連休後半は、大阪を中心に長旅をしてきた。
連休前日(5/2)
仕事が終わってから、新千歳空港発→広島へ飛ぶ。
この日、JR札幌~新千歳空港間の快速エアポートがしばらく止まったことを翌日のニュースで知る。ほとんどタッチの差。危ないところだった…。
初日(5/3)
宮島観光。新幹線で移動して、大阪泊。
2日目(5/4)
黒川古文化研究所 第111回展観『松-美と徳の造形』
大阪市立美術館 特別展『山の神仏-吉野・熊野・高野』
3日目(5/5)
京都国立博物館 特別展覧会『南山城の古寺巡礼』
龍谷ミュージアム 『チベットの仏教世界 もうひとつの大谷探検隊』
大阪歴史博物館 特別展『上方の浮世絵-大坂・京都の粋と技』
4日目(5/6)
『平成26年度 京都春季非公開文化財特別公開』大徳寺本坊、妙蓮寺、尊勝院、知恩院大方丈・方丈庭園
京都市美術館 コレクション展第1期『恋する美人画-女性像に秘められた世界とは』
六波羅蜜寺
今朝(5/7)京都を発って、新幹線で東京に移動。埼玉でひとつ仕事をこなして、札幌に帰宅した。明日から、また仕事。
見て来たもののことは、少しずつ書きとめる予定。東京の記事と交錯することになるが…。
車中移動が多くて、本もずいぶん読めたのが嬉しい。
■三井記念美術館 特別展『超絶技巧!明治工芸の粋-村田コレクション一挙公開-』(2014年4月19日~7月13日)
東へ西へ飛び回るゴールデンウィーク。記憶容量をオーバーする前に、行ったもの・見たものについて、ひとことずつでも書いておこう。先週末は土曜の朝に札幌を出て、昼前に東京着。同美術館のカフェでランチにしたかったので、ここから展覧会めぐりをスタートにする。
本展は、村田理如(まさゆき)氏の収集による京都・清水三年坂美術館の所蔵品から、七宝、金工、漆工、牙彫(げちょう、象牙彫刻)など、精緻きわまる明治工芸を紹介。七宝、金工は何度か見たことがあったが、今回、驚いたのは、安藤緑山(1885頃-1955)の牙彫。その最も大型の作品『竹の子、梅』(別名:竹の子と梅)は、出品目録の「ジャンル」が「牙彫・木彫」になっていて紛らわしいが、全て一本の象牙から彫り出したもの。そういえば象牙の形状って、竹の子に似ている。
しかし、何を考えてここまで、皮のめくれ具合、ほつれ具合まで、似せようとしたのか、理由が見つからないのが凄い。だいたい、多くの展覧会では、観客はタイトルや解説を気にして作品をよく見ていないのだが、この展覧会では、素直に作品に感嘆している人が多くて、気持ちよかった。
安藤緑山って何者?と思って調べようとしたら、Wikiに「彼自身の素性は全く不明で解明の手がかりもないと言われている」とあった。ううむ。ほかにも、蜜柑、仏手柑、バナナなど、数種の作品が出ているが、照明の加減か、『竹の子、梅』ほどの迫真性はない。ただ、本展の展示図録の写真がなぜか凄くて、本物と見間違えるレベルに撮られている。これはこれで、一見の価値あり。
■出光美術館 日本の美・発見IX『日本絵画の魅惑』(2014年4月5日~6月8日)
館蔵コレクションによる、時代やジャンルを超えた絵画名品展。そうか、全て出光コレクションなのか、と出品リストを確認して、あらためて驚く。第1室には『橘直幹申文絵巻』と『長谷寺縁起絵巻』があって、絵巻好きのツボが刺激される。南北朝時代の『山越阿弥陀図』や室町時代の『六道・十王図』も好き。
第2室の近世初期風俗画、万国人物図屏風も面白かった。見たことのあるものが多かったけれど、小さめの二曲一隻屏風『桜下弾弦図屏風』は記憶にないもので、目を見張った。肉筆浮世絵は、ふだんあまり見ないジャンルなので、こういうかたちで触れることができたのは、よい機会だったと思う。
近世絵画は、文人画、琳派、狩野派、等伯とバラエティに富んでいるが、私は文人画がいちばん好きだ。酒井抱一の『風神雷神図屏風』は、このあと行く予定の東博『建仁寺』のための肩慣らしというか、目慣らし。最後は仙さん。
■千葉市美術館 『光琳を慕う-中村芳中』(2014年4月8日~5月11日)
