見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

2014年4月@東京:明治工芸(三井)+日本絵画(出光)+中村芳中(千葉市美)

2014-05-03 16:36:49 | 行ったもの(美術館・見仏)
三井記念美術館 特別展『超絶技巧!明治工芸の粋-村田コレクション一挙公開-』(2014年4月19日~7月13日)

 東へ西へ飛び回るゴールデンウィーク。記憶容量をオーバーする前に、行ったもの・見たものについて、ひとことずつでも書いておこう。先週末は土曜の朝に札幌を出て、昼前に東京着。同美術館のカフェでランチにしたかったので、ここから展覧会めぐりをスタートにする。

 本展は、村田理如(まさゆき)氏の収集による京都・清水三年坂美術館の所蔵品から、七宝、金工、漆工、牙彫(げちょう、象牙彫刻)など、精緻きわまる明治工芸を紹介。七宝、金工は何度か見たことがあったが、今回、驚いたのは、安藤緑山(1885頃-1955)の牙彫。その最も大型の作品『竹の子、梅』(別名:竹の子と梅)は、出品目録の「ジャンル」が「牙彫・木彫」になっていて紛らわしいが、全て一本の象牙から彫り出したもの。そういえば象牙の形状って、竹の子に似ている。

 しかし、何を考えてここまで、皮のめくれ具合、ほつれ具合まで、似せようとしたのか、理由が見つからないのが凄い。だいたい、多くの展覧会では、観客はタイトルや解説を気にして作品をよく見ていないのだが、この展覧会では、素直に作品に感嘆している人が多くて、気持ちよかった。

 安藤緑山って何者?と思って調べようとしたら、Wikiに「彼自身の素性は全く不明で解明の手がかりもないと言われている」とあった。ううむ。ほかにも、蜜柑、仏手柑、バナナなど、数種の作品が出ているが、照明の加減か、『竹の子、梅』ほどの迫真性はない。ただ、本展の展示図録の写真がなぜか凄くて、本物と見間違えるレベルに撮られている。これはこれで、一見の価値あり。

出光美術館 日本の美・発見IX『日本絵画の魅惑』(2014年4月5日~6月8日)

 館蔵コレクションによる、時代やジャンルを超えた絵画名品展。そうか、全て出光コレクションなのか、と出品リストを確認して、あらためて驚く。第1室には『橘直幹申文絵巻』と『長谷寺縁起絵巻』があって、絵巻好きのツボが刺激される。南北朝時代の『山越阿弥陀図』や室町時代の『六道・十王図』も好き。

 第2室の近世初期風俗画、万国人物図屏風も面白かった。見たことのあるものが多かったけれど、小さめの二曲一隻屏風『桜下弾弦図屏風』は記憶にないもので、目を見張った。肉筆浮世絵は、ふだんあまり見ないジャンルなので、こういうかたちで触れることができたのは、よい機会だったと思う。

 近世絵画は、文人画、琳派、狩野派、等伯とバラエティに富んでいるが、私は文人画がいちばん好きだ。酒井抱一の『風神雷神図屏風』は、このあと行く予定の東博『建仁寺』のための肩慣らしというか、目慣らし。最後は仙さん。

千葉市美術館 『光琳を慕う-中村芳中』(2014年4月8日~5月11日)

 江戸時代後期に大坂を中心に活動した画家、中村芳中(-1819)を特集。何と言って代表作が思い浮かぶわけではないけれど、琳派の展覧会でおなじみの画家のひとりなので、見てきた。芳中本人の作品だけでなく、光琳および、光琳と芳中をつなぐ世代の琳派の作品も展示されていて、面白かった。さらに芳中が、木村蒹葭堂をめぐる文人文化圏のひとりであったことを初めて意識した。それから、芳中が出版メディア(刊本)に多数の活躍の跡を残しているのを見て、この時代の「絵画史」研究って大変だろうなと感じた。
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