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見もの・読みもの日記

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武士のイメージ/国宝の名刀と甲冑・武者絵(三井記念美術館)

2025-05-21 22:47:33 | 行ったもの(美術館・見仏)

三井記念美術館 『国宝の名刀と甲冑・武者絵、特集展示 三井家の五月人形』(2025年4月12日~6月15日)

 国宝の短刀2点『名物 日向正宗』と『名物 徳善院貞宗』をはじめ、重要文化財7点を含む刀剣、および蒔絵の拵などを一挙に公開する。と聞いても、私はあまり刀剣に興味がないので、今回の展覧会は行かなくてもいいかな、くらいに考えていた。しかし武者絵やら五月人形やら、いろいろまとめて出ているらしいと分かったので、見に行った。

 展示室1~2は刀剣と刀装具。5振出ていた刀剣は、すべて短刀だった。国宝の短刀『日向正宗』は、飾りもなく反りもなく、金属そのものを投げ出したような造りで、かえってその無機質な美しさに引き付けられた。スケート靴のブレードを連想した。

 象彦製『宇治川先陣蒔絵硯箱』(深い)と『宇治川先陣蒔絵両紙箱』(やや浅い)は一組の作品(明治時代)。三井家の先祖は佐々木氏であることからこの図像が好まれたという。硯箱には、漆黒の背景に、くさむらのような波を掻き分け、人馬一体となって進む佐々木高綱の孤独な姿を描く。料紙箱には、浅瀬にたたずむ黒馬、赤い弓を横たえて前方を眺める梶原景季。勝者と敗者なのだが、どちらもカッコいい。

 展示室3(如庵茶室)は、武家好みの簡素な道具の取り合わせだった。床の間の掛け物が『八幡太郎義家像』(三井高就筆)というのも珍しかった。佐々木氏の先祖は源氏だものな。展示室4は、名刀(太刀多し)、甲冑に加えて、狩野派の『八幡太郎義家図』や象彦製『八幡太郎義家蒔絵額』が出ていた。そして亀岡規礼筆『酒呑童子絵巻』(江戸時代、19世紀、北三井家旧蔵)。解説によれば、根津美術館本(伝・狩野山楽筆)の図像に近いということだった。この翌日にサントリー美術館の『酒呑童子ビギンズ』展を見に行ったので、同時期に展示してくれてありがとうございます。

 展示室5には『十二類合戦絵巻』3巻(江戸時代、19世紀)が、けっこう広く開いていた。よく見る作品だが、こんな物語だったかとあらためて確認した。最後は首謀者のタヌキが出家して、山里に庵を結ぶのだな。お供のタヌキもいて、大原の建礼門院みたいだった。

 そして展示室5~7に並んでいたのは、五月人形、五月飾りの数々。『木彫能人形』は6躯セット。頭巾を被った舞人と肩衣・袴の囃子方5人から成る。これは欲しい! ミニチュアの五月飾(2セット、江戸時代、19世紀)は、大名行列を構成するらしく、纏、馬印、挟箱などに加えて、大筒、火縄銃、ゲベール銃(!)まであって驚いた。ひな人形に付随するさまざまなミニチュア道具は見たことがあるが、五月飾りにもあるのだな。

 三井家の雛人形は、ひな祭りの季節に「三井家のおひなさま」として展示するのが恒例になっているが、「三井家の五月人形を展示する機会は今までほとんどありませんでした」とのこと。確かにほかの美術館・博物館でも、これだけ多数の五月人形の展示は記憶にない。まだいろいろ調査中らしく、不備な点はご容赦くださいという趣旨の弁明が添えられていて、奥ゆかしく感じた。三井家では伝統的に、漢字1字か2字で個人を表す符丁「御印(おしるし)」が使われており、今回は御印(所蔵者)ごとに五月人形・五月飾りが展示されていた。いずれも明治~昭和の作と見られる。

 いま五月人形というと、ほとんどが兜飾りではないかと思う。しかし、この頃は、甲冑の揃った具足飾りだったり、華やかな飾り馬がいたり、為朝武者人形、神功皇后と武内宿祢、八幡太郎義家、矢の根五郎、楠正成など、バラエティがあって楽しい。赤と黒のおしゃれな制服の軍楽隊人形(明治時代)もあってびっくりした。調べたら、実際に明治期の陸軍軍楽隊は、この配色の制服だったようである。

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