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見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

2023年3月関西旅行:春日大社国宝殿、二月堂、奈良博

2023-03-15 22:06:15 | 行ったもの(美術館・見仏)

春日大社国宝殿 特別展・春日若宮式年造替奉祝『杉本博司-春日神霊の御生(みあれ) 御蓋山そして江之浦』(2022年12月23日〜2023年3月13日)

 夕方4時近くに鉄奈良駅に到着し、急いで春日大社へ。杉本博司氏監修の本展を見たかったのである。1階のほぼ真っ暗な展示室には、春日大社の藤棚の写真を屏風にした作品や春日山風景の映像作品などが展示されていた。鼉太鼓の展示されたホールを通って2階へ(窓側にガラスの五輪塔が並んでいたことには、あとで気づいた)。

 2階左手の大展示室の須弥壇には、見覚えのある木造十一面観音立像。頭部に菩薩面ではなく、大きな黒い塊が点々と付いてるだけの十一面で、2022年に金沢文庫の『春日神霊の旅』で見たものだ。背後の彩色の剥げた鼉太鼓は、昭和50年代まで八百年にわたって使われてきたというから鎌倉時代の作だろうか。龍と鳳凰の木彫が照明に浮かび上がっている。左右の展示ケースには、春日大社所蔵の古美術品と、杉本博司氏または小田原文化財団所蔵の品が取り合わされて並んでいた。後者は古様を伝えるものもあれば、現代美術家の感性で補作・改造されたものもある。ガラスの五輪塔を載せた銅製の神鹿とか、文殊菩薩を描いた円形の彩板を載せた神鹿とか。

 綾藺笠に行縢(むかばき)の騎手が、馬上で弓を掲げる『流鏑馬木像』(春日大社所蔵)は新しいものかと思ったら、平安時代の作だった。『菩薩地蔵立像・神鹿像』(個人蔵、鎌倉時代)は鹿の背中に地蔵菩薩が立っており、飴細工のような金色の光背が美しかったが、どのくらい後世の手が入っているのか、考えてしまった。関連作品(写真2件)が春日若宮の神楽殿にも展示されているというので、足を延ばす。なんとか閉門(16:45)に間に合って見ることができた。

東大寺二月堂

 それから若草山の山麓ルートで二月堂へ。本来なら19時のお松明上堂を待つ人々でいっぱいになる時間だが、今年は堂内や局での聴聞禁止(通期)に加えて、3/11(土)と3/12(日)は、二月堂周辺にも滞在できない措置が取られている。なんとか、人払いされる17:30より前に着いて、お参りすることはできた。「南無観」のご朱印も貰えた。

 あたりは物々しい竹矢来(さすがに先は尖っていない)で囲われている。北側の回廊は立ち入ることができなかった。

 仏餉屋(ぶっしょうや)または御供所(ごくうしょ)と呼ばれる建物に立てかけられたお松明。

奈良国立博物館 特別陳列『お水取り』(2023年2月4日~3月19日)

 今年は修二会を聴聞できないことは分かっていたのだが、この時期に関西にいるのだからと思って、やっぱり奈良を訪ねてしまった。そして物足りない気持ちは奈良博で満たしていくことにした。本展は、毎年この時期に行われる恒例企画で、実際に法会で用いられた法具や装束、絵画、古文書、出土品、写真などを展示する。会場には修二会の声明が低く流れていて、「南無観自在」から「南無観」への流れをうっとりと聴いた。

 展示品はだいたい見覚えのあるものだったが、「三石入」と刻まれた、巨大な陶製の『油甕』(安土桃山~江戸時代、奈文研所蔵)は初めて見た。転害門の北側に位置する油屋・松石源三郎商店に伝わったものだという。なお、現在、修二会の燈明油は、愛知県岡崎市の太田油脂株式会社が寄進しているそうだ。今度、この会社の商品を買ってみようかしら。

※参考:「油屋さんの油甕」(奈良文化財研究所紀要、2017)

 特集展示『新たに修理された文化財令和5年』(2023年2月21日~3月19日)と名品展『珠玉の仏教美術』(2023年2月4日~3月19日 )も楽しんだ。奈良博で彫刻以外の名品展が見られる機会は少ないので、貴重なめぐり合わせだったと思う。密教系の仏画が眼福だった。

 夜は新大宮泊。 

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