江戸時代後期に大坂を中心に活動した画家、中村芳中(-1819)を特集。何と言って代表作が思い浮かぶわけではないけれど、琳派の展覧会でおなじみの画家のひとりなので、見てきた。芳中本人の作品だけでなく、光琳および、光琳と芳中をつなぐ世代の琳派の作品も展示されていて、面白かった。さらに芳中が、木村蒹葭堂をめぐる文人文化圏のひとりであったことを初めて意識した。それから、芳中が出版メディア(刊本)に多数の活躍の跡を残しているのを見て、この時代の「絵画史」研究って大変だろうなと感じた。
東へ西へ飛び回るゴールデンウィーク。記憶容量をオーバーする前に、行ったもの・見たものについて、ひとことずつでも書いておこう。先週末は土曜の朝に札幌を出て、昼前に東京着。同美術館のカフェでランチにしたかったので、ここから展覧会めぐりをスタートにする。
本展は、村田理如(まさゆき)氏の収集による京都・清水三年坂美術館の所蔵品から、七宝、金工、漆工、牙彫(げちょう、象牙彫刻)など、精緻きわまる明治工芸を紹介。七宝、金工は何度か見たことがあったが、今回、驚いたのは、安藤緑山(1885頃-1955)の牙彫。その最も大型の作品『竹の子、梅』(別名:竹の子と梅)は、出品目録の「ジャンル」が「牙彫・木彫」になっていて紛らわしいが、全て一本の象牙から彫り出したもの。そういえば象牙の形状って、竹の子に似ている。
しかし、何を考えてここまで、皮のめくれ具合、ほつれ具合まで、似せようとしたのか、理由が見つからないのが凄い。だいたい、多くの展覧会では、観客はタイトルや解説を気にして作品をよく見ていないのだが、この展覧会では、素直に作品に感嘆している人が多くて、気持ちよかった。
安藤緑山って何者?と思って調べようとしたら、Wikiに「彼自身の素性は全く不明で解明の手がかりもないと言われている」とあった。ううむ。ほかにも、蜜柑、仏手柑、バナナなど、数種の作品が出ているが、照明の加減か、『竹の子、梅』ほどの迫真性はない。ただ、本展の展示図録の写真がなぜか凄くて、本物と見間違えるレベルに撮られている。これはこれで、一見の価値あり。
■出光美術館 日本の美・発見IX『日本絵画の魅惑』(2014年4月5日~6月8日)
館蔵コレクションによる、時代やジャンルを超えた絵画名品展。そうか、全て出光コレクションなのか、と出品リストを確認して、あらためて驚く。第1室には『橘直幹申文絵巻』と『長谷寺縁起絵巻』があって、絵巻好きのツボが刺激される。南北朝時代の『山越阿弥陀図』や室町時代の『六道・十王図』も好き。
第2室の近世初期風俗画、万国人物図屏風も面白かった。見たことのあるものが多かったけれど、小さめの二曲一隻屏風『桜下弾弦図屏風』は記憶にないもので、目を見張った。肉筆浮世絵は、ふだんあまり見ないジャンルなので、こういうかたちで触れることができたのは、よい機会だったと思う。
近世絵画は、文人画、琳派、狩野派、等伯とバラエティに富んでいるが、私は文人画がいちばん好きだ。酒井抱一の『風神雷神図屏風』は、このあと行く予定の東博『建仁寺』のための肩慣らしというか、目慣らし。最後は仙さん。
■千葉市美術館 『光琳を慕う-中村芳中』(2014年4月8日~5月11日)
江戸時代後期に大坂を中心に活動した画家、中村芳中(-1819)を特集。何と言って代表作が思い浮かぶわけではないけれど、琳派の展覧会でおなじみの画家のひとりなので、見てきた。芳中本人の作品だけでなく、光琳および、光琳と芳中をつなぐ世代の琳派の作品も展示されていて、面白かった。さらに芳中が、木村蒹葭堂をめぐる文人文化圏のひとりであったことを初めて意識した。それから、芳中が出版メディア(刊本)に多数の活躍の跡を残しているのを見て、この時代の「絵画史」研究って大変だろうなと感じた。
○東京国立博物館 本館・特別5室 特別展『キトラ古墳壁画』(2014年4月22日~年5月18日)
明日の夜からまた旅に出てしまうので、慌ただしいが、連休前半の最大イベント『キトラ古墳壁画壁画』展の記事だけ、書いておくことにした。東京で開催中の各種展覧会の中で、いちばん混むと予想していたので、ねらったのは平日の4月28日(月)。朝9時には上野駅について、簡単な朝食を済ませ、9時20分には東博の門に並んだ。だいたい開門30分前を目安に来る人が多いので、9時30分前後から一気に人が増え、5分か10分のうちに列が二倍くらいに伸びた。
