見もの・読みもの日記

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板谷波山と小杉放菴/出光佐三、美の交感(出光美術館)

2024-06-20 21:29:29 | 行ったもの(美術館・見仏)

出光美術館 出光美術館の軌跡 ここから、さきへII『出光佐三、美の交感 波山、放菴、ルオー』(2024年6月1日~7月7日)

 休館を控えた展覧会の第2弾は、同館の創設者・出光佐三(いでみつさぞう、1885-1981)と同時代を生きた作家たちにスポットライトを当てる。陶芸家の板谷波山(1872-1963)と画家の小杉放菴(1881-1964)は佐三と親しく交流した。さらに佐三が作品の蒐集に意を注いだ2人の画家、ジョルジュ・ルオー(1871-1958)とサム・フランシス(1923-1994)の絵画も展示する。

 板谷波山は、葆光釉という独特の技法で有名だが、私はあれが好きではないので、あまり積極的に見てこなかった。今回、初めて50件を超える作品を一気に見たら、いろいろ発見があった。地味な植物をうんと大きく描いた『彩磁八ツ手文手焙』や『彩磁笹文花瓶』は私好みの作品。単色の『紫金磁保布良文花瓶』は磁州窯っぽいと感じた。また昭和10年代頃から猛烈に古典を学んでいて、『青磁下蕪花瓶』などは、伝世の名品と言われたら私は信じてしまう。ところが『青磁蓮口花瓶』は、青磁の肌合いは古典作品のままなのに、頸にチューリップの花を載せたような不思議なかたちをしている。『呉須絵花瓶』は、かたちは青磁にありがちな(双魚耳みたいな)形状なのに表面を色絵で飾っていて面白かった。

 小杉放菴(放庵)も実はあまり意識して見たことがなかった。『出関老子』は遠くの城壁と楼閣(函谷関)を背景に、黒牛と牛飼いと老子が佇んでいるのだが、洋画のような明るい色彩に、はじめキリストか?と思った。高さ180cm近い大きな作品だが、細川護立家の暖炉の上の装飾として制作されたのだという。『湧泉』は東大安田講堂の壁画の一部の習作だという。ああ、こんな純日本人ふうの平たい顔の女子が描かれていたんだっけ、と微笑ましくなった。放菴の、のびのびと平和な感じは、大正という時代性かなあと思う。しかし放菴は他にも多様な作風を見せている。大雅や玉堂っぽい墨画もあるし、『梅花小禽』屏風二曲一双は、緻密に計算されたデザイン。緊張感が高すぎてくつろげない。

 出口近くに波山の『青磁蓮花口耳付花瓶』と『天目茶碗(銘:命乞い)』があって、潔癖症の波山は、ちょっとでも気に入らない作品は壊してしまった。そこを佐三が「命乞い」して譲ってもらったのがこの2点。天目茶碗は日常使いにしていたそうだ。また放菴の『天のうづめの命』は、戦後、出光興産のタンカー日章丸(二世)の竣工を記念して制作され、船内に掛けられていたものだという。こういう美術品にまつわる逸話は嫌いじゃない。

 サム・フランシスは全く知らなかったが、佐三が仙厓のコレクターだと知って意気投合したみたいな話が書かれていて、ええ?と驚いた。まあ芸術はいろんなものを跳び越えるのかもしれない。


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