月から正式に写真撮影、ビデオ撮影を許可された。ただし、一部の作品には「撮影禁止」マークあり。観客はマナーを守っていて、混乱はなかった。
【101室】「慈悲と知恵-宗教彫塑芸術」
【102室】オリエンテーション・ギャラリー
【106室】「集瓊藻-故宮博物院所蔵珍玩精華展」
【108室】「貴族の栄華-清代家具展」
【105,107室】「ブランドの物語─乾隆帝の文物コレクションと包装の美」
乾隆帝のコレクションの「包装(収納法)」の美しさを主題とし、文物の形態にあわせて誂えた保存箱、考証やカタログの作成、書籍の表装などを取り上げる。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6d/a5/dec13769f319b6323fa49bc398cc569b.jpg)
「明帝后像」の布表紙。画像は大明太祖洪武帝・朱元璋の妙に柔和な肖像。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5d/a4/94e3463f17f6d0122e9f7c4ee725555e.jpg)
乾隆帝が自分の御製詩集の表紙などに使った染布。漢籍好きなら見覚えがあるかも。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/62/aa/3c77192843a5990796bb731271ca67aa.jpg)
【104室】故宮博物院所蔵善本古書精粋
古籍の写真を自由に撮らせてくれるなんて太っ腹! ただし国宝クラスの「永楽大典」や「四庫全書」は撮影禁止だった。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/35/9a/5192400de205ea739895aaa56a527b9e.jpg)
珍しいものもあった。日本で刊行された「唐土名勝図会」(文化3年、大坂書肆龍章堂刊)、振り仮名つき。木村孔恭著とあって、すぐに分からなかったけど木村蒹葭堂である。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0b/3d/034106616637e72e4d757f16db261d16.jpg)
【103室】故宮博物院所蔵清代歴史文書精選
104室がライブラリーなら、こちらはアーカイブ資料。皇帝が朱批を書き入れた奏摺(清の皇帝には満州語の朱批奏摺も残る)、皇帝の起居注冊、実録など、歴史好きには楽しい。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6e/5b/deaa23efa99b29757148a69f0f6cdb5b.jpg)
台湾史に関するアーカイブ資料も特集されていた。銅版画「欽定平定台湾紀略」(乾隆帝による台湾平定の記念画)6枚にはちょっとびっくりした。これを平然と展示できるのは、今の台湾の自信かもしれない。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/68/23/7d094975c2f33e8ef4985e03fd5e3677.jpg)
【210,212室】「特別展 国宝の誕生-故宮書画精華-」
ここはさすがに全面的に撮影禁止。しかし堪能した。五代の『秋林群鹿』、宋『文会図』、唐『牧馬図』など夢のような古画を間近に見ることができ、元・倪瓉(げいさん)の『江亭山色』、清・王翬(おうき)の『夏山烟雨図』の涼やかな趣きもよかった。明の唐寅、仇英も好き。書は王羲之の『遠宦帖』。宋の『四家法書』は蔡襄、蘇軾、黄庭堅、米芾(べいふつ)の書を一気に眺めることができる奇跡の名品。けっこう熱心に見ている若者がいて感心した。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3b/97/7125f43ff006e6c85c2f1f4377435a0a.jpg)
【203室】「心に適う-明永楽帝の磁器」
これも非常に楽しかった展示。「潔素にして瑩然,甚だ心に適う」は、永楽帝自らが好む陶磁器(殊に白磁)を賛美した言葉だという。本展は、永楽帝の時代に作られた白磁、青花磁、紅釉磁など紹介。器のかたちや文様に、チベットおよび中央アジア、西アジアとの文化交流の軌跡が見られるのが興味深い。
【201,205,207室】「土の百変化-中国歴代陶磁器展」
【204,206室】「筆墨は語る-中国歴代法書選」
【208室】「別有可観-寄贈・寄託書画展」
【301室】「鐘・鼎の銘文-漢字の源流展」
【303室】「貴貴琳瑯游牧人-故宮所蔵清代モンゴル・ウイグル・チベット文物特別展」
【304室】「若水澄華-国立故宮博物院所蔵玻璃文物特別展」
【305,307室】「古代青銅器の輝き-中国歴代銅器展」
【306,308室】「敬天格物-中国歴代玉器展」
【302室】「南北故宮 国宝薈萃」
「翠玉白菜」と「肉形石」。これも自由に写真が撮れる。3階に上がったのは夜の7時近くて、もうこの展示室にも数えるほどの人の姿しかなかった。東京国立博物館での喧噪は何だったのか。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/54/0f/538cac35b2090305d85920f9deda73e4.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/17/52/bec420b47b2877a3d69a7b3d2b12a46e.jpg)
眼も足も疲れてきたので、最後は少し急いだが、とにかく全室まわってきた。やっぱり故宮博物院は1年に1回くらいは来てみるものだなあ。そして、ゆっくり落ち着いて見るなら夜間開館がねらい目であることがよく分かった。満足。
(12/18記)