9時40分頃(かな?)早くも開門。列を崩さないよう、構内に入り、キトラ古墳壁画の列と、建仁寺の列に分けられる。前日会った友人から「建仁寺は全然空いていた」と聞いていたので、そっちに並ぶ人が多少ともいることに驚く。9時50分頃になると、正門がフリーになって、三々五々入ってきたお客さんが、それぞれの列に並んでいく。私は本館の玄関近くにいたが、本館を回り込むように延びた列の最後尾は、振り返っても、もう確認できなかった。
10時少し前に開場。列を崩さないよう、誘導されて玄関を入り、大階段の左奥の入口から会場に入る。まず、目に入るのは、キトラ古墳の位置を示した明日香村の航空写真。右手に実物大(?)に写真を引き伸ばした古墳内部の模型。うわ!おお!と足が止まりかける。実際、多くのお客さんは、順序正しく展示を見ようとしてここで止まるのだが、いや、ここは、と目を塞ぎ、止まっている人をかわして、奥へ急ぐ。
すると、まがりくねった順路のつきあたりのホールに、平たいケースが並んでいた。通路を何列かに仕切るロープが張られていて、友人が「最前列に出るまでまた並ぶ」と話していたことを思い出したが、まだそれほど人がいないので、すぐケースに貼りつく。玄武→白虎→朱雀だったかな。思い切り身を乗り出して、嘗めるように眺め、次のケースに移動する。最後のケースは十二支だが「子」「丑」のみ本物で「寅」は複製写真。これも前日、友人に聞いていたので、ガッカリしないで済んだ。
だんだん混んできたので、後の人に場所を譲って、先に進む。高松塚古墳壁画のパネルを眺めながら出口まで行き、「戻ってもいいですか?」と聞いたら「一度出て再入場してください」と言われたので、指示に従う。
再入場して、入口の明日香村の写真をしみじみ眺める。キトラ古墳は、いわゆる「明日香村」からはずいぶん南に離れたところにあるのだ。写真による古墳内部の模型は非常に面白かった。多くの観客は、いちおう四神には目を止めるけど、小さな十二神にはほとんど気がつかない。特に子神・丑神は、赤い竿のような持ちものしか見えないからなあ。寅神は、ちゃんと顔をのぞかせているにもかかわらず、気にとめてもらえていなくて可哀相だった。代わりに、ここ注目~と騒いであげたい気持ち。もしや見落とされている壁画の痕跡がないかと(←ないw)写真の壁を嘗め回すように探索する。ふっと上を見上げるまで、天井に「天文図」が再現されていることに気づかなかった。
ほかにも会場内には(壁画に行きつくまでの待ち時間を退屈させないよう)詳しい解説パネルや陶板複製や墳墓からの出土品が展示されていたが、すでに壁際に長い列ができていて、壁際のパネルは全然読めなかった。まあ仕方ないか…と諦めて、外に出る。ショップで図録と朱雀のTシャツ(派手なオレンジ色!)を購入。
東洋館の地下に行って、VRシアターの「キトラ古墳」のチケットを購入。12:00上映開始までの1時間近くを、中国の絵画『文人たちの肖像』(2014年4月1日~5月11日)と中国の書跡『漢時代の書』(2014年4月8日~6月8日)を見て過ごす。
VRシアターがこんなに観客で埋まることは珍しいと思うが、それでも満席ではなかった。作品はまあまあ。壁画だけを見て帰るよりは、ここで多少知識を増やしていくほうがいいのではないかと思うが、以前、飛鳥資料館で見た、壁画の剥ぎ取り工程を編集したビデオのほうが衝撃的だった記憶がある。
このあと、平成26年の『新指定 国宝・重要文化財』(2014年4月22日~5月11日)を含む平常展示を見て、特別展『栄西と建仁寺』(2014年3月25日~5月18日)を見て、17時まで東博構内を出なかったが、全然飽きなかった。至福の1日。
参考:
平成22年度春期特別展『キトラ古墳壁画四神』(飛鳥資料館)
平成20年度春期特別展『キトラ古墳壁画十二支-子・丑・寅-』(飛鳥資料館)
キトラ古墳一帯は、保存と公開を兼ねそなえた「古墳公園」化する計画があるらしい。大丈夫なのかな…。まあ観光資源化したほうが、かえって安全という一面もあるのかもしれない。
明日の夜からまた旅に出てしまうので、慌ただしいが、連休前半の最大イベント『キトラ古墳壁画壁画』展の記事だけ、書いておくことにした。東京で開催中の各種展覧会の中で、いちばん混むと予想していたので、ねらったのは平日の4月28日(月)。朝9時には上野駅について、簡単な朝食を済ませ、9時20分には東博の門に並んだ。だいたい開門30分前を目安に来る人が多いので、9時30分前後から一気に人が増え、5分か10分のうちに列が二倍くらいに伸びた。
