見もの・読みもの日記

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虎図さまざま/京都画壇と江戸琳派(出光美術館)

2023-03-04 20:15:26 | 行ったもの(美術館・見仏)

出光美術館 『江戸絵画の華. 第2部 京都画壇と江戸琳派』(2023年2月21日~3月26日)

 エツコ&ジョー・プライス夫妻(プライス財団)から同館に寄贈された作品を公開する展覧会の第2部は、円山応挙など京都画壇と、酒井抱一ら江戸琳派の画家を中心に展示する。

 はじめに円山派の風景画。応挙の『懸崖飛泉図屏風』は4曲・6曲屏風の組合せ。人の姿のない清冽な自然を描く。源琦の『雪松図屏風』は、応挙の屏風(三井記念美術館所蔵)の写しなのか。画面の縦を少し広げているせいか、原本よりものびのびした印象がある。応挙の軸物『赤壁図』は、この直前に『木米』展を見たこともあって、船の中で煎茶を楽しんでいる様子が気になった。

 続くセクションは円山派の動物画を特集。本展のメインビジュアルにもなっている、応挙の『虎図』は意外なほど小さい画面。しかし、毛皮の一筋ずつを丹念に描き込んでおり、その柔らかで滑らかな手触りが伝わってくる。源琦の虎は爬虫類みたいな目をしているし、森狙仙の虎は、バーのマダムみたいなぱっちりお目々だった。江戸時代の虎図は、哺乳類のトラではなく、何か全く別の神霊を描いているようでおもしろい。

 ほか、いろいろな作品がある中で、亀岡規礼の『撫子に蜻蛉図』が印象に残った。朝鮮の草虫図を思わせる作品で、ゆらゆら、たゆたうような撫子の株に蝶や蜻蛉を配する。初めて知った名前の画家だが、京都生まれで円山応挙と山本守礼に学んだそうだ。あと、森徹山の『仏涅槃図』に駱駝(だけ)が雄雌つがいで描かれていたことをメモしておこう。江戸後期、駱駝は夫婦和合の象徴と考えられていたことと関連していると思う。

 後半は江戸琳派。鈴木守一の『扇面流し図屏風』が、デザインも色彩もビビッドで興奮した。酒井抱一の『十二か月花鳥図』12幅対は、たぶん初見ではないと思うが、抱一には多数の十二ヶ月花鳥図があるらしいので、記憶が混乱しているかもしれない。どれも上品な色彩で、手慣れた構図にまとめている。個人的には、花木に小さな虫を配した四月や八月が好き。

 このほか、鈴木其一や中村芳中など、多様な作品を日本に里帰りさせていただいたこと、あらためてプライスさんに感謝したい。ありがとうございます。

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