広島出張帰りの週末は、大阪→奈良→京都で遊んできた(もちろん自腹)。金曜の夜は大阪に泊まり、朝イチで池田の逸翁美術館に行って、開館を待った。
■逸翁美術館 『絵画で「女子会!」-描かれた女性たち-』(2023年1月21日~3月12日)
伝説上の存在や歴史上の人物から、遊女や芸妓、町娘など、絵画や絵巻物を中心に描かれた女性たちの姿を楽しむ。少女歌劇団の創設者・小林一三のコレクションだけあって「さすがお目が高い」という印象だった。特に気に入ったのは池田輝方・蕉園の『鳥辺山図』双福。岡本綺堂の歌舞伎『鳥辺山心中』のあらすじを読みながら眺めると、いっそう興が深まる。山口素絢『酔美人図』は豪華な着物で酔い崩れる花魁二人。ご陽気そうでもあり、不幸せそうでもある。源琦『玄宗楊貴妃弄笛図』は、並んだ二人が一管の横笛を演奏する図で、なんとなく鼻の下の伸びた玄宗の表情が可笑しい。南北朝時代の『大江山絵詞』には、野良仕事で筋骨が固かったため、鬼の餌食にならず、二百年生き延びた老女が登場する。酒呑童子が頼光らに討ち取られると、老女の生命も尽きてしまう。いろいろ想像と解釈の広がる物語だ。
■大阪中之島美術館 開館1周年記念特別展『大阪の日本画』(2023年1月21日~4月2日)
同館には初訪問。館外に長い列ができていたので慌てたが、別のイベントやレストランの利用客だった。本展は、明治から昭和に至る近代大阪の日本画に光をあて、60名を超える画家による約150点の作品を展示する。はじめに「北野恒富とその門下」が特集されていて、恒富作品を9件見ることができた。恒富はあやしい絵の印象が強いが、可憐な女性や凛とした女性も描いているんだったな。本展のメインビジュアルも恒富の『宝恵籠(ほえかご)』で、晴れ着姿の娘の初々しさを描く。恒富は大阪画壇のリーダーで、男女共学の画塾「白燿社」を主宰するなど、多くの弟子を育てたそうだ。
大阪の文化を描いた画家として取り上げられていた菅楯彦もよかった。大作『龍頭鷁首図屏風』は四天王寺が所蔵しているのか。いいなあ。矢野橋村は個性的な山水画を残した。日本の作品とは思えない、大幅が多いことにも驚いた。別のセクションに「船場派」という括りが出て来たが、最も需要があったのは、商家の床の間を飾るにふさわしい、瀟洒で万人向けの絵画だった。最後は女性画家の特集で、恒富門下である島成園や中村貞以も再登場。
展示作品の所蔵先を見ると、大阪市美、大阪歴博、中之島図書館など、地元が圧倒的に多い。東京ではあまり出会う機会のない作品を見ることができて、楽しかった。
■大和文華館 特別企画展『隠逸の山水』(2023年2月24日~4月2日)
奈良へ移動。本展は、静けさに満ちた情景を描き出した日本の作品を中心に展示する。禅僧の山水、狩野派の山水と見てきて、意外といいと思ったのは、近世後期の墨画淡彩の文人画。岡田半江『秋渓訪友図』とか山本梅逸『高士観瀑図』に癒された。
奈良市内、続く。