見もの・読みもの日記

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伊勢・熊野・沖ノ島/伊勢神宮と神々の美術(東京国立博物館)

2009-08-11 00:04:57 | 行ったもの(美術館・見仏)
東京国立博物館 第62回式年遷宮記念 特別展『伊勢神宮と神々の美術』(2009年7月14日~9月6日)

 平成25年(2013)に行われる第62回式年遷宮を記念しての展覧会。会場に入ると、冒頭の展示室は文書類が多くて、意外と地味。一般客にはアピールしないだろうな。私は、学生時代の専攻が国文学(上代文学)なので、愛知・大須観音所蔵の『真福寺本古事記』(現存最古の写本、粘葉装?)など、それなりに感銘深く眺めた。名古屋・蓬左文庫の『続日本紀』(現存最古、金沢文庫旧蔵)は巻子本なのだな。開いていたのは、天平12年、藤原広嗣の乱に関する箇所らしかった。

 ふと目が留まったのは、三重・金剛証寺の雨宝童子立像。豊かな垂らし髪の頭上にちょこんと五輪塔を戴き、黄金の杖をステッキのようにつく。左手には宝珠。ふざけたような姿で、丸顔に愛らしい笑みを浮かべている。金剛証寺へは、一度行ってみたいと思いながら、あまり交通の便がよくないので実現していなかった。思わぬところでお会いできてうれしい。

 次室「遷宮と古神宝」に進むと、突然「沖ノ島は…」という説明に出くわして、あれっ?と思う。実は、このセクションは、伊勢神宮に加えて、福岡・宗像大社(沖ノ島)や鎌倉・鶴岡八幡宮等に伝わる古神宝をあわせて展示しているのだが、全く心の準備ができていなかったのだ。さらに「今に伝える神宝」では、近代に製作・奉納されたお宝を展示。昭和4年作『玉纏御太刀』は装飾パーツてんこもりで、女子高生のデコ電みたいである。同年作『須賀利御太刀』は、太刀の束に赤い糸で纏い付けられた2枚のトキの羽根が異彩を放つ。燃え立つ曙のような美しさ。これは、トキが乱獲されるのも分かるわ…。Wikiによれば、次回遷宮の分までトキの羽根は確保されているそうだが、伝統のデザインと素材を守るのも大変である。

 最後の「神々の姿」で、また驚きの再会が待っていた。展示室に入ると、まず大分・奈多宮の八幡三神坐像3体と若宮神坐像6体が目に入る(→八幡奈多宮についてはこちら)。私は仏像も好きだが、動きや表情を極限まで抑えた神像もいいなあ、と思ってしばし見とれる(前日に出光美術館で見た、漢代の陶俑に通じるところがあるかも)。そして、振り返って驚いた。見覚えのある、大ぶりな神像。和歌山・熊野速玉大社の男神(熊野速玉大神坐像)と女神(夫須美大神坐像)ではないか。

 女神像は、袖に隠した両手を、左肩寄りに拱く。逆に下半身は右膝が強調されている。左右対称性を崩したところに、人間の姿勢に近いナチュラルさが感じられる。対して、男神は左右対称性をほとんど崩さない(少し左肩が下がっている?)。太い眉、大きな目、しっかりした鼻筋。どうも日本人の顔には見えない。筒型の冠は(東寺の)兜跋毘沙門天に似ている。

 自分のブログを検索したら、2005年1月に世田谷美術館の『祈りの道―吉野・熊野・高野の名宝』で拝見し(このときは若宮を加えて三神)、同年5月に東博の『新指定国宝・重要文化財』でも拝見している(さらに国常立命坐像を加えて四神)。それにしても、この2神がおいでになっているのなら(~8/30まで)もう少し宣伝してもよさそうなものを、熊野は神武東征で平定される側なので、伊勢神宮メインの展覧会では取り上げにくいのかな、と勘ぐってみる。なお、チラシには京都・松尾大社の男神坐像が取り上げられている。確かに、制作年代は、こちらのほうがやや古いらしい。眉をひそめた険しい表情は、怒り天神(菅原道真像)に継承されていくように思う。

■展覧会公式サイト
http://www.iseten2009.jp/
スタッフブログ6~7月頃に掲載された準備(搬出)作業の様子が面白い。その一方で、神像や仏像のこういう写真をむやみに流していいのかな、と思わないでもない。やっぱり私は「仏教(信仰)2に観光8」(byみうらじゅん)の立場。

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