見もの・読みもの日記

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もふもふ、ちくちく/動物絵画の250年(府中市美術館)

2015-04-12 22:46:16 | 行ったもの(美術館・見仏)

府中市美術館 企画展・春の江戸絵画まつり『動物絵画の250年』(2015年3月7日~年5月6日)

 恒例「春の江戸絵画まつり」には、毎年かかさず通っている。今年は出遅れたので、府中の桜並木の見ごろを逃してしまった。それと4月7日から後期に入ってしまったので、展示作品の半分を見逃してしまった。残念。

 同館では、2007年にも『動物絵画の100年』という展覧会を開いている。このときは、1751年から1850年、日本の「近世」の確立期であると同時に、雪崩を打つように、あわただしい「近代」に突入する直前の100年にフォーカスを絞っていた。今回は、より広汎に江戸の動物絵画を紹介する。中心はやはり江戸後期だが、例外的に鎌倉時代や南北朝時代の仏画も出品されていた。それから、取り上げられている絵師や作品が非常に多彩、多種多様で、私の知らないものが多かった。

 いちばん楽しかったのは「虎図」コレクションである。片山楊谷の『竹虎図屏風』に描かれた三匹の虎。黒と赤茶色の縞模様の毛皮の上を白い繊毛がびっしり覆っており、遠目には粉を吹いたような、霜が下りたような、あるいは発光しているような、不思議な姿をしている。解説に「昨今、愛らしい虎をもふもふと形容するが、これはちくちくだろう」とあった。そうかな。意外と柔らかい毛で、手触りはすべすべなんじゃないかと思う。それから、絵の中の虎が前足を交差させるポーズは、中国絵画に由来する伝統的なもので、前足を八の字に突っ張った立ち方(応挙などが描いている)は斬新だったという。面白い。それにしても、溶けてバターになりそうなふにゃふにゃした虎が多いなあ。国芳描く『豊干と虎』の虎は、円筒形の抱き枕みたいだ。

 初見で気に入ったのは、土方稲嶺『群鶴図』、黒田稲皐『群鯉図』。どちらも鳥取藩ゆかりの絵師。覚えておこう。建部凌岱(国文学史では建部綾足の名前で知られる)の『海錯図屏風』は、海の動物たちを墨画と淡彩で大きく描いた六曲一双の押絵貼屏風。若冲の『蔬菜図押絵貼屏風』の海産物版である。エイの顔やヒラメ(?)の裏側や真上から見たアンコウなど、着眼点がユニークで楽しい。稲葉弘通の『鶴図』も実に変な絵。こんな絵を描く絵師がいたこともびっくりだが、それを大事に伝えてきた鑑賞家の懐の深さがありがたい。

 斎藤秋圃の『雪中梅樹猿鹿図』は、睦まじい二匹の猿と一頭の鹿を童話的に描く。解説に「思わずメリークリスマスと言いたくなる」というのが、微笑ましかった。大笑いしたのは三浦樗良(この人も文学史で習った)の『双鹿図』。今は懐かしいゆるキャラ、地デジカを思い出してしまった。

 以下はおなじみの絵師たち。鍬形斎の『鳥獣略式』は可愛い! 近代の摺りを使って、たくさん展示してあって嬉しかった。てか、もっと見たい。全部欲しい。復刻本はないのかしら。個人的には蘆雪の動物画がとても好き。やんちゃな仔犬は、応挙の仔犬より愛おしい。グライダーのような鶴も好き。『捕鯨図』は、左下に鯨の巨体(目がある)の一部を、右上に銛を構えた漁師を描く。実際にこのとおりの構図を目にすることはできないと思うが、考えられたトリミングが斬新。

 国芳も若冲もよい作品が見られた。あと冷泉為恭の『五位鷺図』は前期出品で、図録で発見したのだが、愛らしくてほのぼのしたので、ここに書き留めておく。

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