9時40分頃(かな?)早くも開門。列を崩さないよう、構内に入り、キトラ古墳壁画の列と、建仁寺の列に分けられる。前日会った友人から「建仁寺は全然空いていた」と聞いていたので、そっちに並ぶ人が多少ともいることに驚く。9時50分頃になると、正門がフリーになって、三々五々入ってきたお客さんが、それぞれの列に並んでいく。私は本館の玄関近くにいたが、本館を回り込むように延びた列の最後尾は、振り返っても、もう確認できなかった。
10時少し前に開場。列を崩さないよう、誘導されて玄関を入り、大階段の左奥の入口から会場に入る。まず、目に入るのは、キトラ古墳の位置を示した明日香村の航空写真。右手に実物大(?)に写真を引き伸ばした古墳内部の模型。うわ!おお!と足が止まりかける。実際、多くのお客さんは、順序正しく展示を見ようとしてここで止まるのだが、いや、ここは、と目を塞ぎ、止まっている人をかわして、奥へ急ぐ。
すると、まがりくねった順路のつきあたりのホールに、平たいケースが並んでいた。通路を何列かに仕切るロープが張られていて、友人が「最前列に出るまでまた並ぶ」と話していたことを思い出したが、まだそれほど人がいないので、すぐケースに貼りつく。玄武→白虎→朱雀だったかな。思い切り身を乗り出して、嘗めるように眺め、次のケースに移動する。最後のケースは十二支だが「子」「丑」のみ本物で「寅」は複製写真。これも前日、友人に聞いていたので、ガッカリしないで済んだ。
だんだん混んできたので、後の人に場所を譲って、先に進む。高松塚古墳壁画のパネルを眺めながら出口まで行き、「戻ってもいいですか?」と聞いたら「一度出て再入場してください」と言われたので、指示に従う。
再入場して、入口の明日香村の写真をしみじみ眺める。キトラ古墳は、いわゆる「明日香村」からはずいぶん南に離れたところにあるのだ。写真による古墳内部の模型は非常に面白かった。多くの観客は、いちおう四神には目を止めるけど、小さな十二神にはほとんど気がつかない。特に子神・丑神は、赤い竿のような持ちものしか見えないからなあ。寅神は、ちゃんと顔をのぞかせているにもかかわらず、気にとめてもらえていなくて可哀相だった。代わりに、ここ注目~と騒いであげたい気持ち。もしや見落とされている壁画の痕跡がないかと(←ないw)写真の壁を嘗め回すように探索する。ふっと上を見上げるまで、天井に「天文図」が再現されていることに気づかなかった。
ほかにも会場内には(壁画に行きつくまでの待ち時間を退屈させないよう)詳しい解説パネルや陶板複製や墳墓からの出土品が展示されていたが、すでに壁際に長い列ができていて、壁際のパネルは全然読めなかった。まあ仕方ないか…と諦めて、外に出る。ショップで図録と朱雀のTシャツ(派手なオレンジ色!)を購入。
東洋館の地下に行って、VRシアターの「キトラ古墳」のチケットを購入。12:00上映開始までの1時間近くを、中国の絵画『文人たちの肖像』(2014年4月1日~5月11日)と中国の書跡『漢時代の書』(2014年4月8日~6月8日)を見て過ごす。
VRシアターがこんなに観客で埋まることは珍しいと思うが、それでも満席ではなかった。作品はまあまあ。壁画だけを見て帰るよりは、ここで多少知識を増やしていくほうがいいのではないかと思うが、以前、飛鳥資料館で見た、壁画の剥ぎ取り工程を編集したビデオのほうが衝撃的だった記憶がある。
このあと、平成26年の『新指定 国宝・重要文化財』(2014年4月22日~5月11日)を含む平常展示を見て、特別展『栄西と建仁寺』(2014年3月25日~5月18日)を見て、17時まで東博構内を出なかったが、全然飽きなかった。至福の1日。
参考:
平成22年度春期特別展『キトラ古墳壁画四神』(飛鳥資料館)
平成20年度春期特別展『キトラ古墳壁画十二支-子・丑・寅-』(飛鳥資料館)
キトラ古墳一帯は、保存と公開を兼ねそなえた「古墳公園」化する計画があるらしい。大丈夫なのかな…。まあ観光資源化したほうが、かえって安全という一面もあるのかもしれない。