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見もの・読みもの日記

興味をひかれた図書、Webサイト、展覧会などを紹介。

懐かしく、珍しいもの/朝鮮工芸の美(日本民藝館)

2016-06-12 23:21:38 | 行ったもの(美術館・見仏)
日本民藝館 特別展『朝鮮工芸の美』(2016年4月2日~6月12日)

 日本民藝館創設80周年を記念する最初の特別展として、同館の所蔵する朝鮮時代の諸工芸品の中から優品約300点を選んでの展観。絶対見逃すわけにはいかないと思っていたけど、会期最後の週末にすべりこみになってしまった。

 まず、2階の大展示室「朝鮮工芸の精華」を覗くと、おなじみの名品が目につく。『山神図』は白い衣の文官ふうの男性にトラが巻き付いている。一心同体の表現にも見えるが、Wiki「朝鮮民画」によると「山神が虎を従えた図」であるらしい。虎が後ろ足に持っているのが、どうも人の腕に見えて、出雲神話の犬が死人の手臂(ただむき)を咥えてくる話を思い出す。

 水滴はどれもかわいい。私の好きな、目の下のほんのり赤い鯉の水滴も。2×4個の円形の窪みが並んだ画員硯は初めて見た(ような気がする)。つややかな褐色の木工品は、箪笥、脇息、どれもいい。公故床(ひとり用の小さなテーブル)は実用的なので欲しい。卍形をデザインした状差(壁掛け)も面白かったが、書状の差し方がよく分からなかった。水平に差すのかな? 龕室は、位牌を収める仏壇みたいなもので、住宅のミニチュアである。入母屋造の立派なものもあった。石造の地蔵(朝鮮・15-16世紀)は、朝鮮らしく被帽地蔵菩薩だった。

 階段の裏に展示されていた4枚セットの墨画の『山水図』(20世紀)も私の記憶になかった。太湖石?松?葡萄? いちおう何が描いてあるかは分かるが、リアリズムというものを一顧だにしていない表現で、呆然とする。もちろん手練れの名品『花下狗図』『架鷹図』なども出ていた。「絵画」の部屋にあった『猫蝶図』の黒猫(一部白い)は黒い背中がかわうそっぽい。すごくリアルな肖像図もあって、朝鮮絵画では見たことがなかったので驚いた。細面で長い髯をたくわえた中年の文官の半身像(→これ、図録に載っていない?)。

 「諸工芸」の部屋には小さな文具、身だしなみの道具など。さらに「陶磁器」「柳宗悦と朝鮮」と、今回、2階の展示室のテーマは全て「朝鮮」に統一。やっぱり、この美術館のしつらえは朝鮮の美術や工芸品が一番しっくりくる感じがする。展示ケースの木枠の色も、朝鮮の木漆工芸と同じだし。大展示室の外のベランダに並んだ壺も合っている。

 1階に下りて、玄関広間の展示品も、今回、大胆に模様替えされているのに気づいた。ケースの中に石造の菩薩坐像と羅漢坐像があった。菩薩坐像の表面には金箔が残る。なるほど石仏の上に金箔を貼ることもあったのか。羅漢坐像(高麗時代)は、拱手した両手を袖の中に隠しているのが日本の神像に似ていた。うれしかったのは、申師任堂ふうの『草虫図』2幅が出ていたこと。

 ほかに1階は「近世日本の古陶と大津絵」で、大津絵と朝鮮民画の親近性を感じる。「日本の諸工芸」は文字どおり諸工芸なんだけど、カテゴリー分けより、形と並びの面白さ優先の展示方法にセンスが感じられて、楽しかった。「日本の染織」はなんとなく夏を感じる布製品。部屋の中央の駕籠に、枇杷の枝が投げ込まれていて「いいですね」「裏庭から取ってきたんですよ」みたいな会話を受付の方がしていた。

 めずらしく大部な図録『日本民藝館所蔵 韓国文化財名品選 朝鮮時代の工芸』あり。でも「名品選」だから載っていない所蔵品もあるのだな